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あの子が死にました  作者: 大滝のぐれ
否定―斉藤優菜
2/2

連絡

この文章が美穂みほからメールで送られてきた時、私はショックのあまりケータイを取り落としてしまった。


この遺書を書いた人物、安野あんのひよりが電車のホームから身投げをはかり死んだという事件から早3日。

『遺書は公開できない』と警察の人は言っていたのに、どうやらどこからか遺書の本文が漏洩していたらしい。

ひよりは、あの子が自殺したことによる罪悪感、そして、周りの人間の心無い中傷に押し潰され、死を選んだ。

当初、私はそれを『逃げ』と思っていた。


だが、あの子の自殺から1ヶ月経った今、私の精神もそろそろ限界に来ていた。ひよりが死を選んだ事も、納得できるようになっていた。


学校に行けば異常者を見るような視線を向けられ、先生も腫れ物を触るように私を扱う。

上履きをはじめとする私物は、誰が隠すのか知らないがよく無くなっていた。

その他、バレないように計算された陰湿ないじめを受けた。もう限界なのだ。


あの子をいじめていた主犯格の人物は、安野ひより、志島大雅しじまたいが小林菜穂こばやしなほ、佐々木優人ささきゆうと岸谷煉きしたにれん笹川美穂ささがわみほと私、斉藤優菜さいとうゆうなだ。


菜穂と優人と美穂、そして私はあの子が死んだあとも周りの糾弾や追求に耐えながら学校に通い続けている。

しかし、大雅は重圧に耐えきれず転校、煉も精神を病んでしまい引きこもりになっている。



煉と大雅は卑怯者だ。

どんな状態であろうと、私達はあの子を殺した罪を平等に受けるべきなのだ。

逃げるなんて卑怯に決まっている————なんて思っている訳がない。


私は大雅や煉の事が羨ましいのだ。

私の家は貧乏でとても転校を視野にいれた引越しなんてできないし、学校をサボる事も親の目があってする事ができない。

罪から逃れる事はできない。



第一、あの子が勝手に死んだのが悪いのだ。

あの子が私達の『いじり』を間に受けてしまうから、冗談が通じないヤツだったからいけないのだ。

私達が十字架に架けられる必要なんて、本当はない筈なのだ。

それなのに、あの子が勝手に死んだせいで私達は悪者に仕立て上げられ、ネットにしか居場所のない糞共は鬼の首でも取ったかのように私達の個人情報を晒し、私達だけでなく家族までも不幸のどん底に叩き込んだ。


ひよりの書いた遺書には、ひより以外の人間 (つまり私達)への追求はもう止めるように、という趣旨の文があった。

しかし、追求は止むどころか遺書の内容がネット等に漏洩したために広まり、激化している。

明日学校に行けば、恐らく机に『人殺し』などと目立たない様に端に落書きされているだろう。


ふざけるな。

クラスの人達や先生は、あの子の生前、あの子を寄ってたかって『いじって』いたじゃないか。

それなのにいざ彼女が思い詰めて自殺した、となると、途端に責任逃れをしだし、私達に罪をなすり付けて、自分にどうにか火の粉が降り掛からないように自分を守るのだ。

それでテレビのインタビューなどでは、「主犯格の子6人ぐらいがあの子をいじめてたのを見たことがあります」などとぬかすのだ。


確かに、実行犯が一番罪が重い。

だが、今回の場合、私達暴走を止められず、見て見ぬふりをしたクラスの人達 の や先生も悪いように思う。



私達は断じて悪くない。

民衆に石を投げられるべきなのは、十字架にはりつけにされた私達ではなく、あの子の死体の入った棺桶と、逆に石を投げている民衆の筈なのだ。

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