表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/156

ヤンデレの原因

NoSide


「はぁ…はぁ…はぁ……」


楓実香奈は走りつづけていた。

なぜか?ばれてしまったから。今まで隠していたことが、ついに


「はは…もう…駄目だ…」


彼女は走るのをやめて歩き始めた。

だが目的地は決まっているようだ


「終わらせよう……陽多君のためにも…私は…」







――死んだほうが良いんだ。

彼女はそう呟いた










一方、賢也、優里、紗季、空は必死に香奈を捜していた。

学校や自宅も回った。だが全く見つからない。

最終的に四人は星雲学園の前に集まっていた


「駄目だ…!どこにもいないよ!」


「見落としがあるのか…?」


すると優里がハッと気づいた


「今日最後に行った交差点よ!陽多君が倒れた場所!」


「そっか!陽多君のトラウマの場所にいるかもしれない!」


四人は再び、新たな目的地に向かって走り出した










四人は交差点に到着した。そして…


「あっ!香奈ちゃん!!」


「やっぱりここだったか!」


道路の向こうに一人で立っている香奈の姿があった


「香奈!無事で…」


「……来ないで」


「なっ!?」


香奈は取り出したナイフを自分の首に向ける


「か…香奈…ちゃん…?」


「………」


無言のまま香奈はナイフを離さない


「……香奈ちゃん、まさか自殺をするためにここに来たのかしら?」


「……うん…」


「そんな…!なんで…」


優里は冷静を装っているが冷や汗が流れるのは隠しきれない


「香奈ちゃん……なんでなの?なんで自殺なんか…」


「……わかった、教えてあげるよ」


香奈は真相を語り始めた


「私のお父さんとお母さんはね、この交差点で死んだんだよ」


『!!』


四人は言葉が出なくなった


「あれは小学4年くらいの時だったかな。私の両親は陽多君のご両親の会社に勤めてたの」


「陽多の両親の会社に?」


「うん。それであの日、私は陽多君と遊ぼうかと思ってあの公園に来た」


香奈が示したのは交差点の近くにある公園


「……結局陽多君に会えなかった私は公園から出た。その時陽多君と私の両親がいるのが見えたの。私は近づこうとした。だけど…」


香奈は一旦言葉を切って続けた


「……陽多君に向かって大型の車が突っ込んできた。多分居眠り運転かなにかで。その時…私の両親が陽多君を庇って轢かれた」


「そんな…!じゃあ香奈ちゃんのお父さんとお母さんは…」


「うん。その時に亡くなった」


辺りは夜の静けさに包まれたまま無音が続く


「私はその時…逆恨みだとわかってても陽多君を恨んだ。陽多君がいなければお父さんとお母さんは死ななかった。陽多君の会社に勤めていなければ…ってね」


「じゃあ香奈ちゃんが暴走した時の陽多君への殺意はそれが原因なのね?」


「その通りだよ。私は未だに陽多君への恨みを捨てられてないってことだと思う」


「でもおかしいわ。その時に同じくらい陽多君への愛情も感じたのよ」


「………それは」


しばらくして香奈は口を開いた


「……私が陽多君を好きになったからだよ」


香奈は片手で顔を覆う


「あれだけ恨んだ陽多君を!いつの間にか好きになっていた!だから…どうすれば良いかわからなくなった…」


香奈は苦しんでいた。陽多への殺意と好意、二つの想いによって


「それであのヤンデレができたわけだな。あれは陽多に抱いている二つの想いが爆発した状態だったわけだ」


「そう…私はこんなに苦しんで陽多君を好きになっているのに、他の女の子に惹かれる陽多君が許せなくなって…」


賢也の言葉に頷きながら答える


「でも……それも今日までだね。こうして皆に知られた以上は…」


香奈は再びナイフを両手で持つ


「……こうすれば皆が私を怖がらなくすむ。陽多君も苦しめなくてすむ。だから…ここで死ぬ」


「ふざけんなよっ!!」


「!?」


叫んだのは空だった


「どうして俺達が怖がるんだよ!友達だろ!?怖がるわけない!!」


「そうだよっ!私達は香奈ちゃんを嫌ったり怖がったりしない!!」


空の言葉に紗季が続いた。

さらに


「香奈、本当に俺達がお前を怖がると思ってんのか?いろいろ世話になった大事な親友のことを?んなわけねえだろ!」


「香奈ちゃん、過去から逃げちゃ駄目。今を精一杯生きるのよ。だから自殺なんて考え、捨てなさいな。私達はずっと香奈ちゃんの友達よ」


賢也と優里も言った。

皆の言葉は確実に香奈に届いていた。

……だが


「本当に…ありがとう…皆…。私…皆に…ぐすっ…皆に会えて良かったよ…。でも…陽多君のためにも…これが一番なの…だから…」


――さよなら


香奈はそう言って自分にナイフを刺そうとする


『!!』


そして香奈の身体にナイフが刺さる。










「おいおい勝手に決めんなよ」










…はずだった。

聞き慣れた声が聞こえなければ


「あ…!あれは…」


全員の見ている方向には一人の少年。

そいつはこっちに歩いてきた


「ったく目覚めて早々事件とはな。呪いかよ」


軽口を叩きながら現れたその少年は…


「陽多…君…!」


眠りについていたはずの組谷陽多だった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