彼女?
陽多side
俺と香奈は目の前の二人の口喧嘩を何も言えずに見ていた。
一人は辰也、そしてもう一人は知らない娘。黒髪のショートへアの少女だ、ちなみに可愛い
「あ、あの~」
香奈がこの空気に耐えられなくなり、二人に声をかけた
「……辰也君の彼女さん?」
『違うわっ!!』
二人は同時に答えた
「違うの?」
「違う!彼女じゃねえよこんなやつ!」
「こんなやつとは何だ!お前は私を何だと思ってるんだ!?」
「説教マシン」
「き、貴様……!」
「お、落ち着け二人とも」
不味い、これ以上は流石に大喧嘩に……
「……でも、まぁ大切な存在ではあるな」
「っ!!こ、このタイミングでそんなこと言うなんて卑怯だぞ……」
「おいおい、何真っ赤になってるんだよ」
「う、うるさい!」
………何だろう……本当にこの二人付き合ってないのか?
「そ、それより辰也。この二人は?」
少女が俺達を見ながら言った
「ああ、俺の友達だよ」
「始めましてだな。俺は組谷陽多だ、よろしく」
「私は楓実香奈。よろしくね」
「私は古村 唯花だ。こちらこそ、よろしく頼む」
古村か。にしても……
「本当に彼女じゃねえのか?」
「ち、違うと言っているだろう!」
俺達から見たら完全に彼女にしか見えないんだがな
「ねぇ、古村ちゃん?」
「む?何だ?」
「辰也君の事は好きなの?」
「ぶっ!?」
香奈の質問に顔を真っ赤にする古村
「す、す、好きだぞ?友達として!」
「男の子としては?」
「そ、それは……」
「ないない。唯花に限ってあり得ないって」
「な、何故辰也が答えるんだ!」
辰也は古村が自分に好意を向けていないと思っているようだが……
「というか、恋愛すら興味が無いんじゃないか?」
「だ、だから辰也は勝手に答えるな!私だって女だぞ!?す、少しは興味あるさ」
「……好きなやつとかいるのか?」
「さぁな」
うーむ、本当にカップル……もしくは夫婦にしか見えんのだが
「楓実、お前はどうなんだ?組谷の事は……」
「好きだよ。もう付き合ってるし」
「そうだったのか?まぁ薄々そうじゃないかと思ってたがな」
「ラブラブオーラ出てるしな」
出してるつもりはないんだが!?
「ねぇ皆。そろそろ行かないと遅刻だよ?」
「む、もうこんな時間か。組谷と楓実は私達とは違う学校だよな?」
「うん、ここでお別れだね」
「では、また機会があったら会おう。行くぞ、辰也」
「へいへい」
そして、二人は歩いていった
「……本当に、カップルにしか見えないね」
「だな、あれで付き合ってないってのも凄いよな」
「ですよね、私もそう思います」
「だよね~……って蜜柑ちゃん!?」
「どうもです」
後ろを振り向くといつの間にか蜜柑がそこにいた
「蜜柑ちゃんは古村さんの事知ってたの?」
「ええ、お兄ちゃんの数少ない親友ですからね」
「数少ないって言ってやるなよ……」
「私は良い人だと思うんですけどね。唯花さん、お兄ちゃんといつも仲良さそうですし」
どうやら、妹の蜜柑から見てもあの二人はお似合いに見えるらしい
「さっきみたいな口喧嘩もいつも通りなんですよ」
「でも、二人とも本気じゃなかったよね」
正直、俺から見たら夫婦喧嘩にしか見えなかったんだが
「お兄ちゃんも鈍感ですよね。唯花さんの気持ちに全く気づいてません」
「辰也君、恋愛とかはさっぱりって感じだもんね」
「そうなんですよね~」
「ふむ、まぁ外野が色々言っても仕方ないよな」
言ってどうにかなるもんじゃないしな
「さて、そろそろ行こっか。このままだと遅刻しちゃうよ」
香奈が言った
「俺としては遅刻しても構わないんだが?」
「ですね~、私も遅刻しても問題ないです」
「いや、駄目だからね?」
結局、真面目な香奈に逆らえず、俺達は渋々登校することになった




