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十四話『食事の邪魔はするな!』

 翌日。朝日が昇りきったくらいの時間に俺は目が覚めた。随分と熟睡してたんだな。

 太陽の位置的に時間は多分八時とかそんなもんだろう。この世界だと既にみんな起きて働いてるな。てか俺の睡眠時間が半端ないことになってる。半日以上か……俺熟睡のしすぎで敵意とかに気付かなかったなんてないよな?

 そんなことを考えながら視線をめぐらすと相変わらず俺の胸元で寝ていたリラと目があった。


「えへへっ」


 リラは目が合ったことを喜ぶように微笑むと俺の胸板に顔を寄せてうずめる。

 俺はそれにほっこりしながらリラの頭を撫でる。

 しかしそう長く寝ているわけにもいかない。ぶっちゃけ外に置いて来た荷物が心配だ。まあ取られても別に困らないのだがなんかムカつくじゃん?

 俺はしがみついてくるリラの手を優しく外してやり立ち上がった。


「んっ! ん~」


 軽く伸びをして体をほぐす。こんなに柔らかいところで寝たのなんて何年ぶりだろう。常に木の上やら土の上で寝ていたからなぁ。全身タイツが出来てからは俺が動かそうとしない限りただの金属と同じ様に硬いタイツは体をガチガチにしてたしなぁ。

 そして今は体が軽い! 本当に驚くほど軽い。今なら音速すら越えれそう。空気の壁は…………今の俺の頑丈さならいけるだろ。

 なんてアホに見えて割と切実なことを考えているとリラも起き上がって来た。

 軽く髪型や服装をチェックすると小さく、よし、と言っていた。微笑ましい。

 基本そんなもの気にしない俺はリラが終わるのを待ち、歩みを進めた。まだ朝食の時間には間に合うだろう。

 後ろからトテテ~っと駆け寄ってくるのを知覚しながら俺は食堂へと向かった。


 朝食にはなんとか間に合い、たらふく食った。リラも子供らしくばくばく食べていた。本当に十七歳か? 多分盛ってたんだろうなぁ。

 そんなことを考えながら美味しそうに食べるリラを見ていると、


「少しよろしいでしょうか?」

「んぁ? あぁ、なんか用か?」

「死神様にお客様がいらっしゃっているのですが…………」


 来客の言葉を聞いた。

 俺はチラとリラを見て答える。


「あー、今は食事中だ。後にするか待っててもらって」

「いえ、そうしようにも相手が…………」


 俺が答えると店員は言いにくそうに言葉を濁す。なんだ? もう昨日のことで誰か来たのか?

 少し行動の早さに苦笑しながら俺は冗談で言ってやる。


「何? 王族? それでも関係ない。人の食事は邪魔しないもんだ」


 王族と大きく言うことで誰でも受け付けないと言うわけだ。それに食事は本当に邪魔するもんじゃない。あの森で虎と戦ってる内に他の食事中の虎を巻き込んだことがあんだよ。そんときの虎の怒り様と言ったらまあ手に負えなかった。しかも執念深いのか相棒の効果範囲外を一週間くらいはグルグルと見張っていた。危うく俺が餓死するとこだった。

 そんな経緯もあり食事を邪魔するのは馬鹿のやることだと俺の中では決まっていた。

 店員は俺の言葉にオロオロとするのみでどうしようか判断に迷っているようだった。まあ俺が王族に待てと言ってもそれを伝えるのは店員だからな。そりゃ困るわな。

 俺は苦笑しながら紙とペンを所望する。


「そんじゃ紙とペン貸して。俺が手紙を書くからそれを渡して来て」

「は、はい!」


 店員は困難から解放されたように晴れ晴れとした表情で紙とペンを持ってくる。

 俺はそこにサラサラ~っと日本語で内容を書く。

 つまるところ、『食事を邪魔することは愚の骨頂。俺の逆鱗に触れたくないのであれば出直してくるか食い終わるまで待て』と。

 我ながら、イラつく文章だわ~、と感心する。あ、もちろんわざとね。面白そうだし、相手の性格とか分かるし。てか本当に王族が来てんのかよ。ここはただの町だろ。なんで居んだよ。あれか? 左遷でもされたか? 王族が左遷……ぷぷぷ~、だっせぇ。


「はいよろしくね~」

「かしこまりました」


 俺は内心で嘲笑しながら店員に紙を渡した。

 そそくさとこの場を後にする店員を見やって俺は口元を歪める。

 さてと、どんな反応が来るのかな?


