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儚き夢と折れた翼  作者: 垂瀬一太
0章
6/13

災い転じて福となす?

お久しぶりです。遅れてすみません。申し訳ないことに…今回も話は進みません。

「生徒会に入らないか?」


暁先輩にそう言われた俺は確認のため質問をする。


「生徒会に入れというのはどのような意味でしょうか?」


「言葉通り君の生徒会入りを望んでいるということだ。」


出会ったばかりの後輩にそんなことを言うなんてつくづく暁先輩は不思議な人だ。


「理由を聞いてもいいですか?」


「君に惚れたからというのはどうだろう?」


それを聞いて俺は少し後ろへ下がった。


「ジョークだよ、ジョーク。本気にしないでくれ。勧誘した本当の理由は君の魔法に感心したからだよ。」


自分で言うのもなんだが俺の能力は珍しいと思う。周りからは「万物創造」なんて呼ばれているが今、起こすことが出来る現象はその名前と少しずれている。実際のところ俺の魔法は自分の記憶を頼りに内魔力を練って剣を再現するだけだ。しかしつくれるのが内魔力の分だけな上にとても少ないため全てを注ぎ込んでも剣5本分だろう。しかも全魔力を使うと動けなくなってしまうため実戦では2本創れればいいほうだ。

この能力は便利で日常でも使うことができる。


例えば…ハサミの代わりに使いたいとき、缶詰を開けるとき、穴を開けたいときなど用途は様々だ。


けれど先輩と揉めたときは能力は使わなかったはずなんだけどな…なんで知っているんだ?俺が考えていると先輩が察したように答えてくれる。


「君の能力のことは君の入学時のデータベースから知ったんだ。もともと声をかけるつもりだったんだよ。」


「珍しいかもしれないですが、ただ剣を創れるだけですよ?」


「拳で語り合って君が武術にすぐれていることも分かった。それに君にはまだ色々とありそうだ。」


先輩は少し目を細めて俺の目をみてくる。先輩の俺を見透かすような目に何を見られたのだろうか。あの時のことは知らないはずだが…これ以上関わりたくないな。だが生徒会の勧誘というのは大きな事だ。あの人の意見も聞きたい。ちょうど明日の夜に連絡が来るはずだ。そう思った俺は誘いに対して曖昧な返事を返す。


「すみません、ここで直ぐには決められないです。明後日まで考える時間をもらってもいいですか?」


「もちろん。詳細はその時に話すよ。何かあったらこの部屋に来るといい。」


「はい。」


「ところで壱夜くん。大丈夫かな?」


「何がですか?」


「今日の予定は覚えているだろう?入学式のあとには何かがあったはずだ。私にはないが君にはあるものだよ。」


なぞなぞか?俺は真面目に考える。俺がしないことなら…自宅で映画鑑賞、と直ぐに答えられるがなんだろう?


