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式場を後に。

本日二話目です!

「ぐすっ………」


リリの啜り泣く声が聞こえる中で、壁からはい出たリョーマが、涙を流しながら俺に近づいてくる。


「師匠……。今まで、どこにいたんすか……」


かなりの衝撃があったはずだが、今はそんな痛みさえ頭に入っていないようだ。


俺は、そんなリョーマを嬉しく思いながら微笑む。


「リョーマ。それは後で詳しく説明する。

だから、とりあえず今は、この場をどうにかしないとな」


そして、俺はその微笑みを苦笑に変えて、参列者を見渡した。


俺が勇者だと分かって驚きで固まっている者。

未だに状況が分からずに呆然としている者。

俺が生きていたと知って泣いて喜んでいる者。


そして、今にも卒倒しそうな程顔を青白く染め上げている者。


最後は言うまでもなくリオ=カーミルだが、とにかく、全員が全員混乱している状況なので、早く何とかしないといけないだろう。


それに、リョーマも気づいたようだ。


「……分かったっす。でも、僕も師匠に、いっぱい言いたいことがあるっすからね」


「………ああ、分かってる。何でも聞くよ」


それが再会の喜びだろうと、俺の行動に対する怒りだろうと、俺は何でも受け止めるつもりだ。


それ程の事を、俺はしてしまったのだから。


「リリ」


リョーマが、今はこれ以上話さないという俺の意思を読み取って黙ったのをみて、俺は今度はリリに声をかける。


「俺はもうリリを1人になんてしない。

だから、今はしないといけないことをさせてくれ。

分かるだろ?リリなら」


すると、リリは困ったような笑みを浮かべて、俺から離れた。


「ぐすっ、そう言われたら、離れるしかないでしょ、ラクト。

でも、絶対に、後で説明してもらうからね」


「ああ、もちろんだ」


やっぱりリリは賢い。


自分の感情よりも場の状況を優先できるのは、凄いことだ。


そうやってこの1年間も乗り越えて来たのだろう。


俺は1年もリリに感情を殺させてきたことを、本当に申し訳なく思う。


でも、その辺の話も後だ。


今はこの場を何とかするとしよう。



「みんな、聞いてくれ!」


俺は出来るだけ声を張り上げて、みんなに聞こえるように叫ぶ。


全員の視線が一気に俺に集中したのを見て、俺は若干ドキマギしながら告げた。


「えっとだな、どうやら俺は死んだと思われてたみたいだけど、実は生きてたんだ。

だから、その事を他の人にも伝えておいて欲しいんだよ」


本来なら、混乱を生まないためにも誰にも告げずにひっそりと暮らすべきだったのかもしれないが、我慢ができずに正体をばらしてしまった時点でそれも不可能だ。


これだけの人がいれば、噂話は直ぐに広がっていくだろうからだ。


だったら、最初から伝えてもいいと言った上で、条件を言った方がいい。


「でも、俺がどんな顔をしているか、とかは言わないでくれ。

俺も魔王を倒したから、ゆっくりと過ごしたいしな」


俺がそう言うと、みんなは口々に俺に言ってくる。


「分かりました勇者様!サイン下さい!」

「もちろんです勇者様!握手して下さい!」

「任せてください勇者様!ハグしてください!」


………なんかみんな自分の欲望に忠実過ぎる気がするんだが。


なんか若干目がハートになっている人もいて、リリの視線を受けて少し気まずい。


なので、俺はそれらの声を適当にあしらい、出口へと歩いていく。


横にはリリとリョーマも一緒だ。


その途中で、腰を抜かして青白い顔をしたリオ=カーミルが目に入ったので、一応最後の注意をしておくことにした。


「リオ=カーミル」


「な、な、なんだっ」


「今回は仕方がなかったからいいが、次にリリに手を出したら、

許さないからな?」


「っ!」


俺が威圧と殺気をリオ=カーミルに集中させてそう言うと、リオ=カーミルはそのまま泡を吹いて気絶してしまった。


俺はそれを見て、若干やり過ぎたかなと申し訳なく思いながら、式場を後にした。




▲▼獣人の国▼▼


「何!?ラクトが現れた!?」


「は、はい!何やら、実際に目撃した人がいるだとか!」


そう言って膝をつく側近、レウスに、獣王、ガレルは少し苛立ちながら睨みつける。


普段は20歳位の、唯の若者にしか見えないガレルだが、この時の雰囲気は相当な貫禄を持つように感じられた。


その怒りの原因は、さっきレウスが言った言葉にある。


「お前は、本当にラクトが現れたと思ってやがるのか?」


「は、はい、その、リリアーナ様の結婚式に乱入したとかで……」


「俺達は過去に、そうやって何度も裏切られてきたんだろうがよ!」


ダンッと机を強く叩くガレルに、レウスはビクッと肩を震わせる。


「一体、何度騙されれば気が済むんだ。

いい加減認めなきゃいけねーんだよ!

ラクトがもう死んだってな…」


その言葉は、自分に言い聞かせているような響きでもあった。


それを見たレウスが何か声をかけようとしたが、その前にガレルは真剣な顔で男の方を向く。


「戦争だ」


「………はい?」


そして紡ぎ出された答えに、レウスが困惑して返すと、ガレルは怒りを抑えきれない様子で叫んだ。


「今回の件で、よーく分かった。ラクトの与える影響がどれ程大きかったかってことがな。

そしてその原因を作ったのは誰だ?ラクトを殺したのは誰だ?魔王と魔族だ。だから、俺は魔族に全面的に戦争を申し込む!」


「お、お考え直しを、獣王様!」


レウスが必死な様子で止めようとするが、ガレルは聞かない。


「そう言って、リョーマの坊主とリリアーナの嬢ちゃんに1度止められたがな。流石に俺の堪忍袋ももう限界なんだよ!」


「で、ですが!ここで戦争をしてしまえば、世界に影響が!」


「既にそんなことを言ってられる時期じゃねえだろ!

エルフ族は女王が引きこもり、魚人族は海中から出てこなくなった!巨人族はすっかり元気をなくしちまって、竜人族も完全に閉鎖した!それらの全てが、ラクトを奪った魔族を憎んでるだろうよ!だったら、俺が魔族を根絶やしにした方が、少しはいい方向に回るってもんだろうが!」


「そ、それは……!」


「精鋭達を用意しろ。100人だ。それ以上はいらん」


そこまで言って、もう話すことないと顔を背けるガレル。


それを見たレウスは、もう何を言っても無駄だと悟り、それならばよりすぐりのメンバーを選ぼうと決意した。


レウスもまた、楽斗に仲が良く、その楽斗を奪った魔族を恨んでいたのだ。


だが、世界の影響を考えたら、と我慢していたのだが、獣王が決定したのなら遠慮はいらない。


そう考えて、目に憎悪の感情を浮かべながらメンバーを選ぶ。




こうして、獣人族による魔族領への進軍が始まったのだった。



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