アホの子
蜜柑side
学校に着いた私達は、早速瑠美ちゃんの知り合いに会うことにしました
「クラスにいるかな?」
「多分いると思うよ。あいつ無駄に学校来るの早いから」
そして、教室に入ると瑠美ちゃんはキョロキョロと辺りを見回します
「あ!いたいた!おーい!」
瑠美ちゃんが声をかけたのは茶髪の可愛らしい顔の男の子でした。男の子は瑠美ちゃんの声に反応して答えます
「んー?何だよ暁?ついにオレの魅力に気づいて告白でもしに来たのか?」
「そんなわけないでしょ!ったくあんたは相変わらずアホねぇ」
「アホとは何だアホとは!……って、今日は一人じゃねえのか?」
男の子は私達に気づきました
「ほら。自己紹介しなさいタマ」
「分かってるよ。えー、オレは原中 玉樹ってもんだ、まぁクラスメイトだし、もしかして名前覚えててくれてたり……」
「いえ、すみません。覚えてませんでした」
「ご、ごめん。私も……」
「……そーですか……」
原中君は私達の言葉にがっかりします
「あははっ、仕方ないわよ。あんたの名前、平凡なんだし」
「うるせ!平凡で悪かったな!」
「あ、私達も自己紹介しよっか」
菜由華ちゃんが提案します。
しかし、原中君は
「いや、二人とも名前知ってるから良いよ。西原さんに市川さんだろ?」
「あれ?何で知ってるんですか?」
「だって二人とも可愛いじゃん?オレ、可愛い女子の名前はほとんど把握してるんだ」
「か、可愛いって……」
菜由華ちゃんが顔を赤くします。ふむ、確かに菜由華ちゃんと瑠美ちゃんは美少女ですからね、可愛いと言うのも間違っていません
「でも、私は可愛くないのによく覚えてましたね?」
「いやいや、市川さんも可愛いじゃん!」
「瑠美ちゃんに名前を聞いてたんでしょ?それで私の名前を知ってたんですね」
「駄目だ、聞いてない……」
「諦めなさいタマ。オレンジは自分の魅力に全く気づいてないのよ」
というか瑠美ちゃん、原中君の事タマって呼んでるんですね。猫みたいです
「で、オレに何か用があるのかい?」
「あ、はい実は……」
「分かった!告白だろ!?」
「はい?」
私の話を聞かずに、原中君は一人で語り出します
「っしゃー!!ついにオレも美少女に告白される日が来たぜおい!しかも二人!やべぇテンション上がってきたあああああ!!」
何でしょう、喜んでる内容がもっと違えば可愛らしい男の子が無邪気に喜んでる微笑ましい光景なんでしょうが……
「良いから落ち着きなさいこの馬鹿」
そんな原中君に瑠美ちゃんが呆れ顔で拳骨を降り下ろします
「いだっ!何しやがる!?」
「誰が告白って言った?私達はあんたに話を聞きに来ただけよ!」
「うん?話ってエロい話かい?」
「もう一回ぶん殴られたいのかしら……?」
「わ、分かった分かった。話って何だよ?」
ようやく本題に入れそうですね
「あの、原中君ってカツアゲにあったんですよね?」
「うっ!ど、どこでその情報を!?」
「瑠美ちゃんに聞きました」
「暁てめぇこら!勝手にオレの恥をさらすんじゃねーよ!」
「あはっ、ごめん♪」
「うぜぇ!」
「あのー……出来ればそのカツアゲされた時の状況を教えてくれないかな?」
菜由華ちゃんが控え目に聞きます
「あ、ああ良いぜ。あれは一週間前だったかな……放課後に一人でいた時だ」
「一人だったんですね」
私が確認すると何故か原中君は慌てて言います
「誤解すんなよ!?普段は友達と一緒なんだからな!?」
「良いから話を続けなさい」
「ああ……いきなり数人の生徒に囲まれたんだ。で、金出せって言われて……」
「私達の時とほとんど変わらないね」
