まるで夢のような?
いつものように朝を迎えて、アパートの部屋の扉をゆっくりと開けた私の目の前に、それは美しい妖精がいました。
突然の出来事に、なにが起こったか把握するまでに十分。
いまだ夢の中かと頬を抓ってみたのですが……痛いのです。
阿呆のように妖精を見つめていると、妖精は口を開きました。
「いつもお仕事にお疲れのあなた。そんながんばっているあなたに、ご褒美として私の国へ連れていってあげましょう」
そう妖精が言った瞬間、あたりが光に包まれ、気づけば見たこともない場所にいました。そこは色とりどりの花が咲き乱れ、この世の物とは思えぬ美しさでした。
そして、先ほどの妖精に導かれ、私は美しい宮殿へとやって来ました。宮殿では、食べたこともないような変わった、けれども、頬が落ちそうになるくらい美味しい食事をいただき、美しい妖精達のダンスを見せてもらいました。
そして、腕時計を見てみれば、あれから四十分ほども経っていました。
「そろそろ帰らなければ。今日も仕事があるんです」
妖精達は寂しそうな顔をして「もう少しだけ待ってください」と私に告げ、どこかへと行ってしまいました。
そのまま待つこと五分。
「これは私達からのプレゼントです。どうぞ受け取ってください」
渡された箱を開けると、また眩い光に包まれ、今度は自分の部屋に戻ってきていました。
プレゼントとはいったいなんだったのか、と思いながらふと鏡を見ると、私は王子様のようなタキシードを身に纏っていました。
これがプレゼントか……などと考えながら、慌ててスーツに着替えること五分。
急いで部屋を飛び出し、会社に向かいました。
「――それが、一時間も遅刻した理由かね?」
「は、はい……」
「おまえ、明日からもう来るな」