横瑞先生の魔法講座1
遅れました。やっとこの作品における魔法についての大まかな説明ができました。少しぼかしているところもありますが、今回記した通りの法則で今後の話は進みます。
友達作りという野望を胸に授業へと臨んだ真琴だったが一時間目が終わった時点で疲れ切っていた。
“まさか今日の座学はテストだったとは”
真琴はそう心の中で叫ぶが、周りの生徒は皆、既に知っていたのか落ちついているように見える。
自分だけが知らないと言うことは昨日、始業式のあと教室で言われたのだろうと真琴は考えた。そして何も教えてくれなかった幼馴染の方へと恨めしい視線を向けた。
すると真琴の目には灰になった明日那が呆然としていた。真琴は意味が分からなかったが、なんとなく予想はつくのでため息をついてから明日那に話しかけた。
「その様子だとお前はテストの事を知らなかったのか?昨日クラスに来たんだよな。」
真琴が聞くと明日那は一応と肩を落としながら答えた。
「来たには来たんだけど〜。眠くって寝ちゃったの〜。」
真琴は開いた口が塞がらなかった。
そして“俺を置いて行った意味は…”と叫びたくなった。しかし彼は今更何かを言っても今日の予定は変わらないと腹をくくってテストに挑むことにした。所詮、異能力を使う人に大事なのは学力よりも力と考え一時間目の事を忘れ去った真琴は晴れたような笑顔で夜の事を考えていた。
そして考え事をしていると時はあっという間に過ぎ昼休みとなった。真琴は抜き打ちテストには驚いたものの、二コマ目以降はテストがあると分かっていたので難なく受けることができた。
真琴がゆっくりと昼食を一人で取っているとデバイスにメッセージが送られきた。内容は午後の授業のことについてだった。それを真琴は確認するとやれやれと言った風に隣の机に突っ伏して眠っている明日那の肩を揺すった。
「おい、そろそろ起きろ。昼食を取らないと午後の実技に耐えられなくなるぞ。今日は座学らしいが。」
明日那はゆっくりと顔をあげ右手でまだ眠そうな目を少しこすると小さなあくびをした。
「まだ眠いな〜。お昼ごはんど〜こ?」
「俺は知らないぞ。カバンの中じゃないのか?」
「え?持ってきてないよ〜。真琴に貰おうと思ってたから〜。」
明日那はエヘヘと頬をかく。真琴は自分の弁当(妹の手作り)を見てまたため息をつくと渋々といった風に明日那に弁当を渡す。
「俺はもう半分食べたからいいよ。感想は有栖に言ってやってくれ。喜ぶからな。」
「やった〜!有栖ちゃんのつくる弁当美味しいんだよね〜。」
そう言いながらパクパクとリスのように明日那は弁当を口にかきこんでいく。
「その有栖ちゃんという呼び方は子供っぽいから止めてと有栖がいっていたが…」
「私にから見たらいつまでたっても子供だから〜!」
明日那は口の周りにごはん粒をつけながら言う。真琴は少し微笑みながら手でそれを取る。
「こんなんじゃ。有栖よりも子供と思われるかもな。」
「たまにだよ。たまに〜。」
昼休みの間ずっと真琴と明日那は他愛もないことを話していた。結果昼休みに友達を二人は作れなかった。
ついに初めての実技の時間がやってきた。真琴たちが座って待っていると横瑞先生が教室へはいってきて電子ボードのスイッチを入れた。そして実技(座学)の授業が始まった。
「皆さんこんにちは。始まったばかりですが学校での授業はいかがでしたでしょうか。まぁまだテストしかしていませんがね。
というわけでこの時間からが我が魔法学園で最も大切な“魔法”についての学びとなります。普通でしたら、外へ出て演習場や校庭で授業を行いますが今日は初めと言うことで基本を学んでいきたいと思います。
取り敢えず私の自己紹介から。名前は皆さんご存知の通り横瑞流です。知らない人はいませんよね。あれ、壱夜くん目をそらしませんでしたか?得意とする魔法は水の操作で、異能位階は五です。
私のことはこれくらいにしておいて、そろそろ今日の学習内容に入っていきたいと思います。今日は殆ど異能を使うものとして一般常識となりますが一応確認として“魔法と社会”についてを学びたいと思います。
異能がこの地球で確認されたのは2048年。今からたった46年前のことでしかありません。その短い間にとても大きな変化を遂げてきました。
まず前提として異能を使うものは二種類存在することを知っていますよね。それはもちろん魔法士と能力者です。魔法士は呪文を唱えることで様々な魔法を使用することができ、能力者は生まれつき備わった力を使用することができます。双方魔力を媒介して魔法、能力を発動しますが違いは何か知っていますか?
