五話『金の力はすごい』
急にタイトル変えてすいません。
ただ、納得いかないので変えました。
ぶっちゃけこれでも納得いきません。
何かいいタイトルないのだろうか
現在俺の服は大分変わっていた。
元の野蛮人スタイルからピシッとした執事風コーデに。これで白髪のオールバックで老けたらセバスチャンと呼ばれそうだ。
黒い靴に黒いズボン。裾が長く、後ろの下部分が二つに裂けている上着。胸元のV字のところには白いシャツっぽいのが見えている。白の手袋まであり、完成度が高い。お値段も高かったが。
正式な服の名前は全部知らんから庶民らしい名前で言ってみた。とりあえず執事っぽい服装だ。
まあもちろんこの下には青白い神々しささえ感じる全身タイツ、もとい全身鎧を着ているんだけどな。もはやタイツだけど防御力は折り紙つきだぜ! ブラックタイガーの歯すら少し食い込むだけで食い止めるんだぜ! しかも治癒効果付! これ売りに出したら国が二、三買えるんじゃね? いいすぎかな? ハハハ。
ともあれ見た目が、ヤバイ、怪しい、キモイの最悪三拍子揃っていたのがいまや、黒い、素敵、カッコイイの大分良い感じの三拍子になった。別に三拍子にしなくてもいいんだが。
しかしそれでも奇異の視線はなくならない。何故だ………………あ、リュックか。
と、一人で納得していると。
「おお、そこのカッコイイあんちゃんちょうどいいな。これ見てってくれよ」
突然聞こえた声に反応して振り向いてしまう俺。いや、今自分でもカッコイイ格好してると思ってるもん……しょうがないじゃないか……
まあそういう商法だから仕方ないか。適当に大声上げてそれに振り向いた人に焦点をあて、褒めておだてて買わせる。うむむ、やるなぁ。ちなみにこの商法は今俺が作った。
「どんなのが売ってるんだい?」
「おう! 俺はな、いろんな『不思議』と呼ばれるものを売っているんだ!」
男が言うとおり男が広げている風呂敷にはいろんな『不思議』なものがあった。
定番の髑髏やら水晶やら怪しげな液体が入ったビンやら…………てかあの液体はただ腐ってるだけじゃね?
と、そのとき一つのものに俺の視線は釘付けになった。
「おい、これって……」
「お?! あんちゃんお目が高いねぇ」
三角形の形をしたものが二つ。アーチ状の棒の外側についている。
そして男はそれを頭へと持っていく。
それを装着した男は何になったか…………
「猫耳かよ!」
「あ? あんちゃん知ってんのか」
そう言って男は猫耳を外す。全く、見たくもないもの見せ付けられた。
ん? 目が留まったものがなんだって? 大抵こういうところで主人公は変なもん拾って事件に巻き込まれるんだよな~。ま! 俺には関係ないね!
