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十二話『幼児退行』

 しばしドラゴンとの遊びの余韻を楽しんでいたそのときだった。


「動くな!」


 俺の周りをこの町の衛兵と思わしき人らと、冒険者と思わしき人らが囲んでいた。

 俺は余韻を邪魔されたことに、ハァ、とため息をつき、こいつらを見渡す。

 瓦礫の山の外側に総勢千は越えようかという軍隊が控えていた。

 ドラゴンを倒した俺がそんなに怖いかね? …………怖いね。


「まあまあ、そんなに怖がらなさんな。ほれ、ギルドカード」


 そう言って俺は声をかけてきた衛兵にギルドカードを手渡し(・・・)で渡す。


「ヒィッ!」


 いきなり現れた俺に悲鳴を上げる衛兵。一応俺はすぐに元の位置に戻ったんだけどな。

 衛兵は発狂しそうな顔で、それでも理性を保ちギルドカードを確認する。


「な、名前はし、『死神』……冒険者ランク……『F』だと?! お前! これは殺したやつから盗んだやつだろ!」

「ちげぇって! ここのギルドで最近登録した者だよ! 確認してみろや!」


 確かにFランクであれを倒すっておかしいもんな。でもそれでいきなり殺人と窃盗の罪を着せるってどうよ?

 俺がどうしようか悩んでいるとギルド長が出てきた。


「それは本当じゃよ」

「ギルド長! 本当に、本当なのですか?」


 衛兵の二度の確認にもギルド長は、うむ、と重々しく頷いた。

 それで一応信用したのか衛兵たちは武器を降ろす。

 そして俺に詰問を開始する。


「……まずその格好はなんだ?」

「へ?」


 言われてみて気付く。

 俺はあの青白い全身タイツの状態に戻っていた! 股間がもっこりしてて恥ずかしい……

 多分あの火の玉を蹴り裂いたときに燃えてなくなったのだろう。次は頑丈な服を選ばねば。


「あ~、この上に着てるのが燃えちゃってね~」

「それが貴様、死神の体なのか?」

「ないないないない! どういう思考回路してたらそうなるの?! これは俺の防具だよ。あのドラゴンの一撃を食らっても傷一つつかない」


 俺の防具宣言に失笑が広がるが、その次の俺の言葉に沈黙が訪れる。

 嘘だと思う。しかしドラゴンを倒すほどの実力者だ。本当かもしれない。

 衛兵が意を決して問うてきた。


「本当か確かめてもよいか?」

「ん~、いいよ~」


 そういうと衛兵は剣を抜き去って近寄ってきた。

 ちょうどいい機会だ。斬撃にも強いか確かめてみよう。森では斬撃というよりは叩き斬る感じのが多かったからな。技術を身につけた人間の剣で切れるかどうか。

 衛兵が俺の前二mほどで立ち止まる。

 そして剣を構えて集中する。

 俺は腕を横に出して、ここにお願い、と目で訴える。

 衛兵はコクッと頷いた。


「いつでもどうぞ~」

「…………では、参る!」


 そう言って衛兵は駆けた。ドラゴンの突進や尻尾のスピードに比べたらハエが止まりそうな速度だけど一般的には速いのだろう。

 その衛兵は俺の腕を斬る…………と見せかけて俺の首を狙ってくる。


「はぁ」


 俺はそうため息をついて、首に出していない方の掌を挟む。攻撃の瞬間激しい殺気が出ていたから分かってたよ。

 そして金属同士が激しくぶつかり合うときになる甲高い音があたりに響き渡る。

 衛兵は憤怒の表情で至近距離で俺を睨む。


「俺の家族はお前の戦いに巻き込まれた」

「………………ん~、なんかごめんね」


 どういうことだ、と思っていたら衛兵が自分から言った。

 マジか~、と思いつつとりあえず謝ろうと思い、謝る。

 しかし火に油を注いでしまったのか衛兵は叫びながらもっと激しい斬撃を放ってくる。


「ん~、鬱陶しいからごめんね~」


 俺はそれを全て掌ではたいているうちに面倒になり剣を根元から折った。

 それに気付くと衛兵は今度は殴りかかってくる。

 血が出て皮が裂けても殴り続ける。

 だんだんイライラしてきた俺は拳を握る。確かに俺は遊んでたさ。でもさ、お前らが戦っても勝てなかった、もしくは被害がもっと広がってただろ?

 俺は冷静な部分でちゃんと手加減をして衛兵の腹を殴る。


「カハッ!」


 衛兵は痛みのあまり痙攣して、気を失った。

 俺はなんだかイライラが納まらず周りのやつらに当り散らすことにした。


「なあ、お前ら分かってんの? 俺がやらなくてお前らが戦っていたら勝てなかった、もしくはもっと被害が広がってたかもしれないんだぞ? それにあのドラゴンに傷をつけるなら単純に今の衛兵じゃ五倍くらいは力がないとダメだ。なのに俺はこんな扱いか? 俺は短期だ。餓鬼だ。癇癪起こすのは早いぜ?」

「「「……………………」」」


 俺の言葉に全員が言葉を発せずにいる。ぶっちゃけ屁理屈というか暴論なんだけどな。ドラゴン相手にもっと俺が足止めして住民の避難とかしてればもっと助かった命は多かっただろうし、極論被害なんて出なかったかもしれない。

