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悪餓鬼

陽多side


「……あれ?」


目の前で呆けた声を出している加那。その手には今まさに降り下ろされそうになっていたコンパスが握られていた。

そして、そのコンパスの先には


「あ……ああ……」


顔を真っ赤にして泣いている香奈がいた


「やっと見つけたと思ったら……何やってんだお前は?」


俺は加那に問いかけた。

二人を捜し回り、ようやく見つけたと思えばそこにはコンパスを降り下ろそうとする加那。その理由を聞きたくなるのも当然だよな?


「もう!陽多さん!邪魔しないでよ!後もう少しで香奈さんの血を見れると思ったのにぃ!」


「血?何だそりゃ?」


「ワタシの好きな物だよ!やっと思い出せたんだ~」


「……なるほどな。記憶が戻ったのか」


戻った、というよりも戻ってしまったと言った方が良いかもしれない


「で?何で香奈にコンパスを刺そうとしてんだよ?」


「そんなの香奈さんの血を見たいからに決まってるよ!」


「……じゃあ何か?血を見るためならこいつがどうなろうと知ったこっちゃねえってことか?」


「あはは、大袈裟だなぁ。ちょっと刺すだけだよ?死ぬわけじゃあるまいし……」


加那は悪びれもせず、笑いながら言った。


その瞬間、俺はキレた


「加那」


「もう陽多さんったら、早くどいてよ。香奈さんの血が見れないじゃん」


「……どけ、だと?」


「そうだよ!あ、もしかして先に陽多さんが刺されたいのかな?」


「ふざけんなよ……」


「分かった!じゃあ陽多さんに刺してあげる……」


「ふざけんなああああああ!!」


「っ!」


俺は掴んでいる加那の手に力を入れた


「痛い痛い痛い!!放してよっ!!」


「何で平気でそんなことが出来んだよ!?このコンパスが香奈に刺さったらどうなると思ってんだ!ああ!?」


「ぐぐ……分かってるよそんな事ぉ……!」


「なら何でやめねえんだ!香奈はお前にとってその程度の存在だったのか!?」


「そんなわけ……ない……」


俺の言葉に、加那は苦しそうに答える


「香奈さんも……陽多さんも……!ワタシにとって大事な人だよ……」


「だったら何でこんなことすんだよ!?」


「ワタシはっ!こういう人間なの!大事な人であればあるほど、その人の血を見たくなるの!」


加那はついに泣き出した


「自分でも分かってるんだよ!異常だって!でも駄目なの!ワタシは、血を見ないと……人を信用できないの……」


「何だよそれ……」


「……ワタシ、血を見ればその人の色々な事が分かるの。何でかは分からないけど、昔からそうだったの。血を見るだけで、その人の全てが手に取るように分かっちゃうの」


これは本当なのか?本当に加那にはそんな能力があるのか?

……いや、それよりもだ。何故加那はそんな事をしないと人を信じられないんだ?


「加那、俺達を信じてくれないのか?」


「……無理だよ。ワタシは人を信じられない」


「何でだよ!?」


「うるさい!陽多さんには関係ないでしょ!?」


加那は俺を睨み付けながら言った


「今までは記憶が無かったから仲良く過ごせたけど!今のワタシはこういう人間なんだ!もう陽多さんも香奈さんも信じられない!」


「関係ねぇよ!」


「えっ……?」


加那は泣きそうな顔で俺を見る


「たとえ記憶が無かったとしてもだ。昨日から今日まで一緒に過ごした時間が消えたわけじゃねえだろ」


「………」


「それでも……俺達を信じられないのかよ?」


「……無理だよ」


加那は首を振る


「そんな簡単に人は変わらないの……。ワタシは人を信じられない。信じたくても……信じられない!!」


「加那……」


「だから……!」


「っ!?」


加那は、コンパスを持っている手に力を入れて、俺の手を振りほどいた


「ワタシに信じてもらいたいなら……血を見せてよっ!!」


「……そうかよ」


俺は泣きながらコンパスを握る加那を見つめる


「なら、お前を止めるしかねえよな……」


「うああああああああああ!!」


コンパスが俺に向かって降り下ろされた


「……ちっ!」


「うっ!?」


俺はそのコンパスを、腕を使って弾き飛ばした。

さてと、それじゃあ……!


「おしおきだぜ、悪餓鬼め。少し頭冷やしやがれっ!!」


「うあああっ!!」


俺は加那に向かって拳を叩き込んだ。


……本当なら、加那を守る為に使うはずだった拳を、な

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