そうそれは魔力の種類です。魔力には人によって異なる内魔力と外気に含まれている外魔力に分かれています。習ってきたように魔法士は外魔力を用いて、能力者は内魔力を用いて発動させます。なぜ両方使えないの?と思った人もいると思います。
余談ですが魔法士か能力者かは生まれた時点で判断することができます。心臓より生み出される内魔力は血液のように全身を巡っていますがそれが外魔力とほぼ同じなら、魔法士、異なっていれば能力者と判断されるのです。大雑把にいえば魔法士も能力者も自分の魔力を操っているといえます。ただそれが外にもあるかないかの差で分かれているのです。
内魔力は外魔力と比べて汎用性が低く能力者は決まった能力しか使えません。よって能力者は手数が少ないのです。ただしその効果や力は魔法に比べて強く個性的です。逆に汎用性に富んだ外魔力を使う魔法士はたくさんの魔法を呪文を唱えるだけで使うことができます。先程の質問の答えは用いる魔力の特徴が正反対だからでした。
しかし先程も述べたとおり魔法士も味方によっては自らの内魔力を用いているため少しは個人差が出ます。そしてそれは魔法に対する得手不得手と言う形で現れます。
魔法と能力はその効果で大きく水、炎、光、闇、雷、地、無、の7つに分けることができます。例えば私は水系統の魔法は得意ですが炎系統の魔法は簡単なものしか使うことが出来ません。
ここまでの話で魔法士と能力者の基本的な違いがわかったと思いますが、ここからはそれぞれを詳しく話していきたいと思います。
まずは魔法士についてです。日本を含め異能力を使う人口は魔法士の方が能力者よりも多いです。これは魔法士は能力者、魔法士どちらの親からも生まれますが、能力者は能力者からしか生まれない事が原因です。まぁ魔法士が多いと言っても一般人の数と比べると少ないですけれど。
既に言いましたが魔法士は呪文を用いて魔法を使います。例えば、光よ我が名の元に自然の理を今一度のみ曲げよ、という呪文は相手の目を一瞬だけ眩ませる魔法です。ここで覚えておきたい大切な事は二つです。
まず一つ目は魔法は呪文を必要とするが名前が定まっていないことです。これにより皆さんが創作で見るような、名前さえ聞けば何が起こるか分かるから対処なんて余裕〜、と言う事は無くなります。呪文さえ聞かれなければ嘘をついても魔法は発動するのです。まぁこれは高度な技術ですので大抵の学生は失敗します。
そして二つ目は魔法の呪文を定めた機関についてです。定めた全日本魔法協会の名は覚えておきましょう。今は名前が変わり四色同盟中立機構となっていますがその原因については授業の後半で。ここで覚えておきたいのは今でも機構がそれを引き継ぎ毎年少しずつ魔法が増えているということです。
次にもう一方である能力者についてです。
能力者の一番の利点は能力の発動に呪文を必ずしも必要としないことでしょう。一説としては内魔力に自らの遺伝情報が多く組み込まれている為ではと言われていますが詳しいことは分かっていません。ただ呪文を使わない事は不意打ちに有効だと言われています。また考えてから直ぐに使用できるため臨機応変に対応できると言う事も良い点として知られています。
不便な点を上げるなら先程も言ったとおり汎用性がないことでしょう。まず外魔力を操作できない能力者は外魔力に働きかけることで発動する魔法を使うことができません。
よってもし自分の能力が不利になっても能力を変えることはできないのです。
能力者の代表的な例として勇者の一族がいます。彼らは神々の力を宿したとされる武器を体に宿しその力を能力として発現します。とても破壊的と言われていますが勇者はあまり活動的ではないので滅多に表に出てくることはありません。
まず勇者以前に決まった場所以外での能力や魔法の使用はそれぞれの政府によって禁じられています。まぁ何処でも使えたら直ぐにケンカになって人が死んでしまいますからね。
ここで大きく話の話題を変えてもう一つのテーマである社会の形態について話していきます。その前にそろそろ午後の授業の前半が終わる頃なので一度休憩を取ります。ではまた10分後に始めます。それではまた!」
次は授業の後半に当たる社会の形態についてと待望の友達ができるかも?呪文づくりが辛い。