目撃
空side
学校の帰り道、俺は紗季と歩いていた
「はぁ…今日は陽多のせいで酷い目にあった…」
「あはは…空君のせいでもあるけどね」
苦笑しながら俺に言う紗季
「バレなきゃ良いんだよバレなきゃ」
「そういう問題じゃないよね?」
「明日からは陽多にもバレないようにしなきゃ…」
「聞いてないし!それどころか明日からもゲームしようとしてるし!」
「え?何か言った?紗季」
「もう良いよ…」
途中から明日の作戦を考えてしまった。いけないいけない
「空君は本当に懲りないよね。また香奈ちゃんに怒られるよ?」
「次からはしくじらないから大丈夫!」
「だからそういう問題じゃ……って?」
「どうしたの?」
紗季が言葉を止めたので前を見てみると…
「辰也?」
「もう一人いるよ」
紗季の言う通り、もう一人誰かいる
「あれ?あのツインテールの娘…昨日の娘じゃない?」
「あ、本当だ。辰也の知り合いだったんだ」
辰也と少女は二人で仲良く話しているようだった
「話しかけてみるか」
「うん」
俺達は二人に近づく
「おーい、辰也」
「ん?よう空、紗季」
「あれ、貴方達は昨日の」
二人が俺達に気づく
「あれ?お前空達のこと知ってるのか?」
「うん、ほら昨日ナンパされそうになったって話したでしょ?その時に助けてくれた人達だよ」
「おお、それって空達の事だったのか。ありがとな、礼を言うぜ」
「い、いやぁ俺は足止めしか出来てないよ。捕まえたのは陽多だしね」
しかも足止めじゃなくて、ただぶつかっただけだしね
「陽多も協力してくれてたのか。さっき会ったときに礼を言えなかったな…」
「仕方ないよ。私達が名乗らなかったのが悪いんだし」
そういえばこの娘の名前も聞いてなかったよ
「じゃあ自己紹介しようか。俺は海風空。空って呼んで良いよ」
「私は種宮紗季。私も紗季って呼んでほしいかな」
「私は市川蜜柑と言います。蜜柑と呼んでください」
ん?市川?
「もしかして蜜柑ちゃんって辰也君の…」
「はい、妹です」
へぇ~辰也の妹なんだ
「何だか凄い偶然だね。ナンパから助けた娘が辰也君の妹だったなんて」
「私もお兄ちゃんの知り合いだとは思いませんでしたよ。そういえばお兄ちゃんとはどうやって知り合ったんですか?」
「えっと…それは…」
純粋に知りたいという感じの表情でこっちを見てくる蜜柑。
辰也の方を見ると
「話しちまって良いぜ。というかあの事件は家族全員が知ってるしな」
そういえばあの事件の後に辰也は改心したんだもんね
「わかったよ。それじゃ話すね」
というわけで俺は紗季の誘拐事件の時の事を話した
「そうですか…お兄ちゃんが誘拐したのが紗季さんだったんですね」
「うん、まぁね」
「ごめんなさい、お兄ちゃんのせいで怖い目にあわせてしまって…」
蜜柑は頭を下げた
「ううん、良いの。もう気にしてないからさ、頭を上げて」
「ありがとうございます。紗季さんは優しい人ですね」
頭を上げた蜜柑が笑顔で言った
「そ、そうかな…」
「そうだよ、紗季は優しいよ」
「な、何で空君が言うの!」
「……お前らもう付き合えば良いのに」
辰也が何か呟いたがよく聞こえなかった
「でもその話だけだとお兄ちゃんと仲良くなった理由が分からないんですが…」
「それはまた別の話なんだ。でも流石に勝手に話せないな。あれは俺達は当事者じゃないし」
優里に許可を取らないと話せない。あの家出騒動については
「そうなんですか…わかりました。その話は今は聞かないことにします」
「うん、ところで二人は何してたの?」
「これから二人で何するか話してたんですよ」
「久し振りに二人で過ごす時間が出来てきたからな」
そっか、最近までは不良だったから兄妹で過ごす時間が無かったんだ
「それじゃあ邪魔しちゃ悪いね。長々と話しちゃってごめんね」
「いや、どうせ俺達も暇だからな。良い時間潰しになったぜ」
「はい、お兄ちゃんの話も聞けましたしね」
「俺にとっては黒歴史の話だったけどな」
「じゃあそろそろ行くよ」
「うん。またね二人とも」
「おう、またな」
「また会いましょうね」
俺と紗季は二人と別れて歩きだす
「礼儀正しい妹さんだったね」
「俺、敬語苦手だから感心しちゃったよ」
「これからは仲良く過ごしてほしいね」
まぁ辰也がまた不良に戻ることはないだろうけどね
「大丈夫だよ。何か事件が起こるわけじゃないしね」
「そうだね」
そして俺は紗季と別れ、家に帰った。
最後の俺の言葉がフラグだと気づいたのは翌日の事だった




