ここは何処?
遅れてすみません。書いていて楽しくなってきたせいで今回も話は進みません。長い目で見ていただけると幸いです。
教室まではお互い無言で歩いていた。明日那はキョロキョロ辺りを見ていてまるでRPGをやる初心者みたいだ。
その時俺は頭の中で考え事をしていた。そうどうやって教室に入るかについてを。
ガラガラと勢いよく教室の扉を開ける。そして少し注目を浴びたまま席に着く。これがそこまで目立たずかつクラスでハブられるほどの陰キャラにもならないために考えていきた作戦。名付けるならば「ガラッと小さなインパクト、でも一瞬だよ」作戦だ。
中学の時は学校をサボっていたのもあるが入学してからずっと静かだったからな。まぁ事情があったから仕方がなかったがこれでも一応は人なんだ。友達くらいほしいんだよ!
よく言うだろ人は支え合って生きていくって、それは別に一人ずつなんて決まっているわけじゃない。今の俺は欠けているんだ…
それに高校は毎日通うつもりだからクラスで孤立すると学校に行きづらくなってしまう。
いや待てよもしここで作戦が失敗して変な目で見られたら逆に終わるかもしれない。俺はどうしたら…
「真琴〜早く入ろうよ。いつまで扉の前で緊張してるの〜」
いつの間にか教室の前に着いていた。明日那に言われて気づくとは情けない。
「分かってるよ。でも真面目に学校通うのは久しぶりだからどうすればいいのか考えてただけだ。」
「そんな事気にしなくていいの。パァ〜っと入ってパァ〜っと帰ればいいの。それに真琴なら気にしなくていいよ〜私が保証する。」
「それは心配になるからやめてくれ。」
「大丈夫だって〜よく言うじゃない、人の噂は75年って。」
「変なことわざみたいなのつくってるんじゃない。しかももとのやつより悪いわ。」
「アレ?そうだったっけ〜」
明日那はホントか冗談か分からないことがある。ホントだったら俺が勉強を教えてあげたほうがいいかもな。魔法だけできても社会では…ね?
「まぁありがとう。お前の明日那のお陰で緊張がほぐれた。察してくれたんだろ?」
「ウンソウダヨサスガワタシ…」
心に芽生えていた感謝の気持ちが一瞬にして消え去った。緊張がほぐれたのは事実だしそろそろ入ろうかな。
そう思った俺は教室のドアを予定通り大きな音をたてて開ける。そして中に入る。予定通り音をたてて。
後ろでは明日那が笑っているがどうしたのだろう?まぁあいつのことだ。いつも通りの不思議な行動だろうと思いつつクラスの皆の反応を伺った。
「……」
全くの無言。俺は高校生になって変わろうと思ったが失敗したようだ。ただ高校生活は優先順位が一番ではないからいいかなと思い悲しみに耐える。取り敢えず挨拶はしようかな…振り返った俺は絶句する。
そう、まさかの誰もいない。
入るときは若干緊張が残っていて周りのことが目に入っていなかったから気が付かなかった。だから誰もいない教室に入って作戦を実行していた俺を明日那は笑っていたのか…全てを理解した俺のもとに明日那が駆け寄ってくる。
「ププ、大丈夫?真琴。私も真琴が入ったあとに気づいたから止められなかったんだ。ププッ。」
「…」
「どうしたの?そんなにショックだった?」
黙ってしまった俺を見て心配そうに明日那が声をかけてくる。実際俺は自分の失態に凹んでいるわけではなく、何故誰もいないのかを考えていた。俺と有栖は明日那を少し探してから教室へと向かったから教室へついたのは遅いほうだろう。
なのに誰も教室にいない。
これはおかしい。と思ったところで明日那が声をかけてきた。
「真琴、真琴、私大変なことに気がついたよ〜。」
「お前も同じことを考えていたのか。皆は何処に…」
「私、私、なんとバックを家に忘れました。」
「行ったのか…って今はそんな事より重要なことがあるだろ。」
「え〜何かある?」
「この教室の状況とか。」
「それこそどうでもいいじゃない。だって私もここ知らないし。」
「自分のクラスくらい覚えたほうがいいぞ。それに今日はバックだけ持ってくればいいから実質持ち物はない。」
「なあんだ、良かった。真琴、そういえば自分のクラスってここのこと?」
「そうだな。」
「へぇー、私達偉くなったんだね〜。」
明日那の声に俺は驚くしかなかった。なにを言っているんだと思いつつ扉に書いてあるクラスの表示を見ると生徒会会議室と書いてあったからだ。
改めて部屋の中を見てみると机もなく、大きなテーブルが部屋の中央においてあるだけだった。部屋が変わったのか?けど転移魔法なんて大きな魔法が発動すれば俺の目が感じるはずだが…
俺が今の状況を整理していると隣でキョロキョロしていた明日那が部屋の隅を見つめて少しジーッと目を細めた後腰を低くし突っ込んでいった。
俺の心の中は
「?」
今日の明日那はいつにも増してわからない。
