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僕は異世界で君を探す~命よりも大切なもの~  作者: Re:You
1章 孤児院と洗脳された村
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1章の九 再びの駄目神

 明日に備えて眠りについた俺だったが、いつの間にか真っ白な空間が目の前に現れた。

 見覚えのある空間であるが、どこだったっけ?


 「お久しぶりです!お元気でしたか?」


 突然、後ろから声が聞こえて振り返ってみると、今度は見覚えのある人物が目の前に現れた。いや、人ではないな。


 瞬時に理解した僕は魔力弾を放つ。


「痛い痛い痛い!何ですかいきなり!」


「心当たりは無いんですか?俺を殺そうとしておいて・・・」


 この存在を忘れない。向こうにも忘れたとは言わせない。

 何の恨みがあるかは知らないが、僕を殺そうとしたのは紛れもない事実だ。

 滅多に怒らない僕が殺意を向けるのはこいつくらいだろう。


「ごめんなさい!あの時は本当にごめんなさい!ちょっとした手違いだったんです!」


 瞬時に日本式ドゲザで謝ってきた駄目神を見て、僕はため息をつくと、ここは恐らく夢の世界とか、僕の頭の中を弄って創った空間とかそう言う憶測をしていた。僕が上空から堕ちたのも何かの手違いなのだろう。

 いや、でもさ、ちょっとした手違いで死にかけるって何よ?

 異世界が危険というより、貴方の存在が危険なんじゃないですかね?


「で、何のようですか?」


 確か、お手伝いはできないとかそんな風な言葉を言っていたと思うが、今は用件を聞こう。

 色々と言いたいことはあるけどさ。


「・・・あれ?『え!お手伝いは出来ないのではないんですか?』とか驚いたり、色々と聞いてくるかもと思ったから、カンペまで用意して答えるのを待ってたのに、どうしたんですか?」


 女神様・・・貴方は元は人間だったのでしょうか?仮にも神がそう言うのを人に向けて言うのを止めなさい。

 カリスマ性が全く感じられない。


「こちらは色々とありますので、大抵のことではもう驚きません」


「私の登場は大抵のことなのですか!」


「話を進めてください」


 長くなると疲れる。


「あ、はい。すみません」


 あ、謝るんですね。


「えっと・・・いや、何で私が謝っているんですか!」


 だったら謝るなよ!

 駄目だ!この人が現れると、今までのシリアス(?)な展開がメチャクチャにされてしまう!


 と思っていると、女神はなにかを思い出したのか、僕に向けて怒りだした。


「怒るのはこっちです!色々とやっている中でチラリと見てみれば!何かとてつもない面倒ごとに巻き込まれてるじゃないですか!」


 今までとは違った様子であった。目が本気だった。

 今まではほんわかしている目だったが、今は鋭い眼差し・・・というより、後がない様な焦った目で睨んでいた。


「下手したら死にますよ!あなたが思っているほどにヤバイ出来事なんですよ!」


「僕が死ぬと不味いんですか?望んでここに来たのに?」


 正直、女神が僕を止める理由がわからない。人間一人に気を配ることはない。彼女の不備も最初の時に精算したから用はないはずなのだ。


「当たり前です!あなたがこの世界で死んだ事実がバレたら、この世界が滅・・・何でもありません」


 ・・・そんなことを考えていると、何か不吉な単語が聞こえようとしていた。それを見逃す僕ではない。


「今なんて言いました?世界が滅・・・」


「さあ!私がここに来た理由は、あなたに助言をいいに来たからです!

 助言を授けましょう!危ないことはしないでください!」


 都合が悪いことは無視する。

 ・・・なんとまあ、なんとまあ。


「女神様、それは助言とは言いません」


 一応ツッコミを入れるが、先程の台詞についてはこれ以上の追求はしなかった。

 しても涙目になって逆ギレするのが目に見えているし、言わなくてもある程度の事情が目に見えた。


 そっか、僕が死ぬと世界が滅ぶのか・・・いや、なぜ?

 憶測はいくつかたてられる。この世界の住人でない僕が異世界で死ねば、神の規則に反して消滅させられるとか、そんな小説みたいなことだろう。

 決定打が全くないし、仮説としか言えないけど、女神の慌てようといい、無理に介入して注意してきたことといい、滅ぶのが嘘とは思えない。


 ・・・まあ、僕が死んでからのことを、僕が考えても意味がないけどさ。要は死なないようにすればいいだけだし。


「そうだ。女神様に聞きたいことがありました」


 この際だ。女神が介入している今、この時間をいかすべきである。

 色々と訪ねて出来ることをしてもらおう。ズルというかチートみたいであまり好まないが、事情が事情だ。人頼み・・・神頼みをしてはいけないというルールがあるわけでもないしな。


 運命は勝ち取るものである。だから、目の前に現れた好機をわざわざ掴まない人間は勝てない。


「おお、深山さんに質問されるというのは良いですね。女神みたいで気分がいいです」


 女神じゃないんですか?やっぱり駄目神なんですか?

