最終話『傍若無人、異世界を征く』
優斗たちとの戦闘は森に入ってからずっと俺が優勢だった。
木はやはり俺の踏み台に耐え切れず吹き飛んでしまうが、次々と足場を変える俺にはあまり関係のないことだった。
ハンデを負っていても本来の戦いが出来るということで余裕が出来、相手の攻撃を受けると致命傷を受けることもあることで程よい緊張感を得ていた。ちなみに優斗に斬られた腕は既にくっついている。全身タイツも流れた血を吸い、成長し斬られた部分を補っていた。自動修復機能付とか本当に便利だよな。執事服はもう既にボロボロだが。ちなみにリラは俺の首にかけられている。カンガルーか。
そんな風に戦いという名の蹂躙を行っていると優斗が急に咆えた。
「みんな! やつは周りの木を利用して攻撃してくる! 魔法で周りの木を吹き飛ばすぞ!」
「は~い!」
「うむ!」
「了解……」
そして優斗は額の汗を腕で拭い、男臭い笑みを浮かべると、
「絶対勝つぞ!」
そう言って詠唱を始めた。
優斗の側近二人はその笑みに、心底心酔している、といった風に表情を緩めたが、すぐに引き締めて優斗を守るように地面に着地した俺と対峙した。
それを冷めた目で見つめる俺はため息をつきたい気持ちを抑えて大地を蹴った。
結局勇者達は俺にボコボコにされて転がっている。俺たちのいた森は激しい戦闘に巻き込まれ辺り一帯焦土と化した。
優斗と和服美人は刀を折られ、活発系女子はプロテクターなどすべて破壊されてうつ伏せに沈んでいる。唯一理沙だけがボロボロになりながらも立っていた。今にも倒れそうだけどな。
「さぁて、とりあえず殺しとこっかな!」
「させ、ない……!」
俺が全身タイツのみの姿でかつ傷一つない状態でそう軽快にいうと理沙が杖を握り締め構えた。
「冗談だって〜。同じ同郷の馴染みじゃん。流石にそんな非道じゃねぇよ」
「………………」
「てかお前不思議に思わなかったか?」
俺の言葉に理沙は訝しげな雰囲気を出していたので好感度を上げるのも兼ねてちょっと喋ってみる。
俺の質問に理沙は思い当たることがあるのか黙って続きを促す。
「お前も思ってる通りこの世界の主人公さんだよ」
「!」
そう言って俺が足元に転がっている優斗の腹を蹴る。優斗は気絶しているのか、うっ、と苦しそうなうめき声をあげるだけで何も反応しない。
その非道な行いに息を飲む理沙は俺を見る視線を鋭くさせた。おーおー、怖いね〜。女の子を怒らせたらダメだな。
「ねえねえご主人さま〜。もう終わり〜?」
そこに俺の後ろから声がする。リラは周りの惨状を見て、うわー、と言うだけで特に反応していなかった。もっと驚くかと思ってたのになぁ。
俺はリラを片手で抱き上げて向き合う。
「おう、俺も十分楽しんだしそろそろ帰るか!」
「うん!」
「ちょ、待って! 優斗がおかしいってどういうこと?!」
俺がリラに笑いかけてそのまま帰ろうと勇者(笑)に背を向けて歩き出そうとしたら、理沙の叫び声が聞こえ、足を止めた。
そういえば途中で止めてたな、と思い出した俺はちゃちゃっと説明することにする。
「簡潔に言うと〜、そこの〜、勇者様は〜、洗脳とか受けちゃってるかもしれない〜、みたいな〜?」
頭悪そうに、そして聞いた相手がイライラするような声と言葉遣いでそう言うと理沙は真剣に考え始めた。んだよ、面白くねぇ。
その後、理沙は帰る俺に気付くようなことはなくずっと考え事をしていた。
ビューンと超特急で俺はカリバン帝国まで帰る。途中で何かひき殺した感じがしたけどまあいいでしょ。俺だし。
城門まで亜音速くらいの速さで走っていった俺は大層驚かれたが冒険者カードを見せたらすんなりと通してくれた。なんか釈然としてなかったけど。
城壁内に入ってからはリラを袋から出し、手をつないで歩いた。俺は服がボロボロで見るに耐えない様相だったが、リラは少し服がしわしわになっているくらいで滅茶苦茶可愛かった。あれ? 論点ずれてる?
