三人と一人&デート中に……
歩夢side
蜜柑ちゃんからの突然の誘いを受けたぼくは、早目に集合場所にやって来ていた
「……まだ誰も来てないな」
それを確認したぼくは、一人で待つことにした
(それにしても、まさか出会って二日で遊びに行くほど仲良くなるとは思わなかったよ……)
普通、異性の友達といきなりそんなことにはならない。となると、ぼくと蜜柑ちゃんは意外と相性が良かったのかな?
(……何考えてるんだぼくは)
我ながら自惚れ過ぎだろ。ぼくなんか本来は蜜柑ちゃんと会話することすらおこがましい存在なんだぞ。
……まぁ、友達になったからには、変に緊張しないで仲良くしていくつもりだけどね。
不味いな、一人でいると変なことばっかり考えちゃう
(皆、今日は私服なんだよね……)
日曜日なんだから当たり前なんだけどね。ぼくは女の子と遊ぶって事で、一番オシャレな服を引っ張り出して来たけどね……何を張り切ってるんだろうって話だ。
ああもう、また変な考え事をしちゃったよ。早く誰か来ないかな
「あれ?歩夢君、早いですね」
と、誰か来たな。まぁ声で誰か分かったけど
「おはよう、蜜柑ちゃん」
「おはようございます」
ぼくは何とか冷静に挨拶する。
え?内心はどうなのかって?冷静さを保つのに精一杯だよ!いつもと違う蜜柑ちゃんの服装を見て、動揺しまくってるよ!何でこの娘はこんなに可愛いんだろうか……
(落ち着け……私服の女の子なんて、街中で何度も見かけた事があるじゃないか……!)
ぼくは自分に言い聞かせながら、天使……もとい、蜜柑ちゃんと話をする
「歩夢君、オシャレさんなんですね。カッコいいですよ」
落ち着け落ち着け落ち着け。これはお世辞だ、社交辞令だ、そうに決まってるだろ、うんそうだ、だから何も考えるなっ!!
「あはは、お世辞でも嬉しいよ、ありがとう。蜜柑ちゃんの私服もよく似合ってるね、可愛いよ」
「可愛くなんてありませんって、歩夢君の方が似合ってますよ」
いや、君の方が似合ってる。絶対に、神に誓っても良い。
そんな風にお互いに誉めあっていると、西原さん達がやって来た
「おはよう、蜜柑ちゃん、黒川君」
「……おはよう、二人とも」
やって来た二人と挨拶を交わす。昨日、蜜柑ちゃんは羽塚さんも誘うって言ってたけど無事に誘えたみたいだ
「二人とも早いね。もしかして待たせちゃったかな?」
「いえ、そんなに待ってませんよ」
時間を見てみると、待ち合わせ時間よりまだ5分程前だった。むしろ、ぼくが早すぎた気がしてきたよ
「それで二人とも?さっきまで二人っきりだったんだよね?何の話をしてたのかな?」
「いや、特には……ただお互いの服装を誉めあってただけだよ」
そういえば、西原さんと羽塚さんの私服も初めてだ。
二人も凄く可愛くてよく似合ってるんだけど……おかしいな、今回は何で動揺しなかったんだろう?蜜柑ちゃんには凄く動揺したのに……私服姿の蜜柑ちゃんを見て慣れちゃったのかな?
「他にはないの?例えば……」
「……菜由華ちゃん。そこまでにした方が良いと思うよ」
更に何かを言おうとした西原さんを羽塚さんが静かに止めた
(菜由華ちゃん。二人の関係が気になるのは分かるけど……踏み込み過ぎるのは良くない)
(う……そうだね。ごめん)
何だ?二人でこそこそと何を話してるんだろう?
「ごめんごめん。それじゃあ行こうか」
「まずどこに行きましょうか」
ふむ、まぁ良いか。さっきの事は忘れて今は楽しく遊ぶ事にしよう
「デパート行こう!今日ね、新作のゲームが出るんだよ!」
「西原さん、ゲーム好きなの?」
「大好きだよ!ゲームがあれば生きていけるよ私は!」
西原さんはとても楽しそうにゲームについて話している。
へぇ、西原さんってゲーマーだったのか。ぼくもゲームは好きだから話が合うかもしれないな
「じゃあ他に行きたい場所も無いですし、デパートに行きますか」
「ぼくはそれで良いよ」
「……わたしも異議なし」
「よーし!じゃあ行こう!」
ハイテンションの西原さんに続いて、ぼく達も彼女に着いていった
少し歩いてデパートに到着したぼく達は、早速西原さんに引きずられるようにゲームコーナーに来ていた
「ここ、ちょっとトラウマになっちゃいましたよ……」
ゲームコーナーに来た時、蜜柑ちゃんがそう呟いた
「トラウマって?」
ぼくが気になって聞くと、蜜柑ちゃんはちょっと困ったように笑いながら答えてくれた
「前に、友達がここで居なくなった事がありまして。あんまり離れて行動するのは嫌なんですよ」
居なくなった?迷子にでもなったのかな?