 とツッコミを入れるのを我慢して、いくつか質問していく。


「今、女神様の力で右腕を動かせるようにできませんか?」


「・・・えっと、それはできません。」


「ああ、じゃあ今回の騒動に関わる主な人物に色々と聞きたいことが・・・」


「個人情報は神の規則で教えられません」


「・・・・・・ヘルプ機能をもっと改善できませんか?」


「これ以上弄ってしまうと、脳が壊れてしまいますよ?」


「・・・・・・・・・」


 なんということでしょう。

 女神の力を期待しておりました深山和志さんの表情が一気に暗くなりました。


「使えねえ」


 つい素で口にしてしまった。「あ・・・」と思ったときにはもう遅い。


「しょ、しょうがないじゃないですか!女神がこの世界の人間に介入は出来ないんです。そんなことをすれば、先輩にすぐにバレます!」


 予想通り、女神様は泣きはじめました。それでもツッコミを入れる。


「僕には要らんことで介入していますけどね」


「だって!放っておいたら非常に不味い事態に陥っているじゃないですか!介入しないといけない事態を作っているじゃないですか!

 ひ、人がせっかく注意しようとしているのに!深山さんのためにと思って喋ったのに!本当は無理矢理にでも操りたいけど、危害を加えたら先輩が駆けつけて消滅されるから出来ないだけなのに!」


 ガチで泣きわめきそうになる女神を見て僕は少しばかり焦る。確かにこの世界の危機になるようなことだ。でも、操れるのなら操るとか不穏な言葉を言っている。

 この世界を管理している女神にとって、僕の存在を無視することはできないのだろう。

 だからと言って直接援護はできないらしい。


 ついでに言えば、死なせてはいけない人間が僕以外にいることも推測できた。僕だけが要因になるのであれば、こんなに涙目になる可能性を危惧して異世界に送ってもらえるはずがない。

 恐らく、三島の生存も要因なのだろう。だからこそ送り込ませた可能性すらある。もしかしたらそれ以外にもいるのかもしれない。


 まあ、色々と仮説を考えているが、答えが出てこないし、それが全て当たっている可能性など宝くじで一等を当てるより低いのだ。あまり考えても無意味だな。


「ああ、すみません。分かりました。解りましたから、ラキアス様の助言は嬉しく思います」


 とりあえず、今までの行動について納得させよう。なに、悪いことはしていないのだから、問題ないはずだ。


「でも、恩を返すのは、人として当然じゃないですか」


「こんな非常事態であっても、またそれですか!」


 あれ?これだけの説得では駄目か?


「どんな事態でも、人は人でしょ?」


「訳がわかりません!」


 ああ、説得は無理みたいだ。

 女神なら理解できると思ったが・・・所詮駄目神だな。

 常識人である僕を理解できないのなら仕方がない。他のことについて聞こう。


「で、本当に何しに来たんです?助言以外に何かあるでしょ?」


「え?だから、助言を授けましたよ」


 女神が当たり前のようにそう言った。


「・・・他には?」


「何も」


 ・・・こっちが色々と考えているときにそれか。


 こっちの都合は無視して、好き放題に無茶ぶりをして、


 おっと、落ち着こう。リラックスするんだ。無心になるんだ。


 深呼吸、すー、はー、すー、はー、


「もしもし、頭大丈夫ですか・・・痛い痛い痛い!無言で攻撃しないで!女神でも魔力攻撃は聞くんですよ!チクチクしますからやめて!」


「うるさい!」


 こっちは色々と考えているんだよ。頭の中がオーバーヒート寸前なんだよ!


 駄目だ!この空間は僕を精神的に追い詰める!現実に戻りたい!・・・現実でも追い詰められているけど。


「で、どうしたらこれって孤児院に戻れるんですか?」


 早くもとに戻って休息をとりたい。明日から忙しくなるんだ!疲れをとりたい。肉体的にも、精神的にも!


「えっと・・・ここは夢の中の世界なので、体の疲れがとれるまで睡眠をとって、自然と目が覚めるのを待てばいいだけです」


 どうやら自動的に目が覚めるらしい。肉体が休むまでという自動設定アラームは便利である。

 でも一つ聞きたい。


「何時になれば目が覚めるんですか?」


 体の疲れがとれればここから出られる。逆に言えば、それまでここから出られない。


「あと5時間というところでしょうか?」


「・・・それまで待っていろと?」


「そうですね。外から起こそうとしても反応しないと思います。私もその間はここを離れられませんし」


 五時間も何もない空間で?この女神と一緒?

