友達
紗季Side
「う…ううん…」
私が目を覚ますとそこは見たことない廃墟みたいな所だった。
しかも
「!手足を縛られてる!?」
ロープで体が縛られ動けない状態だった
「……そうだ…私捕まったんだ…」
「ようやくお目覚めみたいだなぁ」
「誰!?」
横から声が聞こえ、見てみると一人の男が座っていた
「俺はこの辺りの不良グループのリーダーをやってるもんだ。今回は部下達が世話になったらしいから礼をしようと思ったんだが…こりゃ確かに良いわ」
「な…なにが…?」
「素材が完璧ってことさ」
この人…まさか…!
「そうだなぁ……こんな娘に手を出すのも気が引けるし、ちょっと遊ぶだけで帰してやっても良いぜ」
「あ…ああ…!」
やっぱりだ…!この人初めから私の身体目当てだったんだ!
「助けは期待しない方が良いぜ?こんな時間帯に廃墟の周りに人が来るわけねえ。さらに部下が見張りもしてるしな。助かるにはこの取引に応じるしかねえ」
「そんな…取引…卑怯だよ…!!」
「卑怯で結構。それが俺だからな」
このまま私が同意してしまったら後でこの人は言い訳として利用するだろう。触っても良いと言ったから触ったと。
でもどうやらそれは私の考えすぎだったようだ
「ああもういいだろ!」
ついに我慢の限界が来たらしく私に手を伸ばしてくる
「いや…やめて!」
「やめられねえなぁ!」
男の手が私の胸に触れそうになった…その瞬間
『ぎゃああああ!?』
『なんだてめ…ぐはぁっ!!』
「なんだ!?」
今のはどうやら見張りをしてた人達の悲鳴らしい。突然の出来事に男は慌てはじめる
「ぐへあっ!」
私達のいる部屋の前で見張ってた人が倒された。そしてボロボロの扉が勢いよく開かれた。
そこにいたのは…
「はぁ…はぁ…紗季っ!無事かっ!?」
「空…君…!」
木の枝を持った空君が、そこにいた
陽多Side
「野郎リーダーの所に向かったぞ!追い掛けろ!」
「行かすかっ!」
「うぐわっ!?」
空が廃墟に入ったのを見届け、まだ残ってるやつらを俺達で片付けることにする
「な…なんだてめぇ……って!お前!組谷陽多じゃねえか!」
「分かってるなら話が早い。ここでおとなしくしてもらうぜ」
「くっ!ざけんな!」
まぁ最初から降伏は期待してなかったからな
「相手は一人だ!全員でかかれば…」
「俺を無視すんな!」
「ぐはっ!いたのか!?」
「地味に傷つくからやめろ!」
賢也が地味に登場した
「お前まで言うな!」
「じゃあもっと派手に活躍しろよ」
「ったくよ」
俺と賢也を不良共が取り囲む。なんだ、10人くらいしかいないな。張り合いがねえ
「ところで香奈はどうした?」
「外で待機させてる」
なら遠慮なくやるか
「んじゃやりますか」
「おうよ」
そのタイミングで雑魚が襲い掛かってきた
「くたばれええええ!!」
「お前がくたばれっと!」
「喰らえやあああ!」
「こいつらテンション高いな!?」
テンション高いだけで弱いけどな
「今だ!」
「おい陽多!後ろだ!」
「しまっ…!?」
後ろから忍び寄っていた一人が攻撃しようとしていた。俺はとっさにガードを…
「うおっ!?何か飛んできた!?」
突然、男の動きが止まった
「隙ありだ!」
後ろから何かが飛んできてなんとかなった……誰がやったかは想像つくな、飛んできたのコンパスだったし…
「陽多君に手を挙げようとするなんて…うふふふ…」
なんか聞こえるしな
「賢也、後何人くらいだ?」
「二人だ」
「少なっ!弱すぎだこいつら!」
空がほとんど倒していってるのもあるが…予想以上に弱いな
「くそっ!負けてたまるか!」
「負けられねえんだ!」