「勿論オレは抵抗した!てめぇらなんかに渡す金はねえって奴らを追い払おうと……」
「はい、それ嘘ね」
突然瑠美ちゃんが原中君の話を遮ります
「う、嘘じゃねえよ!」
「あんたこの間私に話した時は泣きながら『金取られたこん畜生~!』って騒いでたじゃない。とても連中を追い払う勇気があるやつの言葉とは思えないわね」
「うがっ!?」
「ほら、本当の事を言いなさい」
「ぐぬぬ……分かったよぉ……」
原中君は涙目で白状しました
「いきなり囲まれて……怖かったから土下座して金出して許してくださいって言ったんだよ……そしたらあいつら、金持っていなくなったよ」
「うん、正直に話してくれてありがとねタマ」
「ど、土下座までしたんだ……」
「怖かったんですね、よしよし」
「やーめーろー!!」
私が頭を撫でてあげると原中君は頭をブンブン振って抵抗してきました
「何だこれ!美少女に頭撫でてもらえるって凄く嬉しいはずなのに恥ずかしさしか感じねぇ!」
「それよりもタマ。カツアゲしてきた連中、何者か分かる?」
「それよりもって……そうだなぁ……」
おや?何か手がかりを持ってるのでしょうか?
「連中のリーダーっぽい奴は心当たりあるぜ?」
「本当!?誰なの!?」
「ちょっ!近い!顔が近いよ西原さん!」
興奮して顔を近づける菜由華ちゃんを原中君は顔を赤くしながら慌てて離します
「確証はねえけど良いか?」
「うん、今は少しでも手がかりが欲しいの」
「分かった。多分なんだけどな、生徒会の副会長だと思うぜ」
……え?
「ふ、副会長がカツアゲのリーダー格って事ですか?」
「だから確証は無いって。でもオレの覚えてる限りじゃ、あの面は副会長だったぜ」
むぅ……これはどう言うことでしょう……
「ってことはさ、まさかの生徒会がカツアゲの黒幕って可能性もあるってこと?」
「それはどうだろうな?仮に副会長がカツアゲのリーダーだったとしても生徒会の連中が関わってるかどうか分からないぞ」
「副会長が一人で勝手にやってるって事?」
謎は深まるばかりですね
「つーかさ、暁達も被害にあったんだろ?他の生徒会メンバーがいたかどうかわかんねーの?」
「私、顔見ないで返り討ちにしちゃったから」
「私も理性を失ってて、顔まで見てなかったから……」
「私はそもそも、生徒会メンバーの顔を把握してませんから」
「……駄目だこりゃ」
「タマ、何か他に手がかりない?」
瑠美ちゃんが聞きます
「うーん、他は知らない連中ばっかりだったからなぁ」
「そっか……」
「あ、でも手がかりを知ってるかもしれないやつなら」
手がかりを知ってる人?
「オレ、生徒会の連中の何人かとは顔見知りなんだよ。その中に生徒会の情報とかよく知ってるやつがいるんだ。あいつなら何か知ってるかも……」
「へぇ、タマって生徒会に知り合いいたんだ」
「どんな人なんですか?」
「ま、それは会ってからのお楽しみってことで。あっと、忘れてた」
原中君は思い出したような顔で言いました
「あいつに話を聞くなら持っていった方が良いものがあるぜ」
「何を持っていくの?」
「それはだな……」
そう言って、彼は私達に何を持っていけば良いか教えてくれました
「……それを持っていけば良いのね?」
「分かりました、後で買っておきましょう」
「おう、行くなら放課後の方が良いぞ。生徒会室に確実にいるだろうからな」
「分かったわ。色々ありがとねタマ」
ふむ、原中君のお陰で色々手がかりが見つかりましたね
「んじゃ放課後、生徒会室に行くってことで良いわね」
「うん、了解」
「ではまた放課後ですね」
さて、では放課後までに原中君の言ってた物を用意する事にしましょう




