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儚き夢と折れた翼  作者: 垂瀬一太
0章
13/13

出会い

遅れてしまいスミマセン。これからも遅いですが必ず更新はします。

 次の日の放課後、真琴は有栖と下校しようとA組へと向かった。もともと彼は明日那と帰ろうとしていたが用事があると断られてしまったのだ。真琴は用事とやらが気になったが本人が言いたがらないので、詳しく聞かずに別れた。頭の中では“あいつのことだから手伝いか何かかな…”と考えていた。

A組に着いた真琴は周りからの視線に気がついた。制服が違うわけでもないが、彼らは自らがA組である事に誇りを持っているのだろう。そんなところに別のクラス、しかも別の階の生徒が現れたとなると仕方がないのかもしれない、と考える。

しかし、そんな事を気にする真琴でもなくいつもと変わらない様子で教室へと入っていった。有栖に声をかけようとしたときちょうど誰かと話をしていた。その相手は白に近い銀色の髪を肩まで伸ばしていて、花の付いたカチューシャをしていた。背は有栖くらいでどこかほんわかとした雰囲気をしている。小柄ながらも女性らしい姿に可愛いというより美しいと感じた。真琴は話している有栖の机へと近づいて声をかけた。


「有栖、話しているところ悪いが一緒に帰らないか?」


クラスメイトと話していた有栖だったが真琴の声が聞こえるやいなやすぐに声の方へと振り向いた。その顔はクラスで作るような笑みではなく、誰が見ても嬉しそうと思うような雰囲気を纏った笑顔だったことから兄に会えた嬉しさは一目瞭然だった。


「わざわざ教室まで迎えに来てくれてありがとうございます、兄さん。」


そう言った有栖だったが嬉しそうな顔が一転、申し訳なさそうな顔になった。真琴はなんとなく察して声をかけた。


「どうした有栖?何か用事があったならそちらを優先して構わないぞ。」


有栖や聖奈は真琴の頼みを断るとき毎回、今のようにバツが悪そうにする。最近は高校生ともなると兄は冷たく扱われると何処かで聞いたことがあるので、真琴から見たら気にかけてもらえる分嬉しいのだが、彼はもう少し離れても良いんじゃないかなと思ってもいる。

有栖は真琴の言葉を聞いて理由を話そうとしたが、何かを思い出したようだった。その仕草を見て真琴も先程からこちらを見つめる少女の視線に気がついた。

真琴は有栖に目線を向けて説明を促した。


「すみません、兄さん。うっかりしていました。こちらは新しい友達の三葉です。

三葉、こちらが私の兄の真琴です。」


「真琴さんですか。初めまして、妹さんと仲良くさせて…もらう予定の三葉です。」


三葉は挨拶と共に頭を下げた。今の発言といい、おっとりした姿といいなんだか垢抜けているな、と真琴は感じた。


「こちらこそよろしく三葉、有栖の兄と言っても学年は変わらないから是非仲良くしてくれると嬉しい。」


「はわわ、双子なんですか?珍しいですね。」


三葉は両手を少し開いた口に当てて呟いた。なぜ大きく驚いたのかは真琴は分からなかったが気にせず自己紹介を続けた。


「クラスはFでどちらかというと異能力は得意じゃないな。魔法よりも拳の方が便利だと思っている。」


「は〜、珍しいんですね。私はこれといって紹介することは無いのです。…強いて言うなら、泳ぐ事ですね。」


「泳ぐ事がどうしたっていうんだ?」


「いや、好きなんですよ。水と遊ぶことが。」


「そうなのか。でも俺は泳げないから羨ましいよ。」


「泳げないんですか?」


「泳げなくても困らなかったからな。」


真琴は小さい頃ほぼずっと屋敷の中にいた為に海やプールに行ったことがなかったのだ。彼が家族と過ごす日々や訓練に明け暮れるという日常に退屈だと思わなかったことも原因の一つかもしれない。彼が何故か趣味へと移った会話をもとに戻そうとすると、有栖が時計を見て声を上げた。


