転校生…じゃなくて来れなかっただけ?
「おはよう~」
「おはよう陽多君」
俺が居間に行くと既に香奈が起きていた。まぁ珍しいことでもないが
「明日は日曜日だね~」
「ああ…やっと一日の休みが来るんだな…」
今日は土曜日だ。学校はあるが午前中に終わる。それが終われば晴れて休日到来だ
「んじゃ朝飯にしますか」
「うん」
「ねえねえ、今日うちのクラスに転校生が来るって噂だよ?」
「転校生だぁ?」
登校中に合流した紗季の言葉に俺は違和感しか芽生えなかった
「まだ一学期が始まったばっかりだぞ?しかも一年生なのに転校って早くねえか?」
「あくまで噂だからね。本当かどうかも疑わしいよ」
「さすがに今の時期に転校生はないと思うんだけど…」
香奈も苦笑いしながら答えた
「ま、真実は学校に行ってからだな。楽しみにしとこうぜ」
少しでも楽しみがないとやってられん
1-3教室。いつも通りのメンバーで集まって話す
「転校生?いやさすがに早いような」
「やっぱり賢也もそう思うか」
「なんか誰かが話してたんだけど…やっぱりデマかな?」
「これから分かると思うけど…転校生はないんじゃないかな?」
ん?そういえばなにか忘れてると思ったら担任の先生の紹介がまだだったな
「あ、チャイム鳴った」
「席戻るか」
そしてチャイムが鳴った少し後、強そうオーラをバンバン放っている男が入ってくる。
この人が担任の岩田玄司先生。見るからに体育教師だとわかるような人だ
「全員席に着け!今日はHRを始める前に話がある」
ん?まさか本当に転校生か?
「実はうちのクラスにわけあって今日まで学校に来れなかった生徒がいてな。そいつの紹介をする」
おお、微妙に合ってたんだなあの噂。転校生ではなかったけど
「じゃあ入って来い!」
教室のドアが開かれて一人の男子生徒が入ってくる。黒髪のツンツン頭が特徴的な男子だな
「じゃあ名前を黒板に書いて自己紹介をしてくれ」
「はい!」
すると黒板に名前を書き、こっちに向き直る
「俺、海風空って言います!呼ぶときは空って呼んでください!ってことでこれからよろしく!」
明るいやつだな。馴染みやすそうだ
「じゃあ海風、どこか空いている席に座ってくれるか」
「わかりました」
お、俺の隣が空いてるな。
ちなみに何故かというと、以前は俺に対して男子の妬みの視線が酷く、近くの席だとそれがもろに飛んで来ていたから俺の席の周りは不人気だったんだよな…。
なんにせよ隣に誰か座るのは嬉しいな。授業中の話し相手にもなるし。
そんなことを考えている間に隣の席に着いたようだ
「えっと、名前はなんて言うの?」
「組谷陽多だ。よろしくな」
「うん!よろしく!」
いや~隣が空で良かったかもな。スゲー話しやすいわ。
後は授業をくそ真面目に受けるタイプじゃなきゃ良いがな
朝のHRが終わり、俺と空の周りにいつもの三人がやってきた
「空君で良いんだよね?私、楓実香奈。よろしくね」
「私は種宮紗季だよ。よろしく!」
「木崎賢也だ。よろしくな空」
「よろしく!三人共!」
とりあえず簡単な自己紹介を終えたみたいだな
「空君って今日まで学校来れなかったんだよね?なにかわけがあったの?」
「実は最近一人暮らしを始めてさ。こっちに引っ越してその後の準備とかがいろいろあったんだよ」
「へぇ~そうだったんだ」
「じゃあせっかくだから俺達で町の案内でもしてやるよ」
俺達全員帰宅部だし暇だからな!え?威張れることじゃない?
「本当!?助かるよ、ありがとう!」
「陽多君にしては良い提案だね」
「俺にしてはってなんだよこら」
「確かに陽多ってあんまりまともな意見言わなさそうだもんな」
「お前まで言うか空!」
やっぱり馴染みやすいな
「そういえば空。今まで進んだ分の授業の内容とか大丈夫なのか?」
賢也が聞く。いつも寝てるお前が言えることかそれ
「うーん、分かってても分かってなくても大して変わんないし大丈夫だよ」
「駄目だからね!?」
「えー?」
よしよし、どうやら空は勉強に関しては俺と同類みたいだな。授業中話し放題かもな
一時間目の授業が始まり、数分して賢也はすやすやと眠り始めた。なんでいつもばれないんだこいつ…。
で空の方は…
「レベル上げでもしようかな……」
携帯ゲーム機起動してやがる!初日から良い度胸だなこいつ……
(香奈にはばれてないか…?)
そう思い香奈を見ると
「………ふふふっ……」
(こ…怖ぇー!)
完全に怒っている。満面の笑みだけど目だけ笑ってないし!
(こりゃ休み時間が大変だ…)
次の休み時間は修羅場となるだろう。
とりあえず俺はとばっちりを喰らわないよう真面目に授業を受けたのだった