2 町の一角
結論から言うと、あっさりと抜け出せました。
お昼ご飯を食べて部屋に戻ると、侍女が茶を淹れてさっさと退散していく。三十分ほど休憩を挟んで午後のお勉強の時間になる。この、三十分休憩が勝負だと思っていた。
わたしは侍女の足音が完全に消えるまで待って、ようやくソファーから腰を上げる。水差しの水で化粧を落として質素な素顔になると、保湿クリームを塗りたくってから地味ワンピに着替えた。白いエプロンをつけて、髪の毛も簡単にくくってしまえば立派な侍女のいでたちである。
もともと持ってきていた財布や携帯、化粧ポーチなどの荷物はすでに手提げにまとめてあったのでそれを抱え、侍女が持ち歩いていても不審じゃないようにシーツでくるんでしまう。
テーブルのティーセットの横に、お世話になりましたと書き添えたメモを残し、わたしはこの豪奢な部屋とお別れをした。
「それでは、失礼いたします」
無人に部屋に、深々と頭を下げて後ろ手で扉の開閉をする。中にいるはずの側室第四号様に退出の挨拶をした設定である。ひとり芝居は滑稽だけれど、侍女が側室の部屋から出てくるのだから見られてもいいようにしなければ。
廊下をしずしずと歩きながら通用門をうかがうと、やっぱり想定したとおり彼女持ちの彼がそわそわと門の前に立っていた。よしよし、順調である。
廊下では侍女たちとしかすれ違わなかったので、彼女たちのしきたりどおり、目線は下のまま軽く会釈しあって歩く。まったく不審がられなかった。城というだけあって、侍女の数も多い。お互い知らない顔もいるんだろう。
裏口から出て、門番をうかがう。ずっと立ち止まっているのもあやしいし、誰かが来ないとも限らないからツツジっぽい低木の茂みに身を隠して十分と少し。男女の声が交わされるのを合図に顔を上げると、よし来た、空白の五分!
門から少し離れた木陰で見つめ合っているそのタイミングを逃すことなく、わたしは自然を装ってすたすたと門をくぐってしまう。目の前には町につながる石畳の小道。あっさり。拍子抜けするほどあっさりと城を出てしまった。
エプロンを外して、丸めたシーツと一緒に手提げにつめる。すると今度はちょっと上品な町娘になる、はず。
城下町はにぎわっている。まだ距離があるのに、遠目に見えるそこから活気が伝わってくるような気がした。
さて、これで自由の身になったわけだけれど、どうしましょう。ひとまず必要なのはお金か。
お城からはそれほど高価ではないけど、お金になりそうなピアスと指輪をふたつずつ失敬している。カーミャリーコに贈られたものだから好きにしていいだろう。ただ、あんまりにも価値のありそうなものは、町娘が持っているとあやしいから避けた。あの大きなエメラルドのネックレスとか、重たすぎて手を動かすのも億劫になる指輪なんかを持っていたら、明らかに盗んだように見られる。そんなことで足がつくのはいやだ。
あとは先輩の結婚式で身に着けていたものだったら売ってもいいかもしれない。わたしはブランドものなんて集める趣味はなかったから、その辺の雑貨屋で買った千円前後の代物だし名残惜しくなるものでもない。そりゃあ、おじいちゃんのシルバーリングを売るってなったらめちゃくちゃためらうし、そもそも売る気ないけど。
どっちみち質屋みたいなところか、道具屋か、衣装屋か、そういうところに行かないといけないわけで。誰かに訊くか、それっぽい店に行ってみるか、結構勇気いるなあ。
