現実を見ましょう
蜜柑side
「……ということです、はい」
「なるほどな、事情は分かった」
唯花さんの一喝により、大人しくなった瑠美ちゃんと菜由華ちゃんは今までの経緯を唯花さんに話しました
「つまり、現実逃避だな?」
「えっ?」
「要は数学の成績が悪かったから、それから目を背けたいが為に数学の神様とやらを信じこもうとしてるんだろ」
狼狽える瑠美ちゃんに唯花さんは更に続けます
「いい加減に現実に戻ってこい暁。数学の神様など、どこを捜しても見つからないぞ」
「そ、そんな!」
「で、でもさっき香奈さんがおかしくなったのは確かなんですよ?あれは間違いなく呪いですよ!」
菜由華ちゃんの言葉に唯花さんは少し考えます
「むぅ……それについては本人に聞かないと分からないだろうな。直接楓実に聞いてみたらどうだ?」
「そうですね、電話してみましょうか」
私は香奈さんの携帯に電話します
『あ、もしもし蜜柑ちゃん?』
「はい、さっき振りですね香奈さん」
『さっきは急に別れちゃってごめんね』
どうやらすっかりいつも通りの香奈さんに戻っているようですね
「先程はどうしたんですか?急に豹変してましたけど」
『ああ……うん、たまに私ああなっちゃうんだ。色々あってね……』
ふむ、これ以上深く聞くのは止しましょうか
「そうですか。陽多さんは一緒ですか?」
『うん、今は気絶させて……じゃなくてちょっと眠ってるけど、一緒だよ』
「わかりました。では失礼しますね」
『うん、またね~』
私は香奈さんの物騒な発言を聞かなかった事にして、電話を切りました
「香奈さん、元通りになってましたよ。それにどうやら、先程のような豹変は今までもあったみたいです」
「え?ということは……」
「はい、呪いなんかじゃなかったってことですよ」
「………」
あ、菜由華ちゃんは段々こっちの世界に戻ってきてるようです。
後は……
「あ……あわわ……」
未だに現実に目を向けられないおバカさん一人ですね
「瑠美ちゃん」
「い、いやまだよ!数学の神様は絶対にいるんだから!」
「瑠美ちゃん」
「いる!いるんだって!ねぇオレンジ信じてよ!」
「瑠美ちゃん……」
「私、絶対に見つけ出すから!後はよろしくねっ!」
「瑠美ちゃんっ!!」
「っ!!」
瑠美ちゃんは恐る恐る私を見ます
「現実を見ましょう」
「…………………はい」
その瞬間、瑠美ちゃんの現実逃避は終わりとなりました
陽多side
『………と、まぁそう言う事で、瑠美ちゃんは落ち着きましたので心配ないですよ』
「そっか、わざわざ連絡ありがとな」
香奈との追いかけっこの後、気絶した俺は気がついたら部屋のベッドで寝ていた。香奈が運んでくれたのだろう。
そして、携帯が鳴り、蜜柑からの電話に出た。
で、瑠美の現実逃避が終わったことを俺に話してくれて、今に至るわけだ
『いえいえ、陽多さんも気になってると思って連絡しただけですよ』
「にしても瑠美のやつ、数学で俺に負けたからって現実逃避まですることはないと思うんだがな」
『いや、陽多さんに負けたって知ったら普通落ち込みますよ』
「おいこら」
俺、どんだけ馬鹿だと思われてんだよ!しかも年下の中学生に!
「でもよ、瑠美は大丈夫なのか?落ち着いたと言っても、まだ落ち込んでるんじゃないのか?」
『それは大丈夫です。ちゃんと手を打っておきましたから』
「手?」
『はい、だから心配しなくても大丈夫ですよ』
「……分かった」
正直少し心配だが、蜜柑を信じる事にしよう
『では、これで失礼します』
「はいよ、んじゃまたな」
俺は電話を切った
「あ、陽多君起きた?」
と、そこでタイミング良く香奈が現れた。
本当に良すぎるタイミングで
「香奈。お前俺の電話、盗み聞きしてたな?」
「ふえっ!?そ、そ、そんなことしてないよ~、やだな~」
「嘘は止めようぜ?バレバレだからな?」
「……はい、ごめんなさい」
ったく、少しは信用してほしいぜ
「安心しろ。蜜柑と電話はしてたが、変な話はしてないからな」
「うん、それは分かってるよ。瑠美ちゃん、大丈夫かな?」
「蜜柑は心配すんなって言ってたぜ」
「蜜柑ちゃんがそう言うなら……大丈夫だよね」
と言うわけで、俺達は瑠美の事はそれ以上気にしないことにした
瑠美side
「はぁ~……何やってんだろ私……」
オレンジに現実を突きつけられて、現実に帰ってきた私はあの後、唯花さんにたっぷり叱られた。
まぁ励ましてもくれたんだけどね。主に数学のテストの事で。
そんな唯花さんは頼れるお姉さんみたいな感じで、いつまでも名字で呼ぶのも嫌だったから名前で呼ばせてもらうことにした。もちろん唯花さんに許可を貰って
「頑張るしかないわよね……」
唯花さんに励ましてもらったものの、やっぱりいつもの元気が出ない。
そんな私は沈んだまま、家に向かっていた
「おーい、瑠美ちゃん」
と、沈んでいる私に声をかけてくるやつがいた。
この声は……
「……ショウ、何か用?」
「うわ、本当に元気ないね。大丈夫?」
ショウは心配そうな表情で私を見てくる
「ふふ、大丈夫よショウ。ちょっと……現実って残酷なんだなって思い知っただけだから……」
「うん、色々大丈夫じゃないね」
「というかショウ。あんた私が元気ないって知ってたっぽいけど、誰に聞いたの?」
「市川さんに聞いたんだよ。瑠美ちゃんが元気ないから励ましてあげてくれって」
オレンジ……あの娘はまた余計な事を……
「僕で良ければ悩みを聞くよ。何があったの?」
「……はぁ……悩みって程じゃないんだけどね」
私はショウに数学のテストの事を話した。彼は真剣な表情で私の話を聞いてくれた
「……って事なのよ」
「よし、事情は分かった。瑠美ちゃん、僕と一緒に数学の勉強をしよう」
「え?ショウと一緒に?」
突然の提案に私は驚いてショウの顔を見た
「分からない所は教えるからさ、勉強しようよ」
「……迷惑じゃないの?」
「迷惑なんかじゃないよ。瑠美ちゃんの為だもの」
……はぁ……そんな笑顔で言われたら断れないじゃない
「分かったわ。じゃあ今回はショウに甘える事にするわね」
「うん!じゃあ早速今から瑠美ちゃんの家に行こうか」
「はいは……って、えぇ!?わ、私の家でやるの!?」
「そうだよ」
何で当たり前みたいな感じなのこいつは!?
「ほらほら、行くよ瑠美ちゃん」
「ちょっ!?引っ張るんじゃないわよ!っていうか何でこんな事に~!?」
私はそのままショウと一緒に帰り、夜まで勉強を教わった。
ショウが帰った後も、私はやる気が出てきて勉強に集中する事ができた。
……これってショウのお陰なのかな?べ、別に感謝なんてしないけどね




