二十七話『お喋り』
俺は歩き始めて早速話し始めた。まずはコミュニケーションでしょ。
「なぁ、優斗君、でいいかな?」
「いや、優斗でいいよ。見た所歳はあまり変わらなそうだからね」
優斗はそう言ってイケメンスマイルを浮かべる。なにこいついいやつじゃん。まあ本当にそう思ってるわけじゃないが。
「なら優斗な。一応聞くがここにいるのは全員日本人で、三年前にカリバン帝国に召喚された、ってことであってるか?」
「あぁ、その通りだよ。学校の帰り道に突然光に包まれて一緒に帰ってた彼女たちと彼も巻き込まれたんだ」
そう言って表情に影を落とす優斗。
俺はもちろん聞き逃すことなく今の会話のおかしな所を指摘する。
「彼?」
「うん、最初俺たちは五人いたんだ。ここにいる四人ともう一人……」
この言葉にその彼のことを思い出したのか鎮痛そうな顔をする優斗。その両腕に取り付く活発系ショートボブ女と和風ロング美人も目を伏せて悲しそうなふりをする。
あー、もう、こいつら悪意をぷんぷん臭わせてくる。こういうのに敏感な俺にとって近くにいるだけでも吐き気がする。多分この優斗と一緒に旅できるのに他の男がいるってのが許せなかったとかそんな理由でやっちゃったんだろう。最初から力があったそうだし俺みたいな餓鬼が考えそうなことだ。
俺は魔法少女だけ本当に悲しそうにしてるのをチラ見してから話を戻す。
「そうか、聞いて悪かったな」
「いや、大丈夫だ。それで続きを喋るね。俺たちは光に包まれて気づけば帝都にある城の召喚の間と言う所にいたんだ。それからなんだかんだで説明をされて俺たちは世界を救うことにしたんだ。だけど彼だけは違ってね。急に拉致監禁しといて救ってくれなんて虫が良すぎる、とか言って協力を拒否したんだ。これには皇帝様もびっくりしてね。そのまま怒涛のごとく喋る彼に圧倒されて暮らしの自由などを勝ち取ったんだ」
うわぁ、それ典型的な俺tueeeeな主人公じゃないですかやだー。
多分後で再会して、な、なんでお前が! みたいな展開になるのだろう。そして勇者たちはその彼になす術もなく圧倒的な力でねじ伏せられ……
っと、それは後にしよう。一応頭にはとめといて。
そして俺は次の質問をしようとして、
「えっと、名前って何かな?」
「……ん? あぁ、俺の名前ね。俺は死神。日本人からしたらイタイ名前だけど『俺』はこの名前だ」
優斗の言葉に遮られ、その質問にすぐに答えた。
案の定優斗は俺の名前にどう反応して良いか分からず、はは、と乾いた笑いを零す。両脇の二人はずっと興味がないようで俺に視線を送ることすらしない。後ろの理沙は口元を押さえて笑っていた。旅のせいかややほつれたセミロングの黒髪が押さえた笑いに連動して小刻みに揺れる。お、あの子笑うと可愛いな。
優斗は心の整理をしたのか息を少し吐くと喋り始める。
「それで、し、死神、はどんな感じでこっちに来たの? それと良ければステータスを教えてくれないかな?」
俺は優斗の問いに思わず鼻で笑いそうになった。
ステータスを教えてくれ、だと? こいつ頭お花畑か? さっきは物分かりの良いイケメンかと思ってたがもっと評価は下降修正しないといけないようだ。アホな噛ませイケメン、って感じにね。
まあどうせ俺はステータス見れないし、こっちに来た経緯も話して問題ないなら話すけどね。
「おう、俺はビルの上で自殺しようとして飛び降りて気絶したんだが、次に目覚めると森の中だった」
優斗は俺の突然の自殺した発言に驚いて口を半開きにしたままアホ面を晒す。両脇二人はやはり無関心。後ろの理沙だけが優斗と同じようにこちらの話を聞いた上でポカンとする。
構わず俺は続ける。
「俺ってこんな見た目やん? クラスの端っこで一人寂しく本とか読んでそうな根暗な感じ。友達もいなくてさ。よく聞かない? そういうやつがイジメに遭うって」
「………………」
「家でも親父がとんだクソ野郎でさ、酒を飲んでは俺を殴ったり蹴ったり。幸い金だけはくれるから生きていけたがな。あ、母親はとっくの昔に出て行ったよ。俺が七つだったかな? よく覚えてねぇや」