「そろそろ行かないと見学が始まるわ。準備はできてる?」


「水着は持ってるよ〜。」


真琴が首をかしげると有栖が謝りつつ告げた。


「本当にすいませんでした。要件を云うことを忘れてました。」


「部活動見学だよ。け、ん、が、く」


真琴は聞き覚えがなかったので、また初日に言われたのかと思ったが有栖が三葉の言葉を引き継ぎ詳しい説明を始めようとした。


「兄さんは忘れているかもしれませんが、昨日デ…」


察しのいい真琴は“忘れている”の時点でデバイスに手をのばしていた。案の定そこには部活動見学のお知らせというメッセージが届いていた。ちなみに届いたのは昨日だった。

有栖の説明を聞き流しながら、メールを読むとそれが今日から二日間あるということが分かった。真琴がだいたいの内容を確認し終えて顔をあげると少し頬を膨らませこっちを睨んでいる有栖と目があった。取りあえず真琴は弁明をした。


「聞いていたよ。」


「聞いていませんよね?家でお話ですね、兄さん。」


すぐさまバレて、真琴は溜息をついた。本人も目があった時点で諦めていたのだが。


 ようやく三人の意思疎通がかなったので、教室を出て有栖の希望する所へ行くこととなった。それは魔法研究会で、この学園の中で最も所属している生徒が多い部活動だ。生徒の8割が所属していて、活動は名前の通りでただ魔法や能力を高め合う事をしている。実際は実戦をしたり、似た系統同士で話し合ったり各々やりたいことをしている。所属人数は多いものの実際には最低何日参加のような縛りもないため場所に余裕はある。

話を聞いていた真琴はふと疑問に思ったことを口にした。


「この学校には他に部活がないのか?」


彼は当たり前の疑問を聞いたつもりだったが、有栖だけでなく三葉にまでため息をつかれた。


「私達はね、自由なんだよ。縛られてないんだよ。」


と三葉が説明してくれたが、真琴は理解できなかった。


「自由って部活はそういうものだと思っていたんだが。違うのか?」


部活は入るも入らないも自由なのになぜそんなに部員が多いのか、ということを聞きたかった真琴は再び三葉に質問をした。


「まだまだ甘いね、囚われちゃってるね。」


より理解できなくなり反応に困った真琴は有栖の方へ助けを求める。すると、真琴に聞かれたくて仕方がなかった有栖は直ぐに答えた。もちろん、分かりやすく。


「ただ部活は複数入部可能というだけです。多くても3つらしいですけど、きちんと顔をだし参加していればいいので掛け持ちしている人は多いみたいですね。あと、みっちゃんが言いたかったのは部活は一つまでという先入観にとらわれるな、という意味だと思います。今言ったことは全てデバイスに届いたメッセージに書いてありますから。ほんと兄さんは仕方ない人ですね。」


いつも通りの小言を言われた真琴だったが、これからは何か分からない事があったら妹に聞こうと思った。隣で得意げにしている三葉の言いたいことは伝わらないことが明らかになってたからだ。本人は満足していたので彼はあえて何も言わなかった。

有栖の先導のもと外へと着いた真琴たちは人だかりの多さに驚いた。人垣の先では授業で扱うような魔道具を用いて精度を競ったり、魔法詠唱の速さを競っていた。それを見た真琴は間髪入れず呟いた。


「これは既に学校の授業とやっていることが一緒じゃないか?」


「違いますよ兄さん、ここでは自分の魔法を自由に練習したりアレンジしたりできるんです。学校では決められた事しかやれませんし、基本的な事が多いです。魔法や能力本来の自由さを求めて皆ここに所属したがるんですよ。」


真琴は有栖の言葉を噛み締めた。自分のしたい事を自由に…と反芻した後再び呟く。


「それは家での自習トレーニングでは?」


ソレを聞いて有栖はまだ分からないのかと言わんばかりに口を開いた。


「何を言ってるんですか?学校でしか出来ない事があるじゃないですか。魔道具ですよ、まどうぐ!」


ソレを聞いて真琴は納得を、三葉はあくびをした。


真琴は魔道具の重要性を思い出した。ほとんど全てを黃の家が生産しているため流通が少なくそれらは教育機関向けに造られている。またあくまで補助的なものであるため、そして場所を取るために個人で持っても意味がないと言われている。真琴は自分が使えないために存在を忘れていた。消していたの間違いかもしれないが。そんな納得した顔の真琴に有栖は聞いた。


