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十三話『修行の成果』

 宿屋にて。


「こ、これがマジでヒヒイロカネ硬貨もの価値があんのか?」

「そうらしいぜ! ギルドで聞いたから間違いねぇ!」

「お兄さんたちぃ、ちょぉっとお話いいかなぁ?」


 案の定SPたちが俺の牙やら爪を持っていたから話に混ぜてもらう。

 SPたちは突然の声に驚き、慌ててこちらを向く。


「なんだてめ……ヒィッ!」

「ウヒャァア! すいません返します許してくださいごめんなさいすいません!」


 なんか言おうとしていたが、俺の姿を見て猛烈に謝りだした。

 でも盗みをしといてなんのお咎めもなしってのもの、なぁ?

 俺はリラに耳を塞いでおくように言って、塞いだのを確認した後SPたちに向かって言ってやった。


「は? これで許したらお前らまたやるかもしれないだろ? それに俺がどういう仕打ちを与えるかお前らが広めてくれたらもう盗もうなんて考えるやつはいなくなるかもしれないじゃん。だからとりあえずその手癖の悪い腕を使い物にならないようにするか。よっ、と」

「「ギャァァァァアアアアアア!!!!!!」」


 俺がSPたちの腕を指の先から徐々に『握りつぶしていく』と途中で気絶してしまった。

 しかし俺が続けると今度は痛みで意識が覚醒する。そして叫ぶ、気絶する、覚醒。

 両腕とも行こうと思ったが流石にそれは俺の良心が咎めたから止めておいた。悲鳴もリラに届いてるっぽくてビクビクしてたしな。

 俺は痛みで半分意識のないSPたちに向かって言う。


「これにまいったらもう二度と窃盗なんてすんじゃねぇぞ。後俺の荷物に手を出すようなやつはもっと酷いことをしてやるって宣伝しとけ。んじゃな~」


 俺はリラの頭をポンポンと叩いて、もういいぞ、とジェスチャーするとリラを抱きかかえて宿を後にした。やっぱ下が空洞だといちいち脚が抜けて不便だなぁ、と考えながら。











 時は夕暮れ。

 俺とドラゴンが遊んだのは左右に広がるこの町のほぼ中央だったので交通が滞っていてなんかいろいろまずいらしい。まあ町が半壊よりかはいいだろ。

 俺たちはそこでも右側の通りへと来ていた。 

 俺の右にはリラが手をつないでニコニコとしている。なんかもう奴隷って言うか妹とか娘のような感じだな。そこまで愛情ないけど。

 土地の高い方へ行き、俺らは今日の宿を探す。今日は俺も宿で休むつもりだ。全身タイツは脱いで道端にでも置いておく。どうせ普通の人に持っていけるわけないんだから。あ、もう既に服は新調している。前と同じで執事スタイルだ。


「ねぇねぇご主人さま、どこ行くの?」

「宿だな。今日はもう休むぞ~」


 リラは俺の言葉に、は~い、と手をつないでいる方とは反対の手を上げて返事をする。

 と、ようやく宿を見つけた。


「そんじゃ入るか~」

「うん!」

「っとその前に」


 俺は宿の傍の裏路地に入る。

 そこで俺は執事服を一旦脱ぎ、全身タイツを脱ぐ。

 おぉ、久しぶりの外気だ。まるで俺の体はそんなことを言っている気がする。

 ともあれここを誰かに見つかると即通報なのですぐさま着替える。服を買ったときに今日は全身タイツを脱ぐ予定だったので下着も買ってある。

 俺はササッと着替え終えると二周りほど小さくなった全身タイツを壁に寄りかから…………せると壊しそうだったから端っこに置いといた。大玉サイズのリュックもここに置いておく。ただし、蓋として全身タイツを置くことにした。なんか潰れる気がしたけど、大丈夫だろ。

 そしてなんとなく開放感を感じながら後ろを向くとリラがポ~っとどこか上の空のような感じで俺を見つめていた。しかもその顔はほんのり赤く染まっている。


「おい、リラ? 行くぞ?」

「ご主人さまのはだか……ハッ! うん!」


 なんかませた子供だなぁ、と思いながら俺は歩き始める。

 と、一歩を進んだときだった。


「あれ?」


 一瞬で反対側の裏路地に入ってしまった。後ろを振り返れば二つか三つ向こう側の裏路地に小さな獣人が見える。

 これは…………あれか。修行の成果が出ちゃったか…………

 なんてボケながら俺はもっと優しく地面を蹴るように調節してリラの元まで行く。


「ごめんね。鎧を脱いだから力加減間違えたわ」

「ひっぐ……わ、わた、私、ご主人さまに、捨てられた、かと、思っ、て……」


 いろいろ調整しながら戻るとリラが泣いていた。どんだけ俺に依存してるんだよ……悪い気はせんがな。これで奴隷としていやいやじゃなくて心から俺に尽くすだろうし。

 俺は謝りながらリラを抱っこしてあやす。ちなみにこのときは歩くときよりも全力で拳を繰り出すときよりも神経を尖らせた。誤って潰すとか洒落にならん。


「うっぐ……え、えへへ~……」

「よしよし、ごめんな~、もう離れないぞ~」


 俺は適当に喋りながらゆっくりと宿へ向けて歩き出した。


 宿に入り、もろもろの手続きを終えた俺は風呂に入る。値段も高かったしまあ当然だな。

 リラは現在俺と一緒に風呂に入っている。どうしても離れたくないというから仕方なく了承した。

 風呂は結構現代に近くて、大理石のように磨かれた石に魔石というものを使ってお湯を満たすらしい。店員さんがやってくれた。


「ふぅ…………」

「はふぅ……」


 互いに体を洗い、二人で一緒に風呂に入る。脚を伸ばして座った俺の上にリラが乗る感じだ。小柄なリラは俺の上にすっぽりと収まった。

 それにしても風呂なんて久しぶりだな。全身タイツを着てれば汚れなんて皆無だったからタオルで拭きもしなかった。実際さっき体を洗ったが、垢など全く出てこなかった。逆に洗うのが怖くなったくらいだ。

 リラはいろいろと疲れたのか、風呂に入りリラックスするとこっくりこっくりと船をこぎ始めた。

 俺は苦笑してリラの頭を撫でながら少し厳し目の声で言う。


「リラ、寝るのは部屋に戻ってからな。なんならもう出てもいいぞ? あんま長く浸かるとのぼせるからな」

「ふみゅぅ……ねもい……」

「ハハハ、もう出るか」


 実は久しぶりの風呂で俺ものぼせそうだったので一緒に風呂を出ることにした。

 リラは半分寝ぼけながらもちゃんと体を拭いて服をきた。ちなみに服屋で買った新しい服だ。フリルをあしらったなんかワンピースの短いバージョンみたいなやつ(チュニック?)に短パンだ。上が白で下が淡い水色だ。服のセンスとか俺にはわからん。

 そして俺たちは二人で自分たちの部屋へと行き、ベッドへと入った。

 俺も結構濃密な二日間で疲れているのか以外に早く眠りが訪れた。

 意識も落ち始め、うとうとしているとベッドに何かが入ってきた。

 見なくても分かる。リラだ。あの森でのサバイバルで夜襲などには対応できるようになっている。

 俺の胸元に頭をくっつけてスースーと寝息を立てるリラにほっこりしながら俺も眠りについた。











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