俺は勇者だ。
感想でリリアーナさんを早く助けて!という声がありましたが、もうすぐです!
楽しみにお待ち下さい!
「リオ=カーミル、少し話があるんだが」
そう言って中央の道を歩き進む俺を、リオ=カーミルがその生まれつきの鋭い瞳で睨みつけてくる。
周囲の参列者がなんだなんだと騒ぎ立てる中、リオ=カーミルが冷静な口調で俺に言う。
「貴方は誰だ。今は神聖な儀式の最中だ。関係の無いものが口を挟んでいい場ではない」
俺はその反応を見て、まだリオ=カーミルが俺の正体に気づいていないと確信する。
それは、リリも同様のようだ。
まあ、黒いフードで顔を隠した今の俺を、死んだ勇者だと思う人はまずいないだろうが。
それよりも、俺は真剣な表情で言ってくるリオ=カーミルを見て、馬鹿馬鹿しさにため息をつく。
「神聖な儀式、ねぇ」
すると、リオ=カーミルが俺に怒りのこもった視線を向けてきた。
「………何が言いたい」
「いや?カーミル家の人間でさえ心から祝福することの出来ない式を、果たして本当に神聖と言っていいのかな、と思っただけだ」
そう言って俺は周囲を見渡す。
一般の参列者はもちろんの事、本来ならリオ=カーミルを祝福すべきカーミル家の人間までが、どこか苦々しい表情を浮かべている。
それが表すことはつまり、本当はリオ=カーミルとリリの結婚を認めたくはないということだ。
それは、俺とリリがどんな関係だったかを、深く知っているからだろう。
「分かるか?全員、お前とリリ………リリアーナの結婚を認めていないってことだよ」
俺は纏めてそう言い放った。
すると、リオ=カーミルが逆に余裕を取り戻したように、はははっ、と笑い始める。
そして、俺を嘲笑うかのような表情で言ってきた。
「はっ、何を言うかと思えば。
要は、唯の嫉妬ということか。
男の嫉妬ほど、醜いものは無いぞ?」
リオ=カーミルがそう言った瞬間に、「誰が言うっすか……誰がっ!」という我が弟子の殺意のこもった言葉が聞こえたが、俺も同意だったので聞き流す。
その間にも、殺気などには気づかないリオ=カーミルがドヤ顔でペラペラと訳の分からないことを言い続ける。
「それに、もう、俺とリリの結婚は決まったんだ。部外者の貴方が何かを言ったところで、それは覆りやしな--」
「はぁ、もうそういうのはどうでもいいんだよ」
俺は、そのリオ=カーミルの言葉を遮るようにして、大きくため息をついた。
「俺はそういう話が聞きたいんじゃないんだ。お前の言い分なんて、正直どうでもいい」
俺はそう言ってから、未だに言葉を発さずにいるリリの方を向いて、告げる。
「本当に、これでいいのか?」
俺は、リリの本当の気持ちを知りたかった。
このまま式をぶっ潰すのは簡単だが、俺が1度死んでから、既に1年が経っている。
リリの気持ちが変わっていても……仕方がないと思うのだ。
まあ、もしそうなった場合は、俺は生きる屍と化すだろうが、その時はその時だ。
だから俺が言いたいのは、今のリリがどんな気持ちでこの結婚式に挑んでいるのか、ということだ。
過去を綺麗さっぱり忘れ去ってこの政略結婚に臨んでいるのか、本当に無理矢理この式に参加させられているのか。
それを知らないことには、俺は何の行動も起こすことが出来ないのだ。
「…………私は」
俺の問いに、リリは少しの間の後、何かを吹っ切ったように答える。
「私は、やっぱり、結婚なんてしたくない!」
そう言った瞬間に、リョーマの喜びに満ちた「リリアーナさん……」という言葉が聞こえる。
そして、リリはその後も言葉を矢継ぎ早に繰り出し始めた。
「ラクト以外の人との結婚なんて、私には考えられない!
だって、私はラクトが……………って、私、知らない人に何言ってるんだろ……。
こんな事言っても仕方ないのに………」
そのリリの、悲哀と苦痛の混ざった表情を見て、リョーマがさっきと違う感情の篭った「リリアーナさん………」と呟いたのが聞こえる。
そして同時に、俺も胸が締め付けられるような苦しみを味わう。
俺のせいで、どれだけリリ達に苦しみを与えてしまったのかを知ってしまったからだ。
そして更に、俺はこれ以上にない喜びを感じてしまっていた。
それは1年間もの間、リリが俺のことを想い続けてくれていたと知ったからだ。
だから俺は、もう我慢ができずに、リリの言葉を聞いて慌てふためいているリオ=カーミルに向かって言い放つ。
「……リオ=カーミル。お前はさっき、『部外者に覆すことが出来ない』とかなんとか言っていたよな?」
「な、なんだ、それがどうした!?」
「じゃあ、これを見ても同じことが言えるか?」
俺はそう言って、黒いフードを脱ぎ去る。
その瞬間、俺に幾つもの、驚愕に満ちた視線が殺到した。
「……な、おま、お前、死んだんじゃ……」
「おいおい、人を勝手に殺すなよ。
まあ、肉体の蘇生のために1年以上掛かったのは確かだがな」
正確に言えば1度死んだのだが、律儀にそれを説明する義理はない。
「見ての通り、俺は勇者ラクトだ。これで当然のように俺は関係者になった訳だから、改めてもう一度言わせてもらうぞ」
そう言ってから、鋭い、怒りのこもった視線で、リオ=カーミルを睨みつけて、告げた。
「俺のリリに、手を出してんじゃねえぞ」
前作よりブクマが伸びなくて少し不安ですね…。
皆様に楽しんでもらえてるのでしょうか^^;
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