 しかしイライラしている俺はとどめの一撃をお見舞いする。


「俺は別に人間に敵対するつもりなんてサラサラない。だけどお前らがちょっかいかけてくるってんなら…………殺すよ?」


 俺の言葉に周りの千人ほどの人は戦慄した。俺の人間という種を相手にする、という言葉が本気だと考えて。

 俺はすぐさま剣呑な雰囲気を霧散させてニヤ~と笑う。


「ま、これからも仲良くやっていこうや。そんじゃな~。あ、ギルド長~。これらの弁償代としてあの牙一本プレゼントするわ! だからネコババすんなよ~!」

「あ、ああ! 分かったわい!」


 俺はギルド長の返事を聞くとそのまま人々を超えて跳躍し、リラが待っているだろうところまで行った。

 俺とドラゴンが遊んだ場所以外は本当に何の被害もなくせいぜい都市の機能が一時停止したくらいだった。……ん? まずいかな? ま、関係ねぇや。

 リュックの元までたどり着くと、リラは俺の言いつけ通りリュックの影に隠れていたようで怪我はない様だった。


「リラ~。死神さんが帰ってきましたよ~」

「ご、ご主人様ぁ!」


 俺がとぼけた風にただいまを言うとリラが半泣きの状態で俺の腰に抱きついてきた。

 困惑するも俺はとりあえずそのままにしてやる。


「ご主人さまぁ、ごしゅじんさまぁ、ごしゅじんさまぁぁぁ……」


 だんだんと幼児退行していくリラ。え? あ? コレハ、ドウイウコト?

 激しく混乱し、両手をワタフタと動かす俺。リラはそんな俺にかまわず、ご主人さま、を連呼しながら俺の胸のしたあたりに頬ずりをする。

 俺はとうとう我慢できずに俺のお腹のちょっと上に擦り擦りするリラをはがす。てかこれ金属(以上に硬い木)だぞ。痛いだろ。

 俺はリラと視線を合わせ真剣な表情と声音で聞く。


「おい、リラ。どうしたんだ?」

「あのね、あのね、大きな男の人たちがこれをね、持って行こうとしてね、持てないから中身をいくつか持っていったの。怖い人たちばかりで怖かったぁ……!」

「…………そうか、どんな人たちだったかわかるか?」


 なんか、もう、あれだな。リラの中で多分主人に嫌われないように、使えないと思われないようにと気張ってた部分が今回の騒動でタガが外れちゃったってとこかな? それでも俺に懐く理由が……あ、俺が唯一頼れるところだからか。それに幼児退行が重なって……吊り橋効果よりも全然効果たけぇ……

 俺はまた抱きついてきたリラを撫でてあやしながら火事場泥棒の特徴を聞く。まさかと思うが、な。

 リラはグスッと鼻をすすりながら特徴を話し出す。


「ご主人さまの手、大きい…………えっとね! 真っ黒な服を着てて、真っ黒な眼鏡をかけてて、ん~……あ! ツルツルだった!」

「そうかそうか、リラは言われたことをちゃんと出来て偉いな~」

「えへへ~」


 リラはもう既に泣き止み、笑みを浮かべていた。ずっと撫でていたかいがあったのかな?

 俺はリラをゆっくり剥がすとたち上がった。リラが少し未練がましく腕に抱きついていたがそれもはがす。泣きそうな顔をされて少し弱ったが頭を撫でることで誤魔化した。

 それにしても全身真っ黒でツルツルって…………宿のところのSPかよ。予想とは違ったがまあいいだろう。

 俺は宿のある方向を向いて口を開く。


「それじゃ、俺はその人たちから荷物を取り返しにいかないといけないから」

「え?! ご主人さま行っちゃうの?! やだ! 行かないで!」


 リラはよほど怖い目にあったのか俺の脚に腰に抱きついて離さない。もしかしたらリラは奴隷狩りとかに会ってそのとき狩っていたやつらがSPにダブったのかもな。

 てかその前に普通ドラゴンを見てその咆哮を受けたら怖くて我も忘れるか。実際この大通りあちこちからアンモニア臭がするし。俺のリュックは無事だよな?

 俺は腰に抱きつくリラに厳しい口調で諭す。


「リラ。俺は言うこと聞かない子は嫌いだぞ?」

「っ!? それはもっとヤダ!」


 そういってリラは、どうしよう、とオロオロし始める。

 俺は、はぁ、とため息をついてリラを剥がしリュックから一枚の毛皮を取り出した後、リュックを背負う。リラはもう爆発直前の爆弾のごとく目に涙を浮かべている。

 俺は大玉サイズのリュックを背負ったまま今にも泣きそうなリラを抱っこする。


「ふぇ?!」

「しっかり捕まってろよ」


 俺はそう言ってリラの上から取り出した毛皮を被せる。一応こいつもなかなかの防御力を誇るやつの毛皮だ。これでリラを抵抗やらなんやらから守る。直接よりはマシだろう。

 リラはすっかり泣き止み、俺の肩に顎を乗せて耳元で幸せそうに小さく笑う。くそう! 可愛いなぁ!

 俺はリュックよりもリラに注意を払いながらあの宿へ向かって走り出した。







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