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逆転×逆転

すみません


手違いで7話の投稿が中途半端なところで終わってました。


今度は完全版なのでミスはないはずです。


では、どうぞ。

 所持者本人ですら、完璧に軌道を捉えることができない。その必殺の一撃をただの人間が止めることなど出来るはずない。

 そのはずなのに――


 気付けば刀身は赤奈の両手の平に収まっていた。


「白刃、取りーー!」

 驚きのあまり天使が唖然と呟く。

 しかし、そんな暇など無かった。すぐに赤奈は肩を捻り、手の平で刀を叩き落とす。

 そこまでされてようやく天使は意識を戻すも既に赤奈は次の動作に入っていた。

「う……おおおおおおっ!」

 気合の孕んだ叫びと共に低い姿勢のまま天使の天使の下半身にタックルを決める。

 天使をクッション代わりにした赤奈と対照に、彼女は冷たいコンクリートに派手な音を立てた。天使の意識が飛んだように感じた。

その絶好のチャンスに赤奈はそのままマウント態勢を取る。

 ハアハア、と息を荒区して天使に乗りかかる様はどこかいけない構図に見えるが、仕方のないことだ。長い入院生活でほとんど院内生活だったため、持久力は平均男子中学生のそれを遥かに下回る。ほんの少し動いただけで今も肺が空気を求めて膨らんでいる。

 懸念の一つの〈銀鱗〉を出来るだけ遠くに蹴飛ばすと――ちょうど、気を失っていた天使が目を覚ました。

 交差する二つの瞳。パチパチと天使が何度か瞬きを繰り返す。

 そして、瞳を限界まで開かせ――

「きゃあああああ」

 ――などと喚くはずもなく、ジタバタと暴れている。

 幸いなことに超人的なスピードや剣術とは違い、筋力面ではもやしっ子の赤奈でも何とか押さえつけられる程のものだった。

 ほどなくして動きを止めた天使は憤怒を込めた視線で赤奈を射抜く。うっとたじろいでしまうものの、目的を果たすために口を開く。

「えっと、見ての通りの状態なんだけど――何か言いたいことはある?」

「ええ、一人のうら若き乙女が獣に襲われている強姦の図です」

「やめてっ! それすっごく気にしてるから! そうじゃなくて君に――――ん?」

 不意に言葉が途切れた。

 天使の右手に――どちらかというと手の甲に――光の粒がある形に基づいて凝縮していくのに気付いたからだ。

 その正体を確かめるよりも先に原始的本能が危険だと叫んだ。本能の赴くまま後ろに飛び跳ねると同時に天使の右手が閃いた。

 この時ばかり赤奈は、自分の失念を後悔した。なぜ天使の武器が一つだと思い込んでいたのだ、と

 まだ体が宙を泳いでいる最中にズド! と右肩から鈍い音が聞こえた。

 恐る恐る眼球だけ動かしそれを確かめる。右肩に――光の矢が深々と刺さっていた。

「う……あっ!」

 遅れて、鋭い痛みが肩を中心に広がっていく。今まで経験したことのない類の痛みに喘ぎ声しか出ない。

「ガハッ!」

 肺に詰まっていた空気が一気に吐き出され一瞬だけ、呼吸が止まる。

(矢が、痛い、抜かないと)

 もはや、思考らしい思考もできず、赤奈は光の矢を抜こうとそれに手をかける。

 しかし、指先が触れた瞬間、屋は光の粒へと溶けていった。傷口を塞いでいた矢が無くなったことにより血がジワジワと流れ始める。

 痛みのショックで正気に戻り、手で傷口を覆うものの血の気がすぅーと抜けていくのが分かった。

 ついに意識を手放そうとしたとき、またも天使の声がそれを防いだ。

「どうやらもう立てないようですね。ここで引導を渡しましょう」

 見れば、手の甲にメタリックな小型のクロスボウが装着されていた。

「形勢逆転ですね。気を失っている間にトドメをさせば良いものを」

 そんなことするか! と叫びたかったがそんな力は残っていなかった。

 せめてもの抵抗として、冷ややかな物言いに赤奈は弱々しい声で精一杯の口撃をする。

「冗談。善良なる一般人が寝ている可弱い女の子に危害を加えるわけないだろ?」

「ふん、どの口が言うんですか先ほどまでのご自分の行動を思い返してください。――――一つ聞きたいことがあります。ただの人間のあなたが、私の太刀筋を見極めるどころか白羽取りなんて芸当をなぜできたのですか?」