てくてく歩いていくとだんだんと家の数が増えていく。立派な趣きのある建物の前にも門番たちが無言で立っているから、たぶん貴族たちの邸なんだろう。何台かの馬車もとおり過ぎていった。
そこも通り抜けてもっと歩くと、ようやく活気を肌で感じた。民家やいろんな店が軒を連ねているのになんだか無性にホッとしてしまう。こういう空気の方が性に合うんだなあきっと。
まっすぐ伸びた通りは百メートルくらいありそうで、その先には石造りの噴水のある大きな広場になっていた。花祭りの会場でもある、あの広場である。
あのときは、まったくと言っていいほど周りを見る余裕なんてなかった。あらためてぐるりと眺めると、木々の緑に落ち着いた石の色、駆けっこしている子供たち……と居心地のよさそうな雰囲気だ。こんなところでランチとかしたら気持ちよさそう。
ベンチの前にしゃがみこんでチョークで絵を描いている子供を見つけ、ああ、子供に訊けばいいのかとわたしは手っ取り早そうな方法を思いついた。町の子供なら店にも詳しいはずだし、道を尋ねられてもそれほど不審に思わないだろう。
「ねえ、ちょっと教えてもらえるとうれしいんだけど」
背をかがめて声をかけると、きょとんとした瞳が向けられる。あら、かわいい。家の絵を石畳に描いているのに自然と笑みが浮かぶ。
「この町で宝石とか指輪とか、そういうのを売っているお店って、どこにあるか知ってるかなあ?」
ワンピースの裾をさっと手で折ってしゃがみこむと、その子は目を真ん丸にして、それでもうなずいてくれた。
「しってるよ。あそこのとおりを入ったところに、指輪の絵のかんばんがかかってんの」
「そっか。じゃあ行ってみるね。どうもありがとう」
礼を言って手を振ると、白く汚れた手を振り返してくれた。うわあ、すごい癒された。ここのところのあれこれで、たぶんわたしも相当ストレスたまってたんだろうなあ。子供の笑顔は偉大である。
指さされた通りに向かって広場を横切り、看板を目印に進んでいく。民家にまぎれていくつかの看板もあるから、指輪の絵を見逃さないように目を凝らした。
うまく交渉ができるだろうか。値切るなんてことをしたこともなければ、ブランドものを好んでもいなかったために質屋でやりとりしたこともない。けれども、あとには引けないのだ。絶対に、手に職をつけて、充実した毎日を送ってやるんだ。
そんなときである。景気よく水をかけられたのは。
ばしゃあああ、と耳に涼しい音とともに、腰から下に冷たい衝撃が打ち付けられた。べったりとスカートが足に絡みつく。濃い灰色に変わった生地は、太ももからふくらはぎのシルエットをくっきりと形づけた。
「は?」
「悪ぃ悪ぃ。ちょーっとかかっちまったか」
ぼりぼりと頭を掻きながら、男ののんびりとした声がしてわたしは「は?」のまま固まった顔を上げる。
ぼさぼさの癖毛を適当にひっつめた男が、桶を片手に立っていた。どう考えても、この人が思い切り水をぶちまけた先にわたしが立っていたことになる。
「……ちょっとどころじゃないんですけど」
「んー、まあ、たしかに。むちっとした足が拝めて俺は運がいい」
「は?」
聞き間違いか? 今、ものすごくストレートにセクハラ発言された気がするんだけど。てか、むちっとしたなんて言われるとカチンときますが。そりゃあ、モデルさんのような美脚には程遠いのは百も承知だよ!
