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僕は異世界で君を探す~命よりも大切なもの~  作者: Re:You
1章 孤児院と洗脳された村
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1章の四 いきる力

孤児院にお世話になって、5日が経つ。


いや、倒れて丸二日も寝ていたようで1週間が経つ。


僕はメインや孤児院の子供達の好意により、法術によって怪我を回復させて貰いながら、ここでしばらくお世話になっていた。


シスター・メインは僕より若く、15歳であるにも関わらず、この孤児院を運営していた。


ギルバートは冒険者ギルドという異世界小説なら9割は出てくるであろう有名な仕事をしていた。


多種多様な依頼こなして報酬をもらう仕事らしいが、ギルバートの主な仕事は討伐系の仕事らしい。


そして、今回メインが依頼を出して、ギルバートは1ヶ月ほどここに滞在しているとのことだった。


僕は屈辱ではあったが、子供達に面倒を見て貰いながら、リハビリをしたり、『ヘルプ』を使って学習したり、魔力に関する実験をしたりしていた。


これからの事を色々と計画を立てながら、リハビリをしたり、家事の手伝いをしたりして、今では右腕以外は完全回復し、絶好調である。


たった5日で打撲、捻挫を完全回復!流石、法術!流石、異世界!


怪我の痛みが無くなり、万全になった状態で色々と実験をしていると、僕の体に異変が起きていたのが分かった。


僕の体が頑丈に、頑強になっている。


事例1 自身の体が軽く感じ、試しに思いっきりジャンプすると、2m位飛んでしまった。


 ちなみに子供達も地球の人々に比べれば高く飛べるが、最大で1m位だった。いや、そこにも驚くべきだけども!


地球でどれくらいだったかは知らないけど、大体50㎝と考えても約4倍である。地面から道具を使わなくても、簡単に二階に上がることが出来る。


脚力も50mを大体計り、タイムを図った。異世界では時間の間隔がほぼ同じであったが、計測出来る機械が孤児院にはなかったので、一定に流れる水の量を計って時間を調べる小道具(自作)で大体の計測を行った。1秒の間隔は心拍数なんかを参考にしてるので、誤差は少しはあるものの、簡易的に調べることが出来るようになった。


事例2 結果を言えば、記録は4秒を切っていた。


僕の時間の間隔が二倍速になっていない限り、僕の脚力はすごいことになっている事が分かった。


いやいや、チートですな!


もしかしたら、重力が地球より、低いのが原因かもしれないと考えたが、それだと、重力による落下速度の低下はどうした?となる。物を二階から落として確認したりしたが、地球との重力の誤差は殆どなかった。


魔力なんかがある世界で物理法則は通じないと言う仮定も、魔力という未知のエネルギーが新たに加わっただけで、この異世界で物理法則が無視することはできない。


先人達が培った知識は最も有用な情報だ。簡単に否定できるものではない。異世界が地球との原理が大きく違わない限りだが・・・


とまあ、色々と研究しながら、僕は孤児院にしばらく住み、謝礼として色々と手伝っていた。


現在も子供達相手に孤児院の近くで色々と付き合っている。


そして、異世界の孤児院で、僕は黒くなった右腕を前に突きだし子供たちの前で宣言する。


「我は魔王カズシ!この腕で貴様らをバッタバッタと倒して食べてやる!」


「わー!逃げろ!」


「お前は逃げるなよ!チビ達をセーラが逃がして、俺達はこいつをやっつけるぞ!」


「「おおおおーーーーー!!!」」


子供たちのリーダー格(男子)であるアレスが指示を出すと、小さな子供たちはリーダー格(女子)のセーラに集まって避難していく。


そして、7歳~10歳くらいの子供5人が連携して僕に対して突っ込んできた。


「ふははははは、魔王をなめるなよ!勇者どもが!」


僕は左手を出して、十数個ほどの魔法弾を子供達に向けて発射した。


威力はかなり抑えられており、軽い拳骨位だ。痛みはあるが怪我はしない。


「地よ、我を守り、彼のも・・・わあ!」


「おい大丈夫か・・・うわあ!」


「馬鹿!法術じゃ間に合わない!武器で弾け!」


法術を唱える前に少女は魔法弾をくらい、アレスは手に持っている木剣で魔法弾を弾いた。法術がその効果を発揮するためには、発動の鍵となる『魔言』を言わなければならない。


