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プロローグ

どうも、『すみを。』です!

今作は前作と違い、純粋な日常物を書いてみることにしました!

楽しんでいただけたらと思います!

また、最初の方は視点変更も多くありますが、10話以降はほとんど主人公視点でいきますので、ご了承くださいm(_ _)m

『ぐっ………ゆ、勇者め……』


「やったっすね、師匠!」


「はぁ、はぁ。

ああ、これで終わりだ」


地球からこの世界に勇者召喚されてから約三年。

十九歳となった勇者、霧宮きりみや楽斗らくとは、倒れ伏す因縁の相手である魔王を目の前にし、疲労感とそれを上回る充足感を感じながらその膝をついた。


そうして息を切らす楽斗に、勇者パーティの僧侶であり、楽斗の恋人でもあるリリアーナが、目に涙を滲ませながら、それでも満面の笑みを浮かべて抱きつく。


「おめでとう!ラクト!良かった!良かった!」


「おう!ありがとう、リリ」


懸命に楽斗の体に飛びつくリリアーナを、楽斗は万感の思いでしっかりと抱きしめ返す。

そうして抱きしめあう2人を見ながら、楽斗の弟子であり、勇者パーティの騎士であるリョーマは、はぁと軽く溜め息をついた。


「まあ、気持ちは分かるっすけど、こんな目の前でラブラブ空間を出さないで欲しいっすね」


「……本当にね」


苦笑いを浮かべて言ったリョーマの言葉に、勇者パーティの魔道士であるカナエが同意し、同じく溜め息をつく。

だが、口ではそう言いつつも、二人はラクト達を止めようとはしない。

何故なら、この瞬間を二人がどれほど待ち望んでいたか、これまで共に旅をしてきた中で痛いほど知っているからだ。



『魔王を倒して、一息ついたら、俺と結婚してくれ』



一年前に楽斗がリリアーナに告げたこの言葉。

この時から、二人は魔王を倒すために必死に努力をしてきた。

そして、現実では死亡フラグとして忌み嫌われているこのセリフをもへし折り、二人は今ようやくその約束を果たしたのだ。

こうして抱き合う位は許されるだろう。


だが、幸せの終焉もまた、唐突にやってくる。


二人の感動の場面をぶち破ったのは、呻き声を上げながら傷ついたはずの体を起こし始めた魔王だった。


『ぐっ…………』


その声を聞いた途端、楽斗もリリアーナも反射的に戦闘態勢に入る。

それは長年培われてきた経験からなせる反応だった。

更に、よろよろとその体を立ち上げる魔王を目にして、楽斗の剣を握る力も強まる。

今すぐに攻撃すれば今度こそ倒せると頭の中で分かっていても、脳内の何処かから警報が鳴り響き、足を動かすことができないでいた。


そして、それは勇者パーティの騎士として今まで経験を経てきたリョーマも同じことであった。


「何が、起こるっすか」


得体の知れない恐怖心が心を埋め尽くす中、体を奮い立たせて必死に震える腕を使って剣を握る。


前方に剣を構える自分達の勇者がいる。

その事実がなければいつ心が折れてもおかしくないほど、今の魔王からは果てしないほどの圧力オーラが滲み出ていた。


勇者パーティの全員が強ばった面持ちで魔王の行動の一挙一動を警戒する中、魔王が遂にその二メートルはある体をゆっくりと立ち上がらせた。

そのギラリとした瞳が勇者パーティを映す。

そして、ニタァっと、そんな音が聞こえてきそうなほどに気持ちの悪い笑みを浮かべた。


その視線を受けたリリアーナは、恐怖心からか、自分の体に湧き上がる感情を抑えきれず、体を震わせ始める。

楽斗は慌ててその体を支えて、魔王に鋭く叫んだ。


「まだ戦う気かっ!」


言いながら片手で剣を握り直す楽斗だったが、続く魔王の言葉にその目を見開く。


『いいや、この戦いは我の敗けだ。

最早、我に勝ち目などないだろう』


ならなんだと言うのか。

戦う気が無いくせに、何故立ち上がったのか。

そんな疑問が頭に浮かんでいくと同時に、楽斗は、 何か、言い知れぬ嫌な予感がどんどんと湧き上がってくるのを感じる。


そして、それは直ぐに現実のものとなった。


『だが、我は唯では死なぬ。

貴様らを道連れにし、この勝負を終わらせる』


「っ!」


魔王がその言葉を発した瞬間、魔王の体に絶大な魔力が集中する。

それは本来なら体に集めてはいけない量。


魔力は個人により総量が決められており、それ以上の魔力を集中させると、体に負荷が掛かってしまう。


だが、今の魔王に集まっている魔力は、限界など生温い程の莫大な量だった。

つまり、魔王は本気で勇者パーティを道連れに、自爆する気だ(・・・・・・)


『本来ならこのような手は使いたくなかったのだがな。

だが、致し方ない』


「くそっ!」


楽斗は慌てて仲間を見渡す。


リリアーナ………駄目だ。恐怖で震えてしまっている。


リョーマ………表面上は大丈夫そうに見えるが、脂汗を浮かべていることから、恐らく内心では震えているのだろう。


カナエ………カナエが1番しっかりとしていそうだ。震えてはいるものの、気丈な視線で楽斗の指示を待っている。

楽斗ならこの場を切り抜けられるという、信頼の証だろう。


『ふはははっ、さあ、カウントダウンだ!』


「カナエ、よく聞けっ!」


魔王のカウントダウンが始まった瞬間、楽斗は今出来る中で最適な方法をカナエに告げる。


『10』


「今俺達に出来るのはここから逃げ出すことだけだ!」


楽斗の言葉を聞いて、リリアーナとリョーマも彼を見つめる。

彼女らもまた、楽斗が全員で逃げ出す方法を考えられると信じているのだろう。


全く、嬉しい話だ、と、楽斗は思う。


『9』


「でも、ここから通常の手段で逃げ出すのは時間が足りない!」


だが、楽斗にはそんな都合のいい方法、皆目検討もついていなかった。


『8』


「だから、今から緊急転移魔法を使う!