「まあ、俺の不注意だったからな。お嬢ちゃん、とりあえずその服なんとかしねーと歩けねえから、ちょっとこっち来いよ」
手招きした男は薄汚れた格好をしていた。ズボンもシャツも黒い汚れがついていて、ベルトには汚れたタオルがぶら下がっている。目つきも悪いからものすごくガラが悪く見えて、自然とわたしの足は地面に縫いつけられた。
男は言いながら斜め後ろの店を示す。金槌のマークが彫られた看板。――つまり、鍛冶屋。
男の小汚い格好は煤の汚れだとわかったが、そんなことよりも平然とセクハラ発言してくる男についていっていいものか。しかもチンピラ風であやしい。普通ならついていかないし、わたしも正直ついていきたくない。
それなのに、そんなためらいもお見通しなのか、着替えねーと困るのあんただろ、なんて声と一緒に手招きされて渋々と従うことにした。
火の入った窯の前に、金槌などの道具と鋼の板と、水の入った桶。煤けた椅子やテーブルなんかもあるし、剣や盾なんかのファンタジー用品も置かれている。映画のセットみたいだ。
ものめずらしくて眺めてしまっていたら、苦笑を含んだ男が奥の部屋から呼ぶ。
「着替えっつっても、俺のしかねーからこんなんだけど。まあ、一日二日なら凌げるだろ」
「はあ、ありがとうございます」
洗いざらしの綿のシャツ、そして裾の擦り切れてるズボン。皮のベルト。
さっき町を歩いていたときの様子だと、女の人は基本的にワンピースを着ていたが、仕事によってはこういう格好をしていてもおかしくないようだった。差し出された服を両手で受け取って礼を言うと、男はわずかに目を見開く。
「……警戒心が、あるんだかないんだか。まあいいや」
呆れた顔で男は部屋を出ると、ぼりぼりと頭を掻きながら後ろ手で扉が閉められた。
警戒はしているつもりだけど、今このまとわりついたスカートのまま外を歩くことも変な事態を招きそうで、どっちもどっちなんじゃないかと思う。金目のものは持ち出した宝石類しかないが、それを狙っているのだろうか。それともやっぱり女の体か?
なんにしてもさっさと体制を整えないといけないから、手早くワンピースのボタンを外して袖から腕を抜いた。
「おい、タオル使うんなら――」
よいしょと布から足を剥がしたとき、予期せず扉が開いて、三秒ほどの間が生まれる。
着替え途中のわたし。
白いタオルを持って戸を開けた男。
男は言葉を失ったような気配だったけれど、それも一瞬のことだった。まじまじと素肌をさらしたわたしを眺める。そしてある一か所で目を止めた。右の胸の、ほくろ。
「……ふーん、ガキかと思ったけどずいぶん色っぺえ胸じゃん」
「出てけえええっ!」
バゴォン! 半開きだった扉を男ごと力任せに閉めると、相手はしたたかに頭を壁にぶつけたようである。痛ってえええ! と哀れっぽい悲鳴が聞こえたが無視無視。当然の報いだ。着替えろって言ったそばからドア開けてんじゃねえよエロ親父!
思いつく限り胸の内で罵って、わたしは蹴とばすようにワンピースを脱ぎ落すとさっさと着替えをすますことだけに集中した。
「悪かったって。ノックなんて普段しねーからさー」
怒りがおさまらないわたしは、それでもいつまでも他人の部屋にこもっているわけにもいかず、むかむかしたまま扉を開けた。後頭部をさすって涙目になっている男はそう言って謝ったが、まったく悪びれていないように見える。
結局隣にある居間っぽい部屋で、テーブルを挟んで向かい合った。男がマグカップに紅茶を淹れてくれたけれど、むかつくことにちょうどいい琥珀色だ。
無精ひげで、癖のある髪を襟足でひっつめた自然派ヘアスタイル。それはちょっとよく言い過ぎか。薄茶のぼさぼさ頭で、背は高めでいい体つきだけど頭のなかは終わっていると思う。そんな男はランスロットと名乗った。見た目、三十後半。おっさん。
「人に水かけたあげくに着替えの強要、当然と言わんばかりの覗き。そういう目的ですか」
「ちげーよ。だったらもっと胸とケツのでけえ女にするっつーの」
「平然と言うなおっさん!」
ちょ、初対面だよね? わたしも頭にきすぎて口汚いのは認めるけど、初対面ですよね?