次々と仲間がやられ、法術が無理と判断したアレスは武器をもって一人で僕に突撃してくる。


「一発で倒してやる!」


「出来るものか!貴様なぞ、こうしてやる!」


僕は左腕をアレスの前にかざすと、魔力弾を二つに分裂させて攻撃した。


距離は凡そ5m、かわせる距離ではない。防ぐにも木剣では一つしか防げない。


僕の勝ちだ、一対一だったら。


「・・・彼の者から身を守れ『スウォール』!!」


後ろからセーラが法術を唱えて、地面から壁が浮き上がる。


『スウォール』は大地の物を利用する地法術の一種(ランク1)で、地面の土を形成して壁を作る法術である。


壁は一瞬で生成され、大人一人分位の大きさ、厚さ20㎝の壁ができる。


魔力弾はアレスの前に現れた壁にぶつかり、消滅した。


壁は上半分が壊れて、無傷のアレスが壁を乗り越え、僕の目の前に到達した。


僕は左手を拳で握り、アレスに突き出す。リーチは剣を持っているアレスが長いが、先程のやり取りで、距離は十分に詰まっていた。射程距離は関係ない。


拳の僕が速い。勝ちを確信していた。






「あ!メインねーちゃん!裸になってる!」




・・・なぜ、こんな状況でそんな言葉を聞き逃さなかったのだろう。



・・・なぜ、こんな程度の低い嘘に引っ掛かったのだろう。



僕は拳を止めて、視線を声がした方に向けた。






「ぐほっ!」


僕は股間を蹴られて悶絶した。


痛ってーーーーーーーーーーー!


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!チ⚪コ潰れたかも!


あいつ本当に容赦ない!何で訓練で急所を攻めるの?


「やーい!まおーたおした!」


「やったやった!」


「アレスにいちゃんつえー!」


「カズシよわー!」


避難していた子供達がアレス達の様子を見に来て、今の光景を目撃すると、子供たちは笑顔でアレスに勝利を讃える。


「カズシさん!大丈夫ですか?」


子供達が全員勝利を喜んでいる中、ただ一人セーラが僕に駆け寄ってきた。


「ごめんなさい!わざわざ手伝ってくれたのに!アレスのバカがこんな卑怯なことをして!ごめんなさい!」


そう言って、セーラは謝りながら、僕の背中を必死に擦る。


いや、ありがたいけど、年下にこれをされると恥ずかしくなる。凄く嬉しいけど!やめて!変な扉が開きそうになるからやめて!


「アレス!訓練でカズシさんの急所を、何度も攻めるのを止めなさい!」


「はあ、実戦と同じようにしなきゃ意味ないだろうが!」


「カズシさんは手加減してくれるのよ!それに対して急所を攻めるとかあり得ない!」


「急所~?急所ってどこかな?言ってみろよ!」


「!」


アレスがそう言ってちょっかいをかけると、セーラの顔が紅くなり、涙目になる。


「最低!女の子にそういうこと言うとか本当に最低!」


「こんなことで紅くなるとかマジだっせー!ち⚪ことか誰でも言えるし!」


アレスが笑いながら、セーラに指を指す。


あのね、アレス君。あんまりそういうのは止めた方がいいよ。好きなんでしょ、セーラちゃんのこと。


好きな子にちょっかいをかける気持ちは分からないこともないが、好きな子に思いを伝えるなら素直が一番よ!


いつまでも同じ関係でいられることはないんだから!バームクーヘンエンドにならないように今を大切にして!