みんな近くに集まってくれ!」


だから、楽斗は叫ぶ。

せめて、自分以外のみんなは脱出させようと。


『ふはは、無駄だ!7』

『6』

『5』


「よし、発動させるぞ!」


不自然にゆっくりと進む魔王による死のカウントダウンが迫る中、楽斗の魔法が完成する。

そして、みんなが頷いたのを確認してから、楽斗は魔法を発動させた。


『4』


「『送還』!」


楽斗による魔法により、仲間達の足元に魔法陣が広がり、眩い光に包まれていく。

だが、勇者パーティのみんなの顔は、より一層憂いに染まった。


「ちょ、ちょっと待つっす!師匠!」

「ラクトくん、まさか、あなたっ!」

「え、嘘、嘘でしょ、ラクト!こんなのって!」


その魔法陣は、楽斗の足元には広がってはいなかったからだ。


『3』


「ごめんな、みんな。みんなを助けるには、俺の魔力を全部使って、転移魔法を発動させるしかなかったんだよ」


「待って!待ってよ!ラクト!」


リリアーナの必死の叫びを聞いて涙をこらえながら、楽斗は仲間達に最後の言葉を告げる。


「時間が無いから、最後に言うぞ。

……リョーマ、お前は俺の最高の弟子だ。

これからも修行して、尊敬されるような人間になれよ」


「……師匠、こんな別れ方はないっすよ…。

でも、仕方ないっすね、師匠ですもんね。

でも、最後にこれだけは言わせて欲しいっす…。

……ぐずっ、今まで、今までありがとうございましたっす!!」


リョーマは最後に号泣しながら感謝の言葉を浮かべ、光に包まれて消えていった。


『2』


「カナエ、俺がいなくなった後も、みんなのことを頼んだぞ。

お前は俺が認めた、最高の魔道士だからな」


「……もう、それは狡いわよ、今までそんなこと言ったこと無かったくせに。

でも、分かったわ、任せて!あんたがいないと何も出来ない勇者パーティなんて、ごめんだからね!」


カナエは最後にそう軽口を叩いて、笑顔で消えていった。

その瞳には、涙が溜まっていた。


『1』


「リリ」


「……どうしても、どうしても、ここに残るの?」


「……ああ、俺がここに残らないと、みんなを助けられないからな」


「なら、なら、私も残る!ラクトだけを残したりはしない!」


「……っ!………ごめんな、リリ」


「な、なんで!待って、ラクト!」


リリアーナの意思とは関係なく、魔法陣の光はどんどんと強まっていく。


そして、楽斗は涙をこぼしながら、最後にこう言った。


「リリ、愛してる」


「ラクト、私も、私も愛して--」


それに対する、リリアーナの言葉は最後まで言い切ることが出来なかったが……楽斗にはしっかりと伝わった。


だからこそ、楽斗は魔王を睨む。

ハッピーエンドを、バッドエンドに書き換えた張本人を。


『ふはは、そう睨むでない。

折角カウントダウンの時間を引き伸ばしてやったというのに』


だが、そんな楽斗の視線をものともせず、魔王は不気味な笑みを浮かべる。


「何を考えている?」


『いやぁ、何も?

唯、貴様だけが死んだ後、貴様の仲間が何を思って生きていくのかと考えると、つい楽しくなってしまってな』


「……屑が」


『ふっ、死ぬ前にそんな口がきけるとは大したものだ。

だが、どちらにせよ、これで我も貴様も終わりだ』


「……ああ、そうみたいだな」


カウントダウンが終わってすぐ爆発というわけでは無かったが、もう既に魔王に集まる魔力はとんでもない量になっている。

逆に、何故今爆発しないのかが分からないほどに。


『まあ、元はといえば、我が気絶している間、貴様が女と抱き合ってさえいなければ、直ぐに脱出出来ていたはずだったのだがな』


「……ああ、それは反省しているよ」


『ふはは、お互い様というわけだ』


「……まあな」


不思議と、最後の最後に会話を交わす宿敵二人。

これも最後の一興か、と楽斗は呑気にそんなことを考える。


『む?』


その時、魔王がそう声を発し、魔王の魔力が一つに集まり始めた。

それはたしかに爆発の前兆だ。


『どうやら、ここまでのようだな』


「……ああ、そうみたいだな」


どんどんと魔王の魔力が一塊になっていく。

そしてそれが魔王を中心に黒く、歪んでいき、遂に爆発する直前に、俺は最後に魔王に言ってやった。


「糞喰らえ」


この時の魔王の顔は、形容し難いものだった。

そして、魔王もまた、何かを発しようとした瞬間に




魔王城は、爆発した。





『身体状況確認……………確認完了。現在の分裂率、98%。蘇生させるのに、1年はかかると判断。


復活の加護(・・・・・)』、発動します』




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