「「負けとけっつーの!!」」
「「ぎゃああああ!!」」
「なんの見せ場もなくやられたねこの人達」
入ってきた香奈が呆れ顔で言った
「空君は大丈夫かな?」
「多分もう紗季の所にたどり着いてるだろうが…こいつらの言ってたリーダーがいるんだろうな」
「とにかく先を急ぐぞ」
俺達は倒れている雑魚を踏まないよう気をつけて歩いて行った
空Side
俺が部屋に入ったとき、まず紗季が縛られてる姿が目に入る。さらにもう一人
「お前…!」
「んだてめぇは?こいつの彼氏かなにかか?」
かなり不機嫌な声で言う男
「俺は紗季の友達だ!だから助けに来たんだ!」
「へっ、そうかよ。そんなちっせえ木の枝一本でここまで来たってことはなかなか強えみたいだな」
男が腕を鳴らしながら構える
「ならこっちも手加減しないぜ!」
「行くぞ!」
その瞬間、同時に走り出す
「おらあ!」
「っと!」
相手のストレートに飛んできたパンチをかわし木の枝を振り下ろす。
一応あまり尖っていないやつを拾ってきたから、当たっても酷い怪我をすることはないだろう
「せやっ!」
「当たるかよ!」
さすがに今までの相手みたいに簡単にはいかないみたいだ
「くたばれ!」
「うぐっ!」
相手の蹴りが当たりそうになり慌てて木の枝でガードした。
だが
「なっ!?折れた!?」
「おっと、強すぎたか?」
さっきの一撃で木の枝が折れた!
「くらえやっ!」
「がっ!」
パンチを喰らい、少し吹っ飛ばされる
「にしてもよくここまでやるな。彼氏でもねえただの友達なんだろ?まさか長年連れ添ってる幼馴染みだったりするのか?」
「いや…今日出会ったばかりだよ」
「はぁ?じゃあなおさらこんなとこまで来ねえはずだろ。馬鹿なのかお前」
「そんなの…関係ない!」
俺はなんとか立ち上がる
「たとえ出会ったのが今日でも!友達を大事に思うのは当たり前だろ!だから…俺は大事な友達である紗季を助けるっ!!」
再び俺は折れた木の枝を構える
「けっ、そんな折れた枝でなにができるってんだ?」
「こういうことが……できる!」
「な!?」
俺は全力で枝を投げた
「だがこんなの簡単にかわせるぜ!」
相手は横に飛び、かわした。
よしっ!かかった!
「な…なに!?」
俺は木の枝を投げると同時に全力で走っていた。つまり…相手のすぐ近くまで迫っていた!
「とどめだぁ!!」
「ぐああっ!!」
固く握りしめた拳をやつの顔面に叩き込んだ!
「くそ…一撃で…!」
ついに男は気絶した
「はぁはぁ……勝った…!」
俺はホッとしてその場に座り込む
「……ってそうだ!紗季は!?」
慌てて紗季のいた方を見る
「安心しろ、無事だ」
「縄も切ったよ」
「お疲れさん、空」
いつの間にかいた陽多達が助けていた
「三人共いつからいたんだよ…」
「空の木の枝が折れた辺りから見物してた」
「加勢してよ!」
「いやいやあそこは空気を読んで行かなかった」
「なんだよそれ…」
でも良いか…最終的に勝てたんだし…。
あ、紗季が駆け寄ってきた
「あの…空君。本当にありがとう…」
「いや…紗季が無事で…良かった…」
「空君!?大丈夫!?」
俺はそのまま意識を失った
紗季Side
「空君!」
急に空君が倒れて気絶してしまった
「大丈夫だ、多分今までの疲れで気を失ったんだろ」
「空君、紗季ちゃんのためにいろいろ走り回ってたもんね」
「そうだったんだ…」
空君は安心したような顔で眠っている
「さて、じゃあ俺達は先に出てるから空が目を覚ましたら出てこいよ」
陽多君の急な提案
「え?なんで私一人なの?」
「まあまあ、二人はゆっくりしてていいからね~」
香奈ちゃんまで!