そんな忠告を心の中でして、トントンと跳躍をする。潰れていないことにホッとする。


「というより、これは訓練なのか?」


「ああ、自分達の身は自分で護らないとな!」


「私たちより小さい子もいるので、避難をあらかじめ練習するんです。本当は倒すのではなくて、時間さえ稼げればいいんです」


「はあ、すごいな」


アレスの答えはともかく、セーラの答えには感心した。自分の身だけでなく、守るべき存在を理解して、そのための努力をしている。しかも、優先順位も理解しているようだ。


「でもさ、カズシも凄いよな!詠唱なしで法術を出しているもん!」


「本当に凄いです!カズシさん!私も簡単な法術は使えるけど、魔言なしで魔力を操るなんて、普通はできないですよ!あと、アレス、歳上の人にはさん付けが普通でしょ!」


二人は話題を変えて、突然俺をべた褒めしはじめた。


そう、僕が空から墜ちたときに、放った魔力弾は魔言を言っていない。


なのに、魔力を操作できたのか?それは今でも分からない。


ヘルプで『無詠唱』とか『詠唱破棄』とかしょうせつやゲームでよく使う単語なんかで調べてみたが、そのような便利な方法について載っていなかった。


法術は必ず魔言を言わないと発動できない。


その事実が、僕の魔力弾の正体を分からなくさせた。


ヘルプの記載不足か?調べる方法が間違ったからなのか?僕が特殊な人間だからか?


・・・まあ、どれにしろ、結局のところ、対して役に立つわけではなかったけどな。


無言で出せるのは魔力弾だけでそれ以外の法術は発動しなかった。


しかも、何回か魔力を出して確認したが、魔力弾の威力は自身に悪影響しない範囲で、『思いっきり殴る』程度の威力しか出ない。


大きさは大体30㎝、時速は凡そ100㎞位、ドッジボールを投げるのとあまり変わらない。


大きくして、威力をあげることも可能だが、その分時間がかかる。しかもやり過ぎれば、右手みたいに使い物にならなくなる。


と、何が起きるか分からない異世界での僕の攻撃手段はこれだけだった。打ち所によっては相手を気絶させることは可能だが、殺傷能力はかなり低い。


加えて言えば、僕の法術の適正と相性についてもある程度推測できた。


通常、法術は何度も練習して、何ヵ月も練習して、ようやくランク1(初心者)の法術を扱うことが出来る。


でも、適正によっては数日で出来る人もいれば、何年修行してやっと習得できる人もいる。


そして、1つの適正が優れていれば、他の属性の適正は悪いと一般に言われている。


僕の場合はそれが顕著で一回で成功した。こういった人物は他の種類の法術を取得するには十数年かかると言われており、取得しても、それに値する程の効果を持っていないらしい。




端的な話、僕は聖法術しか使えないらしいのだ。


攻撃手段は魔力弾のみである。



「・・・アレス、セーラ、お前らの方が凄いよ。」


僕はそう言ってアレス、セーラの順に左手で頭を撫でる。


実際にすごいと思う。二人はまだ10歳、小学校4~5年生の年頃だ。


僕より七つも年が低いのにしっかりしている。(アレスは少し楽観的だが)


この年頃で日本の子供たちは何を知るだろうか?大抵の人間は部活やクラブに入ったり、みんなで通信ゲームをして遊んだりしている頃だろう。


平和な日本で暮らし、死に対する恐怖を持たずに安心して、待ったり暮らしているだろう。


この頃の僕もそうだった。何も考えず、何もしないで生きていた。


だから・・・・・・・いまさらだったな。


「頑張れよ、僕もここを出るまでは何でも手伝うからな」


小さい頃から生きるために、食料を確保したり、家事をしたり、体を鍛えたり、身を守る術を学んだり、


生きるための力をこいつらを見て、改めてすごいと思った。


小さい体で、ボサボサした服、肌も荒れている体なのに、こいつらが輝いて見えた。



そう思いながら頭を撫でてやると、二人とも顔を赤くした。


「な!いきなりなんだよ!」


「え、あ!その、えへへ!」


アレスは恥じらい、セーラは喜びの感情を表すと、後ろから声が聞こえた。



「大変だー!あいつ等がやって来た!」

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