「兄さんは何をします?私は魔法の出力を調整するために負荷をかける魔道具を使いたいと思っているのですが。」


「俺はパスかな、魔道具を使えないから家で練習するのと変わらないしな。楽しんでくるといいよ。そういえば三葉はどうする?」


真琴は一緒に体験できないことにショックを受けている有栖の頭に手を置いてそう言った。

久々に話をふられた三葉は待ってましたとばかりに


「水泳部だよ。泳ぐに決まってるよ。」


「それはさっき聞いたが、有栖に付き合うかを聞きたかったんだが。」


三葉は何を言っているのかと言わんばかりに手を振った。


「行くわけないな〜い。退屈だよ。」


「そんな…」


出会ったばかりの友人に裏切られ一人になった有栖は少し落ち込んだ。


「じゃあ何で付いてきたんだ?」


「場所わからないんだよ〜」


真琴はため息をついてから有栖に言った。


「俺は三葉が心配だし付いて行くことにする。」


有栖は自分も水泳部についていくかを少し悩んだ。しかし自分の魔法への欲が勝り残ることにした。


「わ、分かりました。終わる時間も分からないので次は家ですね。待たせてもいけませんし。」


「暗くなる前に帰ってこいよ。」


そう言って真琴は三葉を連れて列を抜けた。二人は人だかりが見えなくなるまで後ろから有栖の目線を感じた。


 水場での実習や来月にある対抗戦の競技練習などに使われるために大きなプールがあった。真琴がデバイスを見つつ歩いているとその後ろでついてくる三葉の顔はとても楽しそうだった。

プールに着くと皆、魔法研究会を見に言っているのかプールに一年生はいなかった。先輩は真琴にも泳ぐことを勧めたが彼は断りプールサイドから見ているだけだった。三葉は先輩から話を聞くなり、その場で服を脱ぎだし下に来ていた水着でプールに入った。真琴は脱ぎ捨てられた服を回収しながらはしゃぐ三葉を見ていた。彼女はのんびりした口調だったが泳ぎは早く長い間水と親しんでいる事が真琴には伺えた。また身体のメリハリも少しあり皆見惚れるだろうとも思った。流石にずっと見ているわけにもいかないので真琴は帰宅後にすることを考えていると突然水をかけられた。そちらを向くと案の定三葉が笑っていた。


「ニヒヒ、暇してるのかな?私と一緒に水で遊ばない?ほらほら〜」


と声をかけてきたので、真琴は仕方ないなと言いつつも足どりは軽く近づくと三葉と水を掛け合った。

一時間と少し体験したのち二人はプールを後にした。三葉はもちろん水泳部に入るらしい。


「真琴はすごいね。まるで忍者だね、ビュンと移動してたね。」


真琴は途中から遊びだったはずだが本気で水を避けようとしていた。それでも三葉の霧状の攻撃のせいでたいそう濡れてしまった。


「勝負事にはつい本気になってしまうんだ。でも、後半に使ってた霧状のやつは魔法か?」


真琴が聞くも三葉はさぁね〜、とはぐらかすだけだった。


「それで真琴は入るの?ぶかつ。」


「いや、入るにしても水泳部はないな。」


「なんでさ。楽しいよ?」


「前に言ったが泳げないんだ。今日みたいな水遊びなら楽しいんだがな。」


ふ〜ん、と三葉は言うと楽しそうに提案をした。


「そうだ、私が教えてあげるよ〜。部活に入らなくてもそれくらいはしてあげます!」


ニヒヒ、と笑う三葉は何を考えているか真琴には分からなかった。しかし、


「そうだな、時間があればお願いしようかな。」 


いつの日かの為に泳げるようになるのも悪くないと思った。


三葉とは変える方向が違うため真琴は一人で帰路についた。その途中でデバイスが震えた。真琴が開くと生徒会長からのメッセージが届いていた。


「明日の放課後に生徒会室で話がしたい。そろそろ本番だろう?」


遂に来たかと真琴は思った。ここがこれからの生活の分かれ目になることは間違いない。真琴はより一層鍛錬に励もうと思った。そして久し振りの対戦にどれくらい自分が通用するのかが楽しみにもなった。

バトルはいつか、できればあと3話以内には始めたいです。

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