結局三人はそのまま出て行った
「結局一人になっちゃった…あ、空君も一緒か」
私は静かに寝ている空君を見る
「起きるよね?ただ気絶してるだけだもんね?」
でも少し不安になる…もしも…起きなかったりしたら…
「空君…」
彼の顔にそっと手を当てる。その瞬間
「ん……」
「あ…目が覚めた?」
空君の目が開いた
「紗季…?あれ?俺…眠ってたの?」
「うん。急に倒れるからびっくりしたよ」
空君が起き上がる
「皆は外にいるの?」
「そうだよ。空君が起きたら出てきてって言われた」
「じゃあ行くか」
「あの…空君」
「ん?」
私は彼に近づく
「助けてくれたお礼、していいかな?」
「え?いやお礼言われる程じゃ…」
「良いの。私がしたいだけだから」
「そう…わかったよ」
そして彼の耳元で言う
「ありがとね、空君。ん……」
「……え…?」
私は自分でも知らないうちに……空君の頬にキスをしていた。
「じゃあ行こう、空君」
「え……あ…う、うん…」
少し顔が赤い空君の手を掴み、外に向かう。多分私も真っ赤なんだろうな…
「さ、紗季?なんで手を繋いでるの?」
「気にしない気にしない♪」
そのまま私達は歩いていった
陽多Side
「紗季ちゃん達どうなってるかな?」
「恋愛フラグ立ったか?」
「立った可能性は大きいな」
そんな話をしながら紗季と空が出てくるのを待つ
「にしても今回も俺地味だったなぁ…」
「まだ気にしてたのかよ」
「私も地味だったよ…」
「またかお前ら!またなのか!?」
なんなんだこいつらは本当に
「はぁ…なんで戦ってるにも関わらず俺は目立てねえんだ…」
「目立つ必要ないだろうが…」
「いつかこの作品から消えそうで怖いんだが」
「お前はなにを言ってるんだ」
その時紗季達が中からでてきた。なぜか手を繋いで
「よし、あえて突っ込まずに帰ろうか」
「まぁここは空気読むか」
そうだ。明らかに二人がお似合いのカップルに見えてもなにも言うまい!
「ねえねえ空君。空君にとって紗季ちゃんはどういう存在?」
うおい香奈!空気読んでやれよ!
「もちろん大事な…」
「うんうん!」
「友達だよ!」
「あれぇー!?」
まさかの自覚無しかよ!
あ、紗季が地面に膝をついた
「わ!大丈夫か紗季?急にどうしたんだよ?」
「あはは…大丈夫だよ…まだチャンスはあるし…」
こりゃ大変そうだな…
「陽多君並の鈍感だったんだ空君…」
「おいこらどういう意味だそれは。俺のどこが鈍感だっていうんだ」
「それがわかってない時点で鈍感なのよ!」
「意味わからん!」
「また俺一人置いてきぼりじゃねえかああああ!!」
段々地味になっていく賢也が哀しい悲鳴を上げた
「あ~疲れた」
「まさかこんなに大変なことになるとはね…」
あの後賢也は自分の地味さに嘆きつつ途中で別れ、紗季と空は手を繋いだまま別れた。
で、今は二人だけの帰り道だ
「でもまあ無事に終わってなによりだ」
「あの人達また絡んできたりしないかな?」
「リーダーに脅しをかけといたから大丈夫だ」
「いつの間に!?」
空が倒した後、まだあのリーダー軽く意識があったから「次やったらマジでぶっ飛ばす」って言ったら恐怖で気絶した。
多分もう大丈夫だと思う
「にしても本当に疲れたな~。ふあああ…」
しまいには欠伸が出る始末だ。
そんなことをしてたせいで
「あっ!」
「おっと!悪い!」
前から走ってきた人とぶつかりかけた
「いいえ、気にしなくて良いわ」
その人は微笑みながら許してくれた。
見ると結構上品な身なりをしている。金持ちなのか?
でも年は同じくらいの青髪の少女だった
「それじゃあね」
その娘はそのまま走っていった
「もう陽多君。気をつけて歩きなよ」
「ああ、気をつける」
気を取り直して再び歩く
「でもさっきの人さぁ、お嬢様みたいな雰囲気だったね」
「俺もそう思ったぜ」
ん?お嬢様……最近どこかで聞いたような
「あ、家が見えてきたね」
「おお、やっと帰ってきたな~」
ここで疲労感が一気に吹き出し、考えるのをやめていた。
でもなんか引っ掛かるな…どこで聞いたかな…?