表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの子が死にました  作者: 大滝のぐれ
懺悔 ―安野ひより―
1/2

遺書

あの子が死にました。

彼女は私達の大切な友人でした。

いや、やっぱり友人と言うには少々おこがましい関係だったかもしれません。

あの子は昨日の夜、駅のホームから飛び降り、迫り来る電車に物言わぬ肉塊にされてしまいました。

周辺の人の証言では、あの子は自分の意思でホームから降り、困惑する人達に向け、笑みを見せていたそうです。


私達に非はない、とは言いきれません。

先程書いた情報から察するに、あの子は確実に自らの意思で死にました。

あの子は常日頃から事あるごとに「病み期だわー」とか「死後の世界に興味があるから死んでみたい」などと言うような人ではありませんでした。

そのような純粋な人、『死』に全く縁のないような人がが自殺をする理由とはなにか?

私達には心当たりがあります。

私達はことある事にあの子をいじりました。

いや、今振り返ると、あれは世間一般の考えでは『いじめ』というものだったと思います。


学食にパンを買いにいかせたり、クラスであまり目立たない人に無理矢理罰ゲームで告白させたり、わざと弁当グループに入れなかったりなどです。

私達は遊び半分でしたが、あの子にとっては本気だったのです。


それこそ自殺を考え、本当に実行してしまうほどの。


私達はあの子の笑顔や優しさに甘えていました。

最初は躊躇いはありましたが、だんだんあの子を追い詰めて行くうちに、どんどん楽しくなり、行動はエスカレートしました。

だったら最初からするなよ、と言われたらそれまでですが、ブレーキをかけるのを忘れる程に、私達はあの子をいじめるのを楽しんでいました。


まさか自分達が、よくいじめが原因で自殺したという事件の加害者側が「こんなつもりではなかった」と言うのと同じ心境になるとは思ってもみませんでした。


私達は反省文と、二時間あまりの説教で済みましたが、これからどうすればいいんでしょうか。

私達の顔写真や住所、名前、携帯と家の電話番号は全てインターネット上の匿名掲示板に晒されているという話を聞きました。

私達は社会的に抹殺されました。

もう学校には行けません。

ここで転校したとしても、そのような個人情報、人を間接的に一人殺したという事実は一生つきまとい、私達を苦しめます。

狂気のあまり、私達を殺そうとする輩も出るかもしれません。


このまま生きていてもなんの意味もありません。

余計に苦しむだけです。

自業自得と言われればそれまでですが、このままのうのうと生きるよりも、さっさとあの子と同じ様に電車に引き潰されて死んだ方が罪の償いになるかな、と思います。


ですので、これから無数の肉塊になって、死のうと思います。


この文章は『私達』と書かれていますが、肉塊になって罪を償うのは私だけです。

他の子達は関係ありません。

この文を見つけた貴方、私以外への追求はやめてください。絶対にです。




では、そろそろ電車がホームに近づいてきました。

まだまだ書き足りない事はありますが、時間がないのでこのくらいにしておきます。


最後にひとつだけ。加害者側の人権っていうのは、この日本にはないのでしょうか。


では、時間なので、いってきます。

お母さん、お父さん、先立つ不幸をお許しください。



それでは。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