「ということで、めぼしいものがなかったから帰るよ」
「ああ、それならしかたねぇな。またこいよ」
やけにあっさりと帰してくれる男に首をかしげながら俺は歩みを再会した。
「さてと~、まだ日は高いな~。あれ? 宿って日の高いうちにとったほうが良いんだっけか?」
そう一人ごちながら俺は辺りを散策する。
しかしそうは言ったものの宿をとっても荷物なんて置けないからな~。俺のこれ全部売ったら軽く国が十個単位で買える気がする。あくまで気がする、だが。
と、そこで大通りを外れたちょっとだけ大通りとでも言える少しだけ広い道に一つの馬車が通っていった。
馬車にはもう一つ荷車らしきものがつながれており、そこには檻があって…………
「おお! 奴隷か! これはテンプレだな。厄介事だ」
俺はそう心では理解している。理解しているが……
「奴隷とか、うわぁ。めっちゃ心惹かれるじゃん。買いたい。俺に逆らわずどう扱っても良い奴隷。しかもパッと見獣人っぽいやつまでいた。モフりてぇ……」
おっと、俺の願望が全部口に出ていたようだ。周りの人がドン引きしている。
俺はなんだかいたたまれなくなり、人々の間を縫って奴隷を売買しているやつがいると思わしき馬車へと接近する。
俺は背にある大玉ほどのリュックの重さなど感じさせない動きで跳ぶと馬車の上に着地した。
そして窓を覗いて脅かしてやろうと思ったのだが…………
「うわっ!」
馬車が重さに耐え切れずに車輪をぶち壊しながら落下する。
そして落下すると、今度は屋根が俺の重さに耐え切れず壊れる。
そう、俺の纏っている全身タイツという名の防具。滅茶苦茶重いんだよね。具体的に言うと多分トンは軽く超えてるんじゃないかな? まあ超硬くて金属疲労がないんだ。欠点があってもおかしくないよね。
俺は万が一でも中の人に落ちて殺さないように最大限の注意を行いながら落下する。それにしても不思議だよね。どんなに物体が重くなっても落下速度は変わらないんだから。
余計なことを考えながら俺は無事? 地面に着地した。
落下分の勢いもあったからか足が軽く石畳にめり込んだ。うわぁ、ずっとこれには注意を払っていたのに……
と、
「だ、誰だ?! おい! 護衛は何をしている!」
「うわぁ、ごめんなさい。わざとじゃないんですよ~」
馬車の藻屑の下にでっぷり太ったおっさんが喚いていたので助けてあげた。一応謝りながら。自分で言うとなんだが、全然心がこもってないな。見るからに私腹を肥やすことしか考えてない豚に見えたからかな?
俺が馬車の残骸をどかしてあげると男はまた喚き散らしながら立ち上がる。
「き、貴様! 私を誰だと思ってる! サーフォルン商会の長であるピッグルー・サーフォルンだぞ!」
「うん、しらね。どうでもいいから奴隷売って欲しいんだけど」
なんか自分は偉いんだぞアピールしてきたので俺はそれをあっさりスルー。だってこういうのめんどくさいじゃん? だから単刀直入に聞いてみたわけ。
まあ最大の理由はこんな豚と長く話していられないってことかな。
豚は俺の態度が気に食わないのか顔を真っ赤にして叫ぶ。どうでもいいけど唾を飛ばすのやめてくんない?
「お、お前! 知らないからといってその態度はなんだ?!」
「だって~、知らないものは~、知らないんだも~ん」
「き、き、貴様ぁ!」
「はい」
もう面倒になったのでこの手の輩に効果絶大なWAIROを渡してみた。
効果覿面! すぐに豚はニコニコ笑顔を取り戻し俺へと擦り寄ってくる。来んなよ気持ち悪い。
ちなみに渡した額は金貨十枚ほどだ。慎ましく生活すれば十ヶ月は生活できる額だ。ビバ金の力。
「あ、はい! 知らないものは仕方ないですよね~。それで、奴隷をお求めになってるとか?」
「おう、だから売って欲しい。店の場所と名前を教えてくれ。後で行くわ」
「はい喜んで!」
豚はすぐにピーチクパーチクと場所やらを喋ってペコペコと頭を下げながら俺を見送った。マジで金の力はすごい。
俺はいつの間にか出来ていた野次馬どもに、シッシッ、と言って散らすとまた冒険者ギルドへと戻っていった。いや、奴隷っていくらするのかわかんねぇじゃん? だからとりあえずミスリル硬貨でもおろしてこようかと……
「ということで、ミスリル硬貨一枚ちょ~だい!」
「…………お主は一回金銭感覚というものを学んだ方が良いぞ?」
俺はギルドにてお金をせびりに……ゴホン、引き出しに来た。
すると何故かギルド長は呆れたような、諦めたような顔でミスリル(と思われる)硬貨を俺に渡した。
「サンキュ!」
俺はそれだけ言うと唖然とする室内の冒険者&受付たちを無視して奴隷商のところへと向かった。
ふふふ、俺のかっこよさにビビッてたな、あれは。
俺は絶対違うと心の奥では思いながらもそう自分に言い聞かせた。