もっと言うと、こちらはどこまでも被害者のはずで、なのになんでこの人こんなに当然ですみたいな顔してんの。さりげなくわたし馬鹿にされているし。絶対この人B型だ。マイペースなB型男だ。
「おいおい、年頃の娘なんだから、んな口汚くちゃだめだろ」
「たとえそうでも、怒らせているのは誰」
「んー、俺か。――ところで、あんた町のやつじゃないだろ? 今日の宿取れてんのか?」
おいこのB型親父。マイペースすぎるだろう。
苦虫をかみつぶした顔で男を見ながら、わたしは思わず憮然としてしまった。たったこれだけの間によそ者ってわかるほどずれているところがあるのか。気をつけないと。
「……これから宿屋にいくところですけど」
「つーことは、ここらに知り合いもいねえのな。なにしにこの町にいんの」
へらっとしているわりに、すばっと的確に質問を重ねられ、一気に目の前のずぼらな男に眉が寄る。
城から報せが――いや、早すぎる。ここまで来るのに接触した人間といえば、広場で会った子供とこの男だけだ。カーミャリーコの顔をしていない地味な女が、ロッチェの女神と言われた側室と結びつくのは、そう簡単じゃないはずで。可能性としてあげられるのは、城からわたしを尾行していた人がいればの話。
逡巡を挟んで、わたしは慎重に口を開く。
「仕事探し」
「ふーん、なんかやりたいことあんの」
「できれば、食いっぱぐれないように手につくやつ」
どこの町にいっても、本当にひとりっきりで、金目のものもなにもなくなったときでも、なんとか自分で切り開いていけるように。
日本じゃ、無難に毎日を過ごせばそれなりになんとかなった。でも、ここはきっと一瞬の判断で命を左右することにもつながる。来たくてここにいるわけじゃない。だったら、できるだけやりたいことをやって生きたい。幸い、言葉は通じる。あとは自分のやる気なんじゃないか。
睨みつけたまま言うと、男は思わずとでもいうようにブフッと吹き出すと腹を抱えて笑い出した。
「ほんと、あんた見かけと違って現実的だなあ! どっかの貴族の家出娘かと思ったけど、まあいいや。おもしれー」
家出娘……! そんなふうに見えたのか。なかなか心外でショック!
衝撃を受けているわたしに、ようやく笑いをおさめた男は浮かんだ涙を拭ってひらひらと手を振る。
「んな顔すんなよ、褒めてんだぜ?」
「今の言葉のどこで?」
思わず真顔でたずねると、彼はまた笑いの発作に見舞われた。
「ったく、正直すぎる。――いいよ、わかった。そんじゃ、俺が雇ってやんよ」
「は?」
「鍛冶屋だって職人技だろ? どこでも腕がよければ食いっぱぐれることもねーよ。さっきの部屋そのまま使っていいし」
「は?」
「それともあれか? 鍛冶屋じゃ不満か?」
首をかしげてほんの少し上目にうかがってくる。その目がやわらかい灰色だと、このときようやくわたしは気づいた。
鍛冶屋。剣や防具なんかを作ったり修繕したりする職業、と記憶している。
やるか、やらないか。そんなの答えは決まっていた。
「どうぞよろしくお願いします」
教育係に習ったとおり、きれいに腰を曲げて頭を下げた。
こんなよくわからないセクハラ親父のところに住み込みで働くなんて、かなり自分でもどうかと思う。けれども、逆にこんな素性もよくわからない女に、部屋を提供しつつ雇うなんて言い出す相手も相手だ。
おいしい話だからなにか裏があるかもしれないが、現時点でわたしにとってとてもありがたい事態であることにかわりなかった。それなら様子も見ながらやらせていただこう。信用したわけじゃない。油断しないにこしたことはない。
「んじゃ、とりあえずその服もやるよ。部屋も貸すし、仕事もやる。そんなすげえいい男の俺に、昼飯作ってくれよ。材料ねーからこの金で適当に買ってきて」