その先は何もないはずだがと思ったものの先程部屋の変化にも気づいた彼女を信じ俺も目を凝らす。よくよく視ると光と魔力の揺らぎが見える。その蜃気楼のようなものは明日那の蹴りを避けると本当の姿を現し、手を上に挙げ降参の意思を示していた。その人は…
生徒会長の暁先輩だった。
「先輩何をしていたんですか?」
「いや〜君たちこそ何をしているんだい?ここは生徒会の会議室だ。部外者は立ち入ってはいけない。」
そう言われるとこちらが不利になる。どうしようか迷っていると明日那が話す。
「あなたね〜私達の後ろをつけていたのは。ここへ向かう途中後ろに姿はなかったけど〜気配は感じたからなんだろうな〜って思ってたけど。それに周りも変な感じだった…」
「さぁ〜なんのことやら。僕はここで仕事をしていただけさ。」
「でもつけていた人と匂いが同じだよ〜。」
明日那は格闘家としての勘とセンスはあるからな。言っていることは本当なのだろう。
明日那の話を信じると俺達は教室ではなくここへ向かって歩いていたらしい、先輩に尾行されながら。地図に従って歩いてきたし、もし地図に細工があっても廊下や部屋の様子を見れば違いは分かるだろう。ということは…魔法か能力?確か入学式の前先輩は存在を消していた。おそらく先輩は光を操る魔法士か能力者だろう。そこまで考えてやっと理解できた。
先輩も隠す気は無いようでアイコンタクトで俺にどうやったか分かるかな?と言っているように見えた。
「プロジェクションマッピングに近いですか?先輩。」
「おぉ流石だな。そこまで考えつくとはね。」
「真琴〜私まだ分からないよ〜。」
おっと、明日那は分かっていないようだ。
「だそうですので先輩、説明をお願いします。僕も確証は得られてませんから。」
「そろそろ本題に入りたいしいいだろう。彼の行ったとおり君たちは教室までの風景を見ていたと感じていただけで実際はその映像の映された生徒会会議室への道を歩いていたんだ。」
「ん〜?先輩が映像を映していたの?そしたら光を出している先輩は姿が見えちゃわない?」
「いやその心配はなかった。きみ、えー確か藤東さんといったかな、は気配しか感じなかったはずだ。」
「じゃあどうやったの?まさか透明マント?」
「残念ながら四次元ポケットはないんだ。今回は君たちの目を支点としてそこから偽の像を映したのさ、直接。」
「え〜〜〜」
明日那は驚いているが俺は予想していたのでそこまで驚きはない。
「明日那気にするな。多分目への影響はないはずだ。」
「先輩、映写機みたいですね〜」
「失礼だから黙ろうか。」
俺が明日那の口を抑えるが、先輩は手で気にするなといったふうな事をする。
「藤東さんの言うように実際家でよく映画を流しているしね。」
「そ、そうなんですか。」
「今度君も来るといいよ。」
「はぁ…」
「ちなみに料金は3000円だよ。カップル割引で二人で5999円だね。」
「割引少ないですね。というか料金あるんですか。」
「もし家族だったら二人で3000円になるからお金が心配ならカップルで来なければいい。」
恐らく先輩は恋について恨みがあるのだろう。
「じゃあ〜先輩。私と真琴は大丈夫で〜す。」
「何故だい?」
「言いにくいですけど…私と真琴はもう家族ですから…ポッ。」
明日那は頬を赤く染めながら言った。
「ハハハ、これは一本とられた。それにしても壱夜くん早すぎないかな。結婚は18からだぞ。」
「明日那取り敢えず嘘はやめよう。」
「えー嘘じゃないよ。既に私、壱夜家に溶け込んでると思うんだけど〜。」
なんて紛らわしい言動と行動を。そして先輩はただ悪ノリしているだけだろう。クスクス笑っている。これだから人と話すのは嫌なんだ。近くには明日那くらいしかいなかったから話し方が分からない…。
「すみません、藤東が失礼なことを言ってしまって。そういえば先輩は要件があって魔法を使用してまでここに俺達を呼んだのではなかったですか?」
「あ〜、そうだったよ。二人が面白いから忘れていた。それと映画の事はジョークだよ。まぁカップルとかは消えた方がいいと思うけどね!」
俺は心底面倒だなという念を込めた視線を向ける。
「ゴメンごめん、本題に入ろう。といっても用事があったのは壱夜くんだけなんだけどね。」
そう言って先輩は今までの空気を払拭するように真面目な表情でこちらに向き直ると口を開いた。
「君には是非とも生徒会に入ってもらいたい。」
「…え?」
意味が分からないと言うよりかむしろ唐突すぎてついていけないと言った方が正しいのか。明日那は自分に関係がないと分かった途端にボケーっとしていたから反応はない。
また面倒な事になりそうだ。そして俺の学校生活はまだ始まらない…
次の更新は20日までにはしたいです。そしてクラスであいつと出会う?