そんなこんなで執事服を新調したり、買い食いしたりした後俺達は宿屋へと帰っていった。
「ねぇねぇ、リラ勇者様に会いたかった~」
宿で俺が疲れからか、ベッドにダイブすると同じく俺の隣にダイブしたリラがそう言ってきた。ちなみに全身タイツは店の前に置いてある。やっぱ地面は加護でもかかってるのか普通に置いた程度ではびくともしない。放り投げたら沈んだけど。
俺はプク~と可愛らしく頬を膨らませるリラの頭を撫でながら苦笑する。
「アハハ、ごめんよ~。でもリラもあの人怖かっただろ~?」
「……うん。なんか変だった」
「そう! あいつは変な人、つまりは変態だから近寄ったらダメなんだよ~。わかった?」
「う~ん……わかった! リラちゃんとご主人さまの言うこと聞くよ!」
お~よしよし、と抱きしめて耳と尻尾を撫でてやるとリラは簡単にふにゃった。チョロい。
てかさりげなく勇者(笑)のことdisってたけどリラあまり反応しなかったな。まあ同じように思ってたら反応しようがないか。ハハッ。
にしてもあの勇者本当に洗脳とか受けてるだろ。俺がリラを出したとき明らかに目が変わっていた。もっと言えば心音が酷く落ち着いていたし、呼吸も不自然なくらい深くゆっくりしていた。
って、勇者(笑)のこととかどうでもいいや。勇者と会うっていう目的は果たしたし、これからどうしようかな~……
「う~ん……」
「どうしたの? ご主人さま~」
俺がこれからのことに頭を悩ませ唸っているとリラが俺の腕の中で可愛らしく小首をかしげて聞いてくる。あ~、もう! 可愛いなぁ!
俺はそんなリラを見ていてもたってもいられず胸に抱え込んで頭を撫でまくる。
「うりうり~!」
「ふみゃ~!」
そんな風に俺はその場その場の時間を楽しんでいた。
「よし、魔王殺しに行くか!」
翌朝、目が覚めた俺は宿の飯を食うと宿を引き払い、外で全身タイツを着ながらそんなことを宣言した。
リラは俺の勢いに乗ってか、おー! と元気よく手を突き上げる。やべっ、この子天使すぎる。無邪気とかそういう次元じゃない。
全身タイツを着終え、いつもの大玉サイズのリュックを背負うと俺は外へ向かって歩き出した。
が、
「あ! いたぞ! あいつだ!」
「ん?」
大通りを俺とリラが歩いていると、前方から衛兵っぽいやつの叫び声が。
何事だ、と見てみるとそいつは俺の方向を指差してそのようなことを叫んでいたらしい。
念のため俺は後ろを振り返り、勘違いでないか調べる。
「フヒッ? ぼ、ぼくにな、なにかよ、ょぅなの……?」
「衛兵さんが呼んでるぜ。大人しく捕まってこいよ」
「フヒィ?!」
ちょうど後ろに挙動不審な豚がいたので俺は完全にこいつを探してたんだな、と思って自首を促す。豚はなにやらフヒフヒ言って更に挙動不審になっていた。こいつガチで豚なんじゃね? もしくは聞いたことないけど豚の亜人的な。それってオークじゃん。
「隙あり!」
「ねぇよ」
と、俺が馬鹿なことを考えていると何をトチ狂ったか衛兵が俺に向かって斬りかかってきた。しかも側面から。まあこの馬鹿でかいリュックがあったら側面じゃないとねぇ。
確かに俺は後ろ向いてたし豚と話してたよ? でも強者っていうのはなんか気配的なのを読むんだぜ? 俺はよくわかんねぇけど。
…………それって隙あるじゃん!
