記憶
放課後、俺達は六人で下校する
「はぁ…学校ってなんでこんなにも体力を持って行くんだろうな…」
「大袈裟だよ陽多君」
香奈に言われるが大袈裟じゃないと思う
「ねえ二人共、聞きたいことがあるんだけど良いかしら?」
「どうした?改まって」
優里は真剣な表情で言う
「以前香奈ちゃん、暴走したことがあったじゃない?その理由を聞きたいのよ」
「あ!そういえば俺も知らないよその理由!」
……そうか、優里と空には話してなかったな
「そうだったね。二人にもちゃんと話しておかないとね」
「ああ、じゃあ説明する。実は…」
俺は香奈のヤンデレについて、そして俺の記憶喪失について二人に説明した
「そうだったのか…知らなかったよ…」
「香奈ちゃんも大変だけど陽多君も子供の頃の一部の記憶を失ってるのね。しかも思い出そうとすると頭痛に襲われる…」
「まぁ最近は思い出そうとしてないからなにもないんだが」
優里はさらに考える
「なんらかのトラウマになる出来事が過去に起こったのは間違いないようね。香奈ちゃんはなにも知らないのかしら?」
「うん、陽多君が抜けてる記憶って私のいなかった時の記憶みたいだから」
「そう……」
俺も思い出したいとは思っているんだが……駄目だ下手に思い出そうとするのは危険だ
「じゃあ陽多と香奈が子供の頃よく行ってた所とかに行ってみようよ!手がかりがあるかもしれない!」
空が言った。そういえばもう昔遊んでた所とか全然行ってないんだよな
「そうだな…暇だし行ってみるか」
「………」
「香奈?どうした俯いて」
「う、ううん!なんでもないよ!」
「?」
なんか嫌な思い出がある場所でもあるのか?
「で、皆で行くのか?」
俺は皆に聞く
「ああ、俺もどうせ暇だからな」
「私も行くよ。陽多君の記憶を取り戻す手伝いもしたいし」
「当然私も行くわよ」
というわけで六人で思い出巡りツアーに出発となった
「……ここで最後か」
「この公園で良く遊んだよね」
結局いろんな所を回ったが収穫は得られなかった
「いろんな思い出が蘇ってきたが肝心な部分は全然駄目だ」
「う~ん、まずどこで起こったかわからないと手がかりは見つからないよね」
「名案だと思ったんだけどなぁ…」
まぁ空の気持ちは嬉しかったけどな
「そろそろ公園から出るか」
「そうだね」
そして俺達は公園を出た
「おっと信号待ちだな」
交差点の信号が赤なので待つ……
「………ぐっ!?」
その瞬間俺は頭痛に襲われる
「陽多君!?大丈夫!?」
「しっかりしろ!」
く…今までの頭痛とは比べものにならないぞこれは…!
「う……ああああああ!!」
皆の声が遠い……意識が…なくな…る…
優里Side
突然の頭痛に苦しんでいた陽多君がついに意識を失い倒れてしまった
「陽多君!!」
「救急車を呼ぶわ!」
私はすぐに携帯で救急車を呼ぶ。
後は来るまでの間に陽多君の状態確認ね
「賢也君、陽多君の状態をみてくれるかしら?」
「了解だ」
香奈ちゃんは涙を流しながら陽多君の様子を見守っている。
紗季ちゃんと空君もとても心配しているようね
「……気を失ってるだけっぽいが…目を覚ます気配がないな」
「そんな…!」
「落ち着いて香奈ちゃん」
「でも!陽多君がっ!!」
「落ち着きなさい!」
「!!」
私は錯乱している香奈ちゃんを落ち着かせる
「ね?陽多君を信じてあげましょう」
「……うん」
その後救急車が来て陽多君は病院に運ばれた
陽多君の身体に異常はなかった。だけど陽多君は未だに目覚めない。
医者もいつ目を覚ますのかわからないためどうしようもないらしい。
そして今、私達は陽多君の眠っている病室に集まっていた
「……俺、余計なことしたのかな…」
「空君?」
「俺が無理矢理陽多の記憶を戻させようとしたから…こんなことになったのかな…」
「それは違うよ」
空君の言葉を紗季ちゃんが否定する
「陽多君だって嬉しかったはずだよ。空君が心配してくれて、こうやって行動してくれたことをね」
「でも…」
「じゃあ陽多君が目覚めた時に聞こう。余計なことだったのかどうかをね。まだわからないんだから自分を責めないで。ね?」
「ああ…」
香奈ちゃんは全然喋らなくなっていた。陽多君を見つめたまま微動だにしない
「……賢也君、ちょっと良いかしら」
「なんだ?」
私は賢也君を連れて外に出る
「この話はまだ賢也君以外には話さないつもりだから誰にも話しちゃ駄目よ」
「なんの話なんだよ?」
「……実はね、前に香奈ちゃんが暴走状態になった時に気づいていたのだけれど」
私は話しても良いかためらった。でもここまで来たら話さないと
「……その時の香奈ちゃんからは陽多君への愛情が感じられたの。だけど…同じくらい明確な殺意も感じた」
「殺意…?」
「ええ。あれはヤンデレじゃ済まされない。確実に陽多君を殺そうともしていたわ」
「………」
やっぱり賢也君は冷静に聞いてくれた。
この話を賢也君に話したのは一番冷静に聞いてくれそうだからなのよね
「何故殺意を向けているのかはまだわからないけど…私は香奈ちゃんが陽多君の抜けている記憶の秘密を知っている気がするの」
「マジかよ…」
だとしたら何故隠しているのか?やっぱり陽多君に殺意を向けることと関係あるのだろうか?
「良い?この話は誰にも…特に香奈ちゃんには秘密「……そっか、気づいてたんだ…」…え…?」
「か、香奈!?」
慌てて横を見ると俯いた香奈ちゃんがいた。
しまった…!話に夢中になりすぎて気づけなかった…
「………」
「香奈ちゃん!」
香奈ちゃんはなにも言わず走っていってしまった
「追うぞ!」
「ええ!」
空Side
「香奈ちゃん達どこいったんだろうね?」
「トイレかな?」
優里と賢也が出ていった直後、香奈も出ていき病室には俺と紗季と陽多だけになった
「にしても呑気な顔で寝てるなぁ」
「ふふ、ホントにね」
本当に、今にも起きそうな顔で陽多は眠っている
「……そろそろ暗くなってきたね。帰ろうか」
「うん、でも皆が…」
その瞬間、病室のドアが勢いよく開けられた
「わっ!?賢也、優里、どうしたんだよ?血相変えて」
「二人共!一緒に来てくれ!香奈が行方不明になった!」
「「!!」」
俺達は顔を見合わせ、すぐに立ち上がる
「手分けして捜すぞ!」
俺達は病室を飛び出していった