 数十秒後。誰かの怒鳴り声が宿屋中に響き渡った。器量の狭いやっちゃなぁ。せめて無言で紙を細切れにして踏みつけて燃やす程度にしとけよ。

 と、思っているとその怒鳴り声はこちらへ近づいてきた。お~お~、手紙を書いた本人にまで文句を言いに来たのか。それにしても内容は読んでなかったのかな? それとも読めなかったのか? 文字翻訳の機能は俺だけ? でも怒鳴ったことから多分怒りに任せてこっちにきているのだろう。

 と、冷静に分析していると食堂の扉がバンッ! と大きな音を立てて開いた。ちなみに時間は結構遅いほうなので俺たちしかいない。値段が普通の宿なので食堂もそれなりのものだ。


「どういうことですの?!」

「うわぁ、高飛車お嬢様かよぉ……」


 扉を派手に開け放ったのは派手なドレスを纏った、これまた派手なドリルロールを揺らす金髪の見るからにお嬢様お嬢様したお嬢様だった。

 俺はとりあえずそれを無視して食べる手の止まったリラを見る。


「どうした? もうお腹いっぱいか?」

「え? いや、あの人……」

「食事はな、邪魔するものじゃないんだ。特に弱者は強者の食事を邪魔するなんてことはあっちゃならない」

「そうなんだ~。ご主人さまが言うならそうなんだね! でもリラもうお腹いっぱい!」

「そうかそうか、よしよし~」

「えへへ~」

「私を無視しないでくださいませんこと?!」


 俺が、プフ~、と可愛らしく息を吐くリラの頭を撫でているとお嬢様(てか王女様?)が癇癪を起こした。どうでもいいけど言葉遣いおかしくないか? お嬢様の言葉遣いとか知らんけど。

 俺がため息をついてお嬢様に振り向くといかにも怒ってますといった雰囲気でお嬢様は怒鳴り散らす。


「平民風情が私を無視するなんていい度胸ね! 私が誰だか分かってるの? 第四王女よ! 王女なのよ!」

「へいへい。そんでその王女様が平民風情の俺になんのようですかね?」


 俺の返答が御気に召したのか王女は、ふふん! と得意げに鼻を鳴らす。

 そして王女は尊大な態度で喋り始める。


「泣いて喜びなさい! 父様が御呼びよ! すぐに王都へ言って父様に会ってきなさい!」

「お断りします」

「なっ!?」

「用件がそれだけなら俺らは行くから。ほら、リラ行くぞ~」

「お腹いっぱいで動けない~……」

「ったくしょうがねぇな」

「やた~!」


 王女の要求(てか命令)に即答で断って俺はリラを抱っこして食堂を出ようと歩を進める。

 しかし扉には王女がいるわけで、必然的に何か言われるわけで……


「あ、あんた自分が何を言ってるのか分かってるの?!」

「ん? 分かってるよ? 国のトップの命令を蹴った。それだけだろ?」


 やばい、力を手に入れたからって調子に乗りすぎてる。日本で例えると赤紙が来てもそれを破り捨てるようなもんだよ! まあ気分がいいからいいけどな!

 俺は絶句する王女の脇をスルリと抜けて食堂を出る。

 後ろからすがりつくように、ちょっまちっ聞きなさいよ! とか聞こえてきたが無視だ無視。

 そして俺は宿の外へと出たのだった。









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