「っていい加減一人漫才は悲しくなってきたな」
「おい! 速く応援頼む!」
「ファイトー、頑張れー」
俺が思考を逸らしながら衛兵の剣を捌いているとなにやらエールが欲しいとのこと。仕方なく一番近くにいた俺が応援してやると衛兵は顔を真っ赤にして更に剣の勢いが増した。
にしても何で急に狙われるようになったのかねぇ。
俺は疑問はそのままにしておかない主義なのですぐに目の前の衛兵に聞いた。
「なあ、なんで俺斬りかかられてんの?」
「黙れ大罪人! 勇者様を殺しかけておいてこの国から出られると思うなよ!」
「な~るほど、そういうことね~」
黙れとか言いながらちゃんと説明してくれた衛兵君に感謝感激雨あられ! ん? 違ったかな?
ともあれなんだか俺はこの国に入れそうにないらしい。ま、今から魔王殺しに行くところだったしちょうどいいか。
俺はそう決めるとだんだんと集まってくる衛兵たちにも聞こえるように声を張り上げて言った。
「さあさあ俺が勇者カッコ笑い君を半殺しにした『死神』さんだよ~! 殺しにくるなら殺しにおいで! ただし、そのときは死神の鎌が振りぬかれる覚悟もしとくんだな!」
やべぇ、ちょっとポエマーみたいな感じで恥ずかしいけど言えたぜ。一回死神とかけて何か言ってみたかったんだよ。もっとカッコイイのを言いたかったけど、まあ思いつかなかったんだから仕方ない。
そう叫んだ俺は見せしめに目の前の衛兵の首をチョンパする。あ、ちなみにリラは隣でずっと鼻歌を歌っている。
目の前の首から上がなくなった人間から血が噴水のように噴出す。うへぇ、全身タイツなら血とかも吸収するけど執事服は見栄えが悪くなるやん。なお、可愛い可愛いリラは血の犠牲にならないよう俺の後ろだ。
今の出来事で俺を囲わんとしていた衛兵たちの動きがピタッと止まった。よ~し、今がチャンスだ! いや別に囲まれても余裕で行けたけど。
さて行こう、と呟いた俺はリラをお姫様抱っこする。
「ふみゃっ?!」
「よ~しリラ~、舌噛むなよ~。ほいさっ!」
そして跳躍。大分大きな力で蹴った石畳の地面は大きく抉れ、飛び散った小石が散弾となって衛兵を襲っていた。あ、ごめんね。
俺は激しく通り過ぎる風の音に負けないように大声を出す。
「よっしゃ! リラまだまだ楽しいことはたっくさんあるぞ~! 今んとこ俺ばっかだけどお前にも面白いことさせてやるからな!」
「うん!」
リラは天に浮かぶ太陽に負けないくらい輝かしい笑顔でそう頷いた。
うわぁ、いくらなんでもこれは適当すぎないかな(白目)
やっぱ俺って完結してから出さないとダメですわ。どうしても途中でやる気がなくなる。今も5,6万字の書き溜め小説が4つくらいあるものwww
とりあえずこんな駄作にここまで付き合ってくれたから本当にありがとうございます!
応援の感想とか滅茶苦茶嬉しかったです! うん、マジで。
今度は完結してから出すので遅くなりそうですが、しょうがないそんときは見てやるか、などと思う人がいたらお気に入りユーザー登録なんかしていただけるとやる気が上がりますねww
あ、ダラダラとあとがきすいません。そんなわけでここらで筆を置かせて頂きます(実際はパソコンだからなんていうのかわかんないけどwwあ、もちろん筆を置く、というのがことわざというか熟語というかそんなのだとは分かっていますからね!…………これがまた蛇足に……)
では!