「………………」
俺の衝撃発言に優斗と理沙が絶句する。ちなみに二人は本当に何も聞いていない。ここまで来るとむしろ清々しいな。てかどうやったらそこまで人の話を無視できるんだ? と思って見てみると、お前離れろ、いやお前こそ、みたいな感じで牽制し合ってた。アホらしっ。
俺はおちゃらけた感じで手をヒラヒラ降ってわらってみせる。
「おっとすまんすまん、全く関係ない話で暗くしちゃったな。話を戻すと、えーっと、こっちに来た俺がまず見たのは亀と虎だった」
「は?」
「どっちも日本っていうか地球では考えられないほど大きくてな。軽く五mくらいはあったと思う」
思い出補正だ。
「もう死んでたと思った俺はなんやかんやでそれを殴り殺してその森で生活を始めたんだ。ちなみに三年間」
「え?! つ、つまりその森から出て来たって最近?」
優斗ではなく理沙から質問してきたことにややビックリしつつも俺は首肯する。あれ? 殴り殺したには反応しないんだな。もしかして、俺にもこっち来てから何かチートが貰えたから出来たのだろうと思われてる? まあ事実なんだがな。
これで俺の話は終わりとばかりに口を閉ざす。
少したち、心の整理をつけたらしい優斗が喋る。
「えっと、それで、ステータスを少し見たいんだが…………」
「あぁ、それ俺使えないんだ。最初に使えないか試したんだけど出なかったよ。森の中で人がいないとはいえ一人で、ステータスオープン! とか叫ぶのは恥ずかしかったな」
後ろで理沙が噴き出すのが聞こえた。
何だろうか、今確実に俺は笑われたのに腹が立たない。これは同郷の者のことだからか、はたまた久しぶりの同郷の者との話し合いで気が緩んでいるのか、はたまた自分から卑下したことだからそこまで腹が立たないのか。
多分最後のやつだろうな、と思いながら俺はステータス関係の目的を果たすことにした。
「そんでさ、実はお前らに会いに来たのって話してみたいってのもあるんだけど他にも目的はあるんだ」
「ん? 何かな?」
「俺はステータスが見れないって言ったじゃん? だから俺の代わりにステータスを見てもらおうと思ってさ」
最初に会った時見れない旨を聞いていたが一応話してみる。もしかしたら同意の上なら見れるかもしれないしな。
ちなみに相手に実力を見せるという点では問題ない。決して自惚れとかじゃなくて、ただ単純に戦闘力は分からないだろうから。ステータスっていってもあれじゃん。結局は身体能力なわけでそれを扱う技術によってどれほど使えるか変わるし。人間って常時は全力の三十%くらいしか出せないって聞いたことあるし。
すると優斗は困ったように眉尻を下げ、口を開いた。
「ごめん。どうやら実力が大きく開いているようで僕たちが死神のステータスを見ることは出来ないようだ」
「ん? それってつまりとっくに俺の了承もなくステータスを見ようとしてたってこと?」
俺は優斗の言葉を聞いて揚げ足取りとばかりに突っ込む。ちなみに俺に慣れてきたのか最初のような険がとれて一人称が『僕』になっている。
俺が内心嗤いながらどう返すか楽しみに待っていると優斗は大して慌てた風もなく返す。
「あはは、ごめん。僕達のこのステータスっていう利点を活かそうと俺達は出会って最初は必ずステータスを確認することにしてるんだ」
「……ま、そうだわな。敵か味方か分からないならまず敵として認識していた方が確実だからな」
「うん、そういうこと。それで最初に使って見たところ死神のステータスが見れなかったんだ。まあそれだけで死神が僕達なんかより随分と強いと分かったんだけどね」
優斗の最もな答えに俺は少し面白くないように答える。
だがその後の情報は嬉しかった。身体能力で言えば俺のほうが優れているってことだからな。しかも小説知識だとよほど実力が離れていないと見れなかったから、多分俺はこいつらよりかなり身体能力が高いのだろう。
俺は聞きたいことが聞けて満足し、相手は何か言いたいようだけど言いにくい、みたいな雰囲気を醸し出し、俺達の間に空白が出来た。




