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二十話『暗殺』

 ボロボロの王と騎士団長ら精鋭騎士を見て顔を蒼白にする大臣たち。てかよく人を殺すのを容認してたな。そういうのって国的にいろいろまずいんでないの?

 それはさておき、現在俺は玉座に腰掛、膝にリラを乗せている状態で王達を睥睨していた。リラがペルシャ猫とかだったら完全に悪役だな。あれ? 今も悪役?

 頭に疑問符を浮かべていると大臣が沈黙に耐え切れず口を開いた。


「して、貴方は何が目的でこんなことを?」

「……ん? あぁ、目的。目的、ねぇ。…………面白そうだったから?」

「は?」

「付け足すなら力を示したかった。優越感に浸りたかった。力のみでどこまで自由に動けそうか知りたかった。あ、あと王を下僕にするためかな」

「「「なっ!?」」」


 この、なっ!? ってやつホント好きだよな。どんだけ言えば気が済むんだよ。てかもうちょいレパートリー増やそうぜ。

 それはともかく、俺の言葉に絶句する大臣ら。王と精鋭騎士たちは未だにのびている。気付けでもするか?

 と、大臣が急に眼光を鋭くし俺を睨んできた。


「貴様、この国、アレクサンドラは四つの大国の中継地点だと知っての狼藉か。そんなことすれば四国がすぐさま貴様を殺しに来るぞ」

「え? 返り討ちにすればいいだけでしょ?」


 ぶっちゃけ俺は全身タイツを着ている限り睡眠や休息を必要としないんだ。精神的な疲労は免れないが、肉体的な疲労はないし。それならたとえ万の軍勢でも勝てる気がする。てか俺が超本気で動き出したら天変地異でも起こると思うし。大地は割れ、竜巻が起こり、海が荒れる。いや海は流石に無理かも。

 ともあれいろいろ考えて出した結論は、あれ? 普通の軍勢が百万いようと勝てるんじゃね? だった。自惚れといいたければ言えばいい。そんときは死ぬだけだ。

 俺の返答に難しい顔で思案する大臣。何を考えているのか。大方俺と条約でも結ぼうと考えてるのかもな。まあ無駄だがな。


「分かった。貴方が凄まじい力の持ち主だと。では貴方の要求をお教えください」


 なんか大臣の変化が大きすぎて呆れてくる。さっきは貴様とか言っておきながら今度は貴方か。

 ちょこっとイラッとした俺は不遜な態度で答える。


「王の下僕化。王は俺の要求に最大限、最速で答え、常に俺の気を伺え。あ、ちなみに拒否権とかないよ?」

「………………はい分かりました。では代わりに何か対価をくださいませんか? そう対価を」

「は? 何言ってんの? まだお前ら俺と対等な立場だと思ってんの? てかこれは要求じゃなくて命令だから。勘違いしてんなよ」

「ッ!」


 俺の命令(・・)に従った大臣は代わりにと対価を要求してきた。

 しかしここで俺は応じてはならない。対価を支払うということは立場が対等、もしくは近いということを意味する。そんなの俺の餓鬼な部分が許さない。

 全てを従え、全てを捻じ伏せ、全てを手に入れる。餓鬼の発想そのままだが、俺はそれが出来る。相手にとっては迷惑極まりないものだけどな。

 そんなまるで何も考えていない餓鬼のようなことを言うと大臣は露骨に顔をしかめた。

 が、すぐに表情を取り繕い言葉を紡ぐ。


「分かりました。ですが国の事柄については一切関わらないでください。貴方の要求に答えるためにもそれは譲れません」

「あいよ~。それはもちろんのことだ。元々関わるつもりなんて一切なかったしな」

「ありがとうございます。では貴方の命令として、王は貴方の命令に最大限最速最善で答える、というものでよろしいでしょうか?」

「おう、それでいいぜ~。んじゃ俺はそろそろお暇しようかね」


 いろいろと大臣が確認をとったのを終わりとみて俺は玉座を立ち上がる。リラは俺がお腹に手を回して抱っこしている。俺身長伸びたかな?