ごそごそとポケットから出した銅貨を、男はなんのてらいもなくぽんとテーブルに置く。
それをまじまじと見つめたわたしは、はばかることなくため息をついた。
「……このお金持って、わたしが逃げたらどうするんですか」
何度も言うが、ほんの少し前に知り合ったばかりの人間同士なのである。それなのに、呆れたわたしに向かって相手はなんでもないとばかりに肩をすくめて笑ってみせた。
「そのときはそのときだな。それくれーの金で困るほど安い仕事してねえし」
なんちゅーおっさんだ。気前がいいんだか、ただの馬鹿なんだか、それともあれもこれも計算の上なのか。
はあああ、と大きなため息をついて、わたしはかたりと席を立つ。テーブルに放られた三枚の銅貨を、ズボンのポケットにきちんと押し込む。
「いってきます」
へんな男に拾われてしまった。
今さらだけど、中世ヨーロッパを思わせるこの世界に、文明の利器である冷蔵庫やガスコンロなんて素敵アイテムが存在するはずもなく、鍛冶屋を出たわたしは早くも材料選びから苦戦することになった。
冷蔵庫がないってことは、肉も野菜も保存が常温になるから使い切りの量で買わないとだめだ。
そして固形ブイヨンやらコンソメもないし、出汁の素もない。全部手作りしないとだめ。そりゃあ、料理するにも時間がかかる。
結局わたしは八百屋で玉ねぎとジャガイモとニンジン、肉屋でベーコンとウインナー、パン屋で食パン一巾を購入すると足早に鍛冶屋へ戻った。
お金の使い方は教育係から教えてもらったのでドキドキしたけどなんとかなった。城を出ようと決めてから今日までの数日間は、教育係が一方的に教えてくる内容ものみ込んだけど、今後必要になりそうなお金の使い方、移動手段、町の庶民の暮らし振りや仕事の種類など、お聞き出した。側室ですから知らないといけないことはいっぱいありますよね! と笑顔で教えを乞うたのである。なんて真面目な側室なんでしょう。
水をかけられた路地に着くと、鍛冶屋の看板の下をくぐって作業場に踏み入る。
カンカンと鉄を打ちつける音が外まで聞こえていたので予想はしていたが、雇い主が窯の前で金槌を振っていた。真っ赤な鋼の板が叩かれるたびに火花を散らす。普段お目にかかれないそんな光景に、わたしは息を呑んで見入ってしまった。
「なんだ、ずらかんねーのか」
入ってきたわたしに気づいて、男はシャツで汗をぬぐいながらそんな軽口を叩いた。腹筋がきれいに割れている。まくった腕も筋がくっきりとついていて思いのほかたくましい。なんだか無性に腹立たしくなったわたしは眉を寄せて相手を睨んだ。
「人を勝手にろくでなし扱いしないでください」
「そりゃ、悪かった」
荷物を抱え直したわたしをおもしろそうに眺めるので、余計に眉が寄る。
「台所使いますよ。できたら呼びます」
「おう。てきとーにやってくれ」
嫌いな食べ物も聞いておこうかと思ったけれど、もういいや。無理やりにでも食べてもらおう。いちいち気をつかうのも馬鹿らしい。
釜戸の火を起こせないから、あとでこの窯の火をもらいに来ないとな。思いながら奥へ向かうと、背中を声が追ってきた。
「で、そろそろ名前教えてくんない?」
俺はランスロットっての。と言った男に、セクハラされて怒り心頭だったわたしは今まで名乗っていなかった。失礼なことしちゃったな、と思ったけどあれはもともとこのエロ親父が悪いからいいことにしよう。
「凜子です」
人は学習する生き物だ。フルネームは二度と名乗るまい。
りんこ。
男は口の中でその三音を転がす。
「ふーん、リンって呼んでいいの?」
「お好きにどうぞ」
カーミャリーコじゃなければなんでもいいや。
あとで呼びますともう一度言って、わたしはようやく抱えていた荷物をテーブルへと下した。