式への乱入(リリ、リョーマside)
本日二話目です!
いよいよ式が始まる時間がやって来た。
私は純白のウエディングドレスに身を包む。
横には私の夫となるリオ=カーミルが、タキシードの服を着てそわそわとしている。
何故その場所にいるのがラクトじゃないのかと、何度も考えた愚問がまた頭をよぎるが、私はそれを首を降って打ち消す。
私はもうこの男と結婚することを決めたんだ。
いつまでもラクトの亡霊に取り憑かれていては、そのラクト自身が悲しんでしまうはずだ。
だから、私は心を押し殺す。
今はただ、感情の無い人形に成り下がるのだ……。
リオ=カーミルと腕を組んで中央の道を歩く最中、参列者達の表情が私の目に入ってくる。
みんな、何かを我慢するような顔で、引きつった笑みを浮かべながら拍手をしてくれている。
特別席に座っているリョーマもまた、唇を血が滲むほど噛み締めて、それでも気丈に拍手をしてくれている。
……大丈夫だよ、リョーマ。
私はもう、大丈夫だから……。
結婚式が始まった。
司教による話が終わった後、ようやく誓いの言葉だ。
「汝は、妻、リリアーナを生涯愛することを誓いますか?」
司教の言葉にしっかりと「はい」と頷くリオ=カーミルを見ながら、私は覚悟を決める。
これが終わったら、本当に私は自分の心というものを失ってしまうだろう。
でも、もう必要のない感情だ。
私はそう割り切って司教の言葉を待つ。
その瞬間
「リリアーナが泣いてるぞ!これで本当にいいのか!」
という、誰かの叫び声が聞こえた。
何を馬鹿なことを、と私が思った瞬間に
ポロッ
と、私の頬を涙が滑り落ちる。
え、と思う内にどんどんと伝っていく涙を、私は慌てて拭い去った。
でも、私の涙は既に色んな人に見られていたみたいだ。
「本当だ」
「リリアーナちゃん、やっぱり嫌がってたんじゃないか」
そんな声がどんどんと広がっていき、それが騒ぎへと変わっていく。
本来ならそれを止めようとしなければならない私だが、今はそんな事も頭に入らないほど呆然としていた。
完全に殺したと思っていた感情。
それが、涙が出たことで、まだ残っている事が分かってしまったのだ。
どうやら、私は相当往生際が悪いらしい、と、私は自嘲気味に苦笑を漏らす。
そんな時に
「リオ=カーミル、少し話があるんだが」
私の大好きな彼みたいな話し方をした男が、リオ=カーミルの前に歩いてきたのだった。
△
▽
△
僕はどうしようもなく荒れ狂う感情を、唇を噛み締めることで何とか我慢してたっす。
口の中に鉄のような味が広がるっすけど、そんなことは今はどうでもいいっす。
中央の赤い道を歩いていくリリアーナさんはとんでもなく綺麗だったっすけど、その表情は、昔の輝いていた頃のそれとは比べ物にならないっす。
リリアーナさんは今、どんな気持ちなんすかね。
傍から見たら、幸せなように見えるのか。
それがずっと疑問だったっす。
でも、それもある男の一言で明らかになったっす。
「リリアーナが泣いてるぞ!これで本当にいいのか!」
その言葉が言われた瞬間に、全員が口々に自分の思いを言い始めたっす。
みんな、リリアーナさんの不当な結婚が気に入らなかったと知って嬉しかったっすけど、僕はそれ以上に驚いていたっす。
リリアーナさんが、泣いているのを見て。
久しぶりに、かれこれ半年くらいは見ることのなかったリリアーナさんの感情。
だから、不謹慎かもしれないっすけど、僕は物凄く嬉しかったっす。
そんな時に
「リオ=カーミル、少し話があるんだが」
そう言って前へ出る、黒い服を着た男の人の姿があったっす。
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