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画面越しの愛情

 はじめましての方ははじめまして。

久しぶりの方はご無沙汰してます。かず21です。

 えー、今まで二次創作の方ばかりやっていたのですが、そろそろ一次創作もやってみたいなーと思い、二次創作の方を放り出してしまいました。

楽しみにしていた方は本当にすみません。もう二度と投稿はしないと思われます。

 とにかく今は、この小説だけのことを考えて行きたいです。

では、どうぞ。


 土曜日の昼下がり。白い部屋――病室に日和 赤奈はいた。

 病室にも関わらず必要な医療器具がほとんど置いていない。逆に来客用のソファーに大きめのテーブル。更にはトイレやバスルーム、クローゼットまで取り付けている。初めて訪れた者がこの部屋に入れば、ホテルの一室と見間違えるかもしれない。それぐらい、病室にしてはやけに豪奢だ。

 風変わりな個室の主は窓際に設置されたベットの上で体を起こし、ノートパソコンでTV電話を繋いでいた。

「どう赤奈ちゃん? 今朝届いたチュニックは気に入ってもらえたかしら?」

 画面に映っている物腰の柔らかそうな女性は、金箔を施したティーカップ片手で問う。

 赤奈はその女性が言う茶色のチェニックを取り出し、画面越しの女性に見えるように広げた。

 なんでも、このチェニックは今流行りのデザイナーに特注で作らせたそうだ。かなりの額を張ったんだろう、と内心冷や汗をかく。

 しかし、そんな素振りを一つも見せずに笑みを浮かべ、可愛げのある声で言った。

「うん、とっても可愛いね。高かったでしょ?」

「ふふ。子供がそんなことに気を使わなくてもいいの。その部屋だってあなたのために用意したものでしょう?」

 女性――日和 翠はほがらかに告げ、ティーカップを口につけた。錯覚だが、アルグレイの柑橘系の香りがした。

 空になったティーカップに新しい紅茶を注ぎながらしみじみと女性は言った。

「あなたが体を壊して田舎町に行って…………えっと、10歳の頃だから、もう5年も経つのね。お母さん娘に会えなくて寂しいわ」

 娘という単語に僅かに胸が痛んだが、すぐさま取り繕うように笑う。――胸が痛い……?

 赤奈は続けて僕も、と相槌を打とうとした。しかし、言葉は出なかった。――――来る。

「……どうしたの?」

 紅茶の香りを楽しんでいた翠は、チュニックをたたんでいる赤奈の手が止まったことに気付いたみたいだ。

 翠の憂慮の声を尻目に赤奈の胸に激痛が走った。

 「うう……ああ、ああっっ!」

 何かが反発するような感覚。ちぎれるような痛みから逃れるために必死に身悶えする。

 翠が何かを叫んでいるが、赤奈の耳には届かない。

 赤奈は胸を抑えながら、どうにかナースコールに手を伸ばそうとしているが、激痛で思い通りに手が動かない。

 苦しみはしばらく続いた。

 やがて、胸中を支配していた痛みは熱が冷めたように引いていき、荒かった呼吸もしだいに落ち着いていく。

 赤奈は翠を安心させるため、無理やり笑顔を作った。その顔に力はない。

「大丈夫?! やっぱり、退院は――」

「だ、大丈夫だよ! ほら、僕もうすっかり元気だし!」

 苦しい言い訳すぎる。両手を広げ、元気だとアピールする姿は我ながら空々しい。

 しかし、娘を溺愛する翠はでも、と言い募ろうとした。

 それを阻止すべく翠が口を開くよりも早く赤奈の言葉が割り込んだ。

「本当に大丈夫だから。医者にも許可はもらったし、体は弱いままだけど、生活には支障が出ない程度には回復したよ。今のだって、ほら、精神的なものだから!」

 翠に初めて聞かせるフレーズを行使し、勢いで何とかやり込める。気圧された翠が頷くのを確認して、話を逸らすために話題を変える。

「そういえば明日、父さんの美術館から珍しい美術品が展示されるらしいね」

「ええ、祐一郎さんもその話をしていたわ。目玉の美術品は確か〈真実の鏡〉と言っていたかしら?」

 赤奈の父、日和 祐一郎はある大手の財閥の後継者の一人だ。故に多忙な身であり、年に数回しか赤奈に会えない(それでもできるだけ会えるように仕事を切り詰めているらしい)

 その代わり、両親はとても仲がいい。翠が祐一郎の話題に食いつくのは容易に予想できた。

 赤奈は笑顔を崩さず、話を続ける。

「そう、それ。明日、そこに行くことにしたよ」

「一人で大丈夫なの?」

 先程の発作が心配なのか、あまり乗り気な様子ではない。怪訝な表情を向けてくる翠に対して赤奈は少し困った顔を浮かべた。

 赤奈は、5年間この街に住んでいた最後の思い出が欲しいのだ、と翠に伝える。それでも納得してくれそうになかったのでややわざとらしく

「あ、もうすぐ診察の時間だ。先生にさっきのことはちゃんと言うよ。それからもう一度相談するから安心して。ね?」

「……分かりました。先生に一任するわ。ちゃんと私に報告してね?、あと、くれぐれも無茶だけしないでね。あなたはどこか危ういところがあるから」

「うん。大丈夫だよ。じゃ、またね」

「また明日……愛してるわ」

 別れを告げ、ノートパソコンの電源を落とす。

 気が抜けたのか小さなため息が漏れ、そのまま脱力。体をベットに投げ出す。その顔に先程の明るさはない。

 「こことも明後日でさよならか」 

 もうすぐで退院という事実が感慨深い。悲しいことも楽しいこともあったがここから離れることで忘れるなんてことはないだろ。それぐらいこの5年濃かった。

「とりあえず、チュニック片付けなきゃな……あ」

 不注意で肘が本棚の上に飾ってあった写真立てに当ってしまう。写真をもとに戻すと幼い男女がピースサインで映っているのが目に入る。

 笑顔が似合う天真爛漫の少女と穏やかに笑う少年。

 先程の母親の言葉が脳裏をよぎる。

「愛している」

 綺麗な言葉だ。ただ、赤奈は知っている。それは自分に向けられた言葉ではないことに。

 だから、思わず呟いてしまった。


「結希……」


もういない妹の名を。

 最後まで読んでいただきお疲れ様でした。

地の文はどうだったでしょうか?

「ヘッタクソだな」「おお、うまいですね」

 両方の意見とも大歓迎なので感想として送ってください。

 それと、後書きでもやっているように文章を詰めて、改行だけでやっているのでもし

「見にくい」や「このままでも見れる」

 などの反応もお待ちしているのでぜひ意見をください。

後、ハーメルンで、マルチ投稿しているので小説家になろうが使えなくなったとき、そちらの方へ覗いてください。

では、また次の更新で。

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