「下校ですか?」


「それは私もあるよ。流石にがっこうぐらしではない。」


「稽古とか?」


「それは学校に関係がない気が…」


「いや関係あります。相手に気を遣わないと生きていけない社会に慣れる稽古ですよ。」


「壱夜くんは学校嫌いなのかな?」


思いつかない…俺が考え込んでいると先輩がヒントをくれる。


「ちなみにあと少しで終わるね。あと藤東さんにも関係がある。」


余計に謎が深まった。明日那に聞いてみるか、と振り返ったら

彼女はいなかった。あれ〜?ここに一緒に来たはずなのに。待てよ。

そういえば俺達は何処へ向かっていたんだ?確かF組の教室に向っていたはず…ああぁ


「分かりました。クラスでのホームルームですね。」


「気づくのが遅かったようだね壱夜くん。」


先輩の声と同時にチャイムがなる。あれまさか…


「あの、先輩これって?」


「君の思っているとおりホームルーム終了のチャイムだ。おめでとう君は晴れて入学初日から遅刻だ!」


「良くないですよ。完全にクラスから浮いたじゃないですか。」


「そんなに気にすることはない。担任には既に言ってある。」


なんて手の込んだ勧誘なんだ。先輩はそこまでして俺を生徒会に入れたいのだろうか?ってあれ?明日那はいつの間に教室へ行ったのだろう。


「先輩、明日那はいつ出ていったんですか?」


「結構前だね。僕が君に用があると言ってブラブラしだして直ぐに出ていったよ。」


あいつ俺を置いていったな。非常な奴め。


「俺はこのあとどうしたら…」


「もう帰っていいよ。ここではこれから会議をやるから出ていって欲しい。」


急に呼ばれて邪魔者扱いとはこちらも非情だ。俺は言われたとおりに廊下へと出て辺りを見渡す。先輩の魔法によってここへと導かれたわけだが学校の景色など何処でも変わらない気がする。もっとカラフルでクラスごとに廊下が変わるとかすれば先輩の魔法に引っかかることもなかったのに…いや、これは言い訳ではないぞ、事実だ。別にせっかく魔力の動きを視ることが出来るのに使うチャンスを逃して悔しいとか思ってないからな。

窓の外を見ると校舎を出て帰っていく生徒たちが見えた。どこか緊張した雰囲気なのは一年生らしい。楽しそうに話しているのを見るとなんだか悔しい。今頃はあの中に俺も入れていたのかな…初対面の人に話しかけ話題を見つけ会話を繋ぐ、そんな普通のことをしている自分を想像……

出来なかった。頭の中には挙動不審で怪しそうな雰囲気を出している自分しか浮かばなかった。想像ですら会話できないとは!