 と、俺が王城を出ようとしたら。


「お待ちください。せっかくですししばらくは王城内で過ごしてみればどうでしょう? もちろん貴方にあてがうのは王室です。全てが最高級の品々で作られているのでご満足いただけるかと」

「お? いいなそれ。ナイス提案、大臣。そんじゃ王室に連れてって~」


 俺は大臣の提案に素直に頷き王室への案内を要求する。

 それに大臣がすぐさま一人の貴族に何かを吹き込んで俺の案内を任せる。ちなみに俺の耳にはばっちし聞こえていたがな。絶対機嫌を損ねるな、か。ま、普通だな。

 俺は玉座が置いてある数段高い位置から降りて案内をする貴族の後ろを歩く。ビクビクとやたらこちらを気にする貴族だが、まあ俺は気にしないでおこう。貴族の精神的にも俺が無関心の方がいいだろう。俺ってばや~さしい~! 本当に優しいならこんなことしないんだけどな。

 と、俺は謁見の間を出る前に一つ釘を刺しておくことにした。


「あ! そうだわ。一つ忠告しておくけど、襲撃者とか出さない方がいいかもしれないよ~。身内がどうなるか分からないからね~」


 遠まわしに俺を暗殺しようものなら身内を殺す、と言っている俺の言葉。既にそれに反応する元気すらやつらには残っていないようだった。

 かくして俺の王とのO☆HA☆NA☆SIは幕を閉じた。

 






 死神が去った謁見の間では怒号の応酬が始まっていた。

 皆が皆、やれ誰々の責任だ、やれ誰々が悪いんだ、やれあれをどうするだ、と全くまとまりなど見せない。


「静まれ!」


 その中で死神と言葉を交わしていた大臣が大声を張り上げた。これに貴族どもは一旦罵りあいを止め、大臣へと視線を送る。

 大臣は全ての視線がこちらを向いたと感じ、話し始めた。


「まず全ての責任は私のものだ。だから不毛な罵りあいは止めろ」


 大臣の言葉に貴族共は激昂し、また汚い言葉を吐こうとする。

 が、それは続く大臣の言葉に遮られた。


「今はそんな不毛なことをしている場合ではない。どうやってあの災害をやり過ごすか、もしくは止めるか、だ」


 大臣の言葉に貴族は息を呑む。


「最後の私の提案。あれは死神を監視する狙いもある。まあこの程度はわかるだろう。分からない者は一旦頭を冷やせ」


 大臣の言葉に今度は深呼吸をする貴族共。

 少しだけ間が空き、大臣は喋りだす。


「死神はかなりの強者だ。王直轄の暗部の気配すら察知し撃退して見せた」


 そう言って大臣はある一点を指差す。

 そこは死神が壁から抉り取った石材で空けた穴があった。

 それを見て貴族共は顔面を蒼白にする。


「だが暗殺が出来ないと決まったわけではない。あれは人間かどうか怪しいが、とりあえず人型だ。しかも頭が弱いと見える。全てを力で解決しようとするそこいらの餓鬼大将がそのまま大きくなったような存在だ」


 大臣のまさに的を得た発言に貴族共はうんうんと頷く。


「そこを狙う。もはや欲望に忠実な獣と変わらないあいつを殺す」


 殺す。その言葉に貴族共は不安を顔に出す。

 大臣は案を出す。


「一つは罠だ。人間ならばいくら強かろうと弱点はいくらでもある。例えば水攻めなどだな。他には…………女だ。女の暗殺者を送り込む。人間で、しかも男なら行為の最中ほど無防備な姿はない。そこを殺ってもらう。それとその暗殺者は暗殺ギルドから呼ぶ」

「あ、あの?!」


 大臣の言葉に一人の貴族が驚きを口にする。

 暗殺ギルド。それは名前の通り暗殺を生業とするものたちの働く場所。

 普段は酒場として経営しているが、合言葉や鍵となる行動をすると別室に連れて行かれ、対象や報酬などの話し合いをする。そのとき暗殺者とは対面せず、酒場のマスターとの対話だ。

 そんなところに大臣は暗殺を頼もうというのだ。

 大臣は口を開く。


「もちろん依頼は私が行く。責任を持って、な」

「しかしあいつの最後の言葉。もし失敗したらどうするんだ?」


 大臣の暗殺案に不安ごとを投げかける貴族。

 死神の最後の言葉。襲撃してくると身内が危ないよ~、というもの。

 それに大臣はこう答えた。


「それに関しては大丈夫だろう。私は暗殺ギルドで最高位の女暗殺者、『ギルティ』に頼むつもりだからな」


 大臣の口にした名前に貴族共は揃って驚きと恐怖をない交ぜにした表情を浮かべる。

 大臣は決意したような顔で王を一瞥し呟く。


「たとえ政治が傾こうともあいつは殺さねばならない……」


 その死神は今リラをもふもふしていたそうな。










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