 ないわー!まじないわー!


 いや、待て、プラス思考で考えろ!

 考えを改めろ!五時間もあるんだ!本来は睡眠に働かないといけない時間を俺は得たんだ!それを利用しない手はない!


 ・・・いいこと思い付いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ラキアスside


「実験するぞ!」


 唐突に彼はそう発言した。何をする気なのでしょう?

 私が介入することは出来ませんし、夢の中で接続している今、私の力はものすごく弱い。

 法術もランク5までしか使えない。


「何をするんですか?」


 私の方から尋ねてみた。彼の頼みを聞けなかった私だが、なぜか笑顔で答えてくれた。許してくれたのだろうか?


「これをやる!」


 そう言って、彼は魔力弾バレットを放出した。


「おお、魔力弾バレットをうまく制御していますね!

 素質はあると思いましたが流石です!」


 魔人を倒した彼なら才能が開花すると思っていたが、これだけ器用に扱えるとは思っていなかった。

 最も、そのお陰で彼を送って2分で世界消滅とはならなかったが・・・


 彼にかけた法術の方はどうだろうか?無事に機能がかかるか心配である。


「魔力弾でバレットというのですね。まあ、名前はどうでもいいですが、その魔力弾を改造したいと思います」


「改造ですか?」


「結構色々と試したんですけど、魔力弾は結構自由な形で放出出来るんですよ。

 魔力を貯めて大きくしたり、一度に2つの弾を出したり出来ます。

 そして、試しているうちにわかったことがあります」


 彼はそう言うと、今度は小さく、素早い魔力弾を放出した。


「魔力弾は『数値の割り振り』が自由なんです」


「数値?」


 何だろうか?()()の方は専門外なので詳しいことは知らない。

 ヘルプにも載せていないけれども、彼は何か分かったのだろうか?


「まあ、とにかく、的に向かって試してみようかと・・・動く的は実践練習にもなりますし」


 彼は詳しく説明せずに実験を行うみたいだ。今後も使う予定があるため実践もかねて動く的を狙う。

 戦闘に詳しくないが、止まっているものと動いているものではやはり難易度が違うのだろう・・・あれ?


「・・・動く的?」


 その単語に女神は違和感を覚えている。

 この真っ白の空間で周囲には何もない。


 そう、深山和志と私以外・・・そこで女神は気づいた。


「ま、まさか」


 女神は冷や汗を垂らした。そんな暴挙に出るわけがない。今後の友好関係を考えれば、そんな行動をとる人間ではない。

 彼には理性がある。知恵がある。そして、弱気ものを助ける優しさがある。そんな行動をするわけないと思って・・・


「女神様、『責任をとる』という言葉をご存じでしょうか?」


 ああ、これはあれだ。やるパターンだ。

 女神はそう思った。


「責任をとるという言葉を色々と解釈して行動している人々ですが、僕には責任をとる行いで『こうであるべき』というものが一つあります」


 もう嫌な予感しかしない。逃げ出したい。口を塞ぎたい!

 でも、駄目だと理解した。彼の体が体力を回復しない限りこの空間から逃げられない。危害を加える行為をすれば、先輩から殺される!


 彼は理解しているのだ。彼が私に攻撃するなら今だと!


「それは自分がどれだけの不利益を被るか?自分にどれだけの犠牲を負って、相手を納得させるかです」


 もう嫌だ!聞きたくない!時を進めよ・・・駄目でした!今は力を発揮できない!


「では、一人例をあげましょう。ある人物は人間一人を殺しかけました。

 わざとではないとはいえ、自分の過失で起きた行為です。

 そんな人物が、被害者に土下座だけで許してもらえると思うのでしょうか?

 こちらの要求は他の人物のためと言って断る人をです。

 一部の機能が使えなくなった体に対して無傷で通そうとする。それは筋が通るわけがないでしょうに

 どう思いますか?女神ラキアス(クズ)様?」


「あ、あぁ」


 私はどんな顔をしているだろうか?女神として問題のない顔をしているのだろうか?醜い豚みたいな顔をしていないだろうか?


 対する彼の顔はどうだろう。すごい笑みをしている。私がいっそこのまま自決した方がいいんじゃないかと思うくらいの恐怖する笑顔に。


「チクチク程度が五時間程度です。頑張りましょうね」


 そう言って、彼は魔力弾をたくさん放出した。私は必死に逃げた。どこにも隠れる場所がないこの夢の世界で。

 『必死に逃げる女神をどうやって当てるか?』

 彼がそれだけを考えた五時間だった。私にとっては地獄の五時間だった。


 五時間後、彼は頭の中が非常にスッキリした顔になっていた。

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