自分のコミュニケーション能力の低さに落ち込んでいると唐突に声がする。


「あ、あ、あれぇ?あなたもしかして壱夜くんですか?」


「初対面みたいにするな、それに話しかけづらいけど隣の席になったからなんとかしないと…みたいな雰囲気やめてくれ、明日那?」


「そ、そうね。それで先輩の話は終わったの?」


「ああ、それなら既に終わって用済みさ。生徒会室で会議だから出てけだって。」


「ひどいね〜、自分から呼んだのに。じゃあそんな悪いことは忘れて直ぐに帰りましょ!」


「まぁ今日のことはそんなに気にしてないから。」


「フウッ」


明日那は俺の袖を掴んでとっとと帰ろうとする。そんな明日那に真面目な態度で言う。


「明日那に聞きたいことがあるんだ。」


「何?」


「いや、もし幼馴染に裏切られておいて行かれたせいで人生の一部を失ったらどんな気持ちなんだろうな〜と思ってさ。」


ギクッ 明日那が歩みを止めて固まった。


「それに明日那」


「ナ、ナンデショウ?」


「いや、ね?明日の持ち物なんだろうなって。俺クラスに行けてないからさ…」


「めっちゃ気にしてるじゃない。なーにが気にしてないよ。ネチネチネチネチいじめか!」


「開き直ってる明日那さんと被害者の壱夜君でした。」


「悪かったわよ〜。真琴許してよ〜。」


俺は縋ってくる明日那にニッコリ微笑みながら言い放つ。


「あれ、あなたどなたですか?僕今日遅刻したのでクラスに行っていないから面識がある人はいないはずなんですけど?」


「うわぁ~ん。」


明日那がついに泣いてしまったので俺はからかうのを止め、慰めにかかる。まぁ実際気にしてないからな。明日那は話の内容に関係無かったから暇になるのは仕方ない。

俺が気にしていないと言っても、


「嘘でしょ、これからも毎日ネチネチ言ってくるんでしょ〜。何でもするから許してよ〜。」


「ゴクリ、本当に何でもするのか?」


それを聞いて明日那は慌てたように手で体を抱くようにした。


「何でもってエッチなことはだめだからね。(今はまだ早いというか…)」


最後の方が聞こえなかったが何を言っているんだろう。そんなことよりもっと大切なことがあるだろうに。


「明日那、それよりもっと凄いことなんだけどいいよな。」


「ええー!もっと凄いこと…」


明日那は少し迷っていたようだが決意したように手を後ろで組んで胸を張りながら言う。


「そうよね。真琴に寂しい思いをさせた私が悪いのよね…。何でもいいからとっとと言っちゃって。でも一つだけよ。」


「じゃあ朝起こしに行くの一週間なしでいい?」

……

「駄目ー!」


「何でもって言っただろ?」


「でも真琴が起こしてくれないと学校に遅刻しちゃう。」


「もう高校生なんだから一人で起きてくれよ。」


「嫌ったら嫌〜。」


なぜ朝起こすことがエッチなことより大切かって?後者に興味がないというのもあるが俺にとって明日那を起こすことはとても面倒だからだ。

明日那の家は俺の家の隣に合って、彼女は一人で暮らしている。そして寝付きが良すぎるため目覚し時計をかけても起きない。今のご時世ハウスキーパー(家を掌握するプログラムで予定をセットしておくだけで起床、朝食、入浴など生活のサポートをしてくれるもの)があるのだが明日那の家は由緒正しき家であるためそれがない。だからいつも幼馴染という理由で俺が起こしに行っている。

しかしこいつは俺が起こそうとすると俺に抱きついてきて、男の子が喜ぶようなことをして…

はくれずただ関節をきめてくる。俺を侵入者として認識しているのか戦闘態勢に入ってくるのだ。由緒正しき道場の娘だからだろうか?

さらに厄介なのはこれが必ずとは限らないことだ。ただ抱きついて来るときもある。まぁこの時は嬉しいけど…この判断が難しいためいつも関節を痛めてしまいその日は倦怠感が半端ではない。

だからこそ俺は起こしに行きたくないのだ。かと言って有栖や聖菜姉さんを行かせるのも危険だ。だからこそ日々の安寧のためにも今回の命令権を使って止めなければいけない。

明日那も遅刻したくはないだろうから譲らないだろう。そこで妥協案を出してみる。


「そうだ。俺は起こしに行くけど部屋に入ったら枕を投げつけるからそれで起こすのはどうだ?俺も組み付かれることはないし、明日那は起きられるしいいだろ?」


「え〜、それ絶対寝覚めが悪いよ〜。」


「我儘言うなよ。それにもしこの事が学校に広まったら俺とお前噂されちゃうぞ。」


「え!(ニコッ)」


「なぜ嬉しそうなのかは分からないが俺はこれ以上失敗したくないんだ。」


俺は明日那に頼み込む。折れない俺を見て明日那は小さな声で言った。


「分かったわよ、自分で起きますぅ〜。」


俺は喜びで飛び上がりたい気分だ。喜びを隠しきれない俺を見て明日那は不機嫌そうだ。そんな明日那を連れて俺は帰路に着いた。


家の前で明日那と別れ(まだ彼女の機嫌は治っていなかった)家へと入った。


「有栖、聖奈姉さんただいま。」


声をかけても何も返ってこない。

いつもなら、おかえりなさい兄さん!怪我はありませんか?何か問題をおこしてませんか?と有栖が。おかえりー。辛いことがあったら私の胸貸してあげるよ?と聖奈姉さんが返事をしてくれるのに…たいてい慰めるような言葉だけどな。かつては引きこもりだった俺に対する優しさだから心は温まっていたけど、そんな言葉をかけられていた自分が情けなかった。

けれど今は違う。明日にはあの人との連絡もあるしなんとしてもこのチャンスを掴まなくては…。そんなことを考えながら自分の部屋へと入ったもののする事も無く、なんだかんだで色々あったせいか俺は誰もいない家で深い眠りについてしまった。



そして次に目を開けると眩しい朝日と見知った幼馴染の顔が映った。

……は?


この作品は今のところコメディ要素たっぷりだけど後々は抑えていくつもりです。次回は真琴の家での話、そしてあの人とのお話、クラスデビューの三本でお送りする予定です。3月中には更新したいな〜

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