「別になんてことない。集中すれば誰でもできるよ。よろしければご教授しようか?」

 軽口を叩くくらいの元気は戻ってきたようだ。だが、あまり気分がいいとは言えない。

「以外に調子のいい人なんですね。あまり好きなタイプではないです」

 天使が銃口を向ける。

 赤奈も黙ってやられるわけにはいかず、右手をスナップして石を投げつける。

 あえてなのか、ボウガンで打ち落とすことなく手で受け止めた。

 そのまま握りつぶし、粉々になった石ころを見せつけるように落とす。サラサラとした砂のようなものが赤奈の鼻をくすぐる。その腕力に驚くよりも先に違和感を覚えた。

(そうだ。彼女はあの石を握りつぶせるはずがない。それだけの力があるなら先に僕を突き飛ばせたはず! 何かからくりがあるはずだ)

 ほんの少し考えれば謎はすぐ解けるはず。ただ天使はそんな猶予をくれないらしい。

 シュッ! と空気を裂く圧縮音が鳴り、光の矢が放たれる。

 咄嗟に首をひねるが、少し反応が遅れたため髪の毛を何本か持っていかれる。休む間もなく、今度は続けて3発放たれた。

「っ!」

1発はそれたものの2発目が腕をかすめる。3発目は手の平を深々と刺した。

 悲鳴だけは上げまいと唇を流血するくらい噛みしめる。すぐさま無作為に走り出す。

 このままではやがて、自分は止まる。次の矢が放たれる前に対抗手段を講じなければ、と考えを巡らせていると視界の端に光るものが見えた。

 〈銀鱗〉と呼ばれた刀だ。先程、無下に蹴り飛ばした刀は、こちらに剣先を向けて何か言いたそうに転がっている。

 心の中で謝ろうとした時に、頭の中に何かが走った。

(そうか。彼女がなぜ馬乗りになった僕を突き飛ばせなかった理由が分かったぞ!)

 矢が放たれる前に刀めがけてダッシュをする。その最中天使は矢を放つが、フェイントを混ぜ。巧みにかわす。ようやくたどり着き刀を拾い上げる為に腰を曲げた。

「無駄ですよ。あなたでは刀を持ち上げることはできません」

 天使は平たい声でそう言う。赤奈はそのままの姿勢で返事をした。

「確かに僕じゃ、刀を振るうことはできないかもしれない。でも、君の力の源は分かっている。武器を身につけていなければ本来の力を発揮できない。そう、さっき僕に馬乗りされても突き放さなかったのが何よりの証拠だ」

 思い返せば、天使が人ならざる力を見せた時、刀を身につけていた。逆に、刀を叩き落とした後や天使に圧し掛った時などは見た目通りの可弱い抵抗しかできなかった。

 だから、刀が力の源だと判断した。

「なら、それは僕にも有効なはずだ。非力な僕じゃ刀を自在には操れないくても、銀鱗の力を借りれば振れる。そうだろ?」

 天使はその問いに呆れ顔で返した。まるで的外れの回答をした生徒を相手にした時のような顔だ。

 どうせ負け惜しみだろ、と赤奈は柄を握り締める。そのまま刀を持ち上げント力を入れる。

だが

「うおっ!?」

 ガクッと膝から崩れそうになった。刀がまるで磁力に引かれたよう地面からに離れないのだ。予想していた重さを遥かに上回っていた。

 赤奈は刀を握れば自分も天使と同等の力を得るものだと思い込んでいた。そうではなかった。極限状態が自分に都合のいい妄想しかさせてくれなかったことに今になってようやく気付く。

「人間では持てませんよ。重さ云々の話ではないからです。もし銀鱗ーーいえ、全部の神器が人に操れるのならそもそも私達はいりません。神器は天使の因子がなければ操ることはできませんから」

 その言葉は赤奈の詰みを意味していた。


 言い終え、天使は赤奈の反応を待った。

 返事は返ってこなかった。

 ――なら、今度こそ終わりにしよう。できるだけ苦しめないように、即死させる。


お疲れ様でした。


同じ文を二回読ませてしまいすみません。

以後気お付けていきたいです。


次の投稿はおそらく日曜日の6時だと思います。

では、また来週

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