「あはは……そうだね。じゃあ皆で一緒に行動しようね!」
西原さんも苦笑しながら言った。
どうやらあまり触れられたく無いことのようだ。これ以上聞くのは止めておこう
「……わたし、ゲームってやったことない」
「ええぇ!?そうなの森姫ちゃん!?」
羽塚さんの言葉に、西原さんが物凄く驚く
「う、うん……そうなの」
「ゲームをやったことないなんて……!人生の9割は損してるよ!」
「そ、そんなに……?」
「「いや、9割は大袈裟だよ(ですよ)」」
あ、蜜柑ちゃんとツッコミが被っちゃった
「大袈裟じゃないよ!よし、森姫ちゃん。私が良いゲームを紹介してあげるよ」
「……お願いします」
こうして、西原さんのゲーム紹介が始まるのだった
「……って感じかな。どう?気に入ったのはあった?」
あれから30分くらい、西原さんは一生懸命羽塚さんに色々教えていた。
ぼくと蜜柑ちゃんは、勝手にゲームを見て回ってたけどね
「……色々と教えてくれてありがとう。わたし、興味……出てきたよ」
「本当!?」
どうやら西原さんの紹介は無駄じゃなかったようで、羽塚さんはゲームに興味が湧いてきたようだ。
でも……
「よし!そうと決まったらどのソフトを買おうか決め……」
「ま、待って……まずはゲーム機を買わなきゃ……」
「そ、そうだったーっ!私とした事が……!」
ということで、ゲーム機を買うほどのお金を持ってきてなかった羽塚さんのゲーム初購入は泣く泣く延期となった
「とりあえず、お腹も空いてきたしさ。お昼にしない?」
時間も丁度お昼時だし、ぼくは皆にそう提案してみた
「そうですね。そろそろお昼にしましょうか」
「でも、どこに食べに行こうか?」
このデパートの中にも、食べられる場所はいくつかある。屋上にはフードコートもあるしね
「皆は何か食べたいものとか無いの?」
「私は何でも良いですよ」
「うん、私も特にこだわりはないよ」
「……シュークリーム食べたい」
「それ、お昼じゃなくてデザートだよね」
皆、何でも良いみたいだね。じゃあフードコートでも問題ないかな。あそこなら何でもあるし……多分シュークリームも
「うん、分かった。じゃあ屋上に行こうよ。早く行かないと混んじゃうからさ」
「そうだね」
というわけで、ぼく達は屋上に移動することになった……のだが、ぼくはこの時忘れていた。
この町では、何故かナンパが多いという事を……
「君達可愛いねぇ~、中学生?」
「どう?俺達と遊ばない?絶対楽しいよ」
案の定、屋上に行く途中でチャラチャラした男の人二人に捕まってしまった。
さて、どうしようかな……
「いえ、結構です。私達は今でも楽しいので」
「ごめんなさい。断らせてもらいます」
「……お気遣いなく」
(うわ、あっさり断ってるし)
迷いなく男の人達に言い放つ三人。
しかし、それでも彼らは諦めないようだ
「え~?良いじゃん!行こうぜ!」
「悪いようにはしないからさ!な?」
「えっと……ですから……」
……はぁ、仕方ない。このまま黙ってるのは流石にどうかと思うし、ぼくも説得に入ろうか
「あの、三人も嫌がってますし、諦めて他の娘を誘ってみたらどうですか?」
ぼくが会話に入ると、男の人二人はぼくを睨み付けた
「ああ?てめえには用はねえんだよ」
「そうだそうだ。早く失せろよ」
「いえ、そう言われましても……」
ここではっきりと言っておこう。ぼくは今まで喧嘩をしたことなんて無い。だから、どうにかしてこの二人を説得して諦めさせないといけないんだ。
しかし、どうやら彼らは短気な性格だったようで、邪魔をするぼくに対して苛立ちが強くなっているようだ
「うぜえんだよ!てめえはどっか行け!」
「ぼくは彼女達の友達なんです。ですから……」
だが、ぼくの言葉は最後まで言わせてもらえなかった
「うるせえんだよ!!」
「うわっ!」
何故なら、喋ってる途中で思いっきり顔を殴られたから。
いたた……いきなり殴られたからちょっと吹っ飛んじゃったよ……
「歩夢君っ!大丈夫ですか!?」
そんなぼくを、蜜柑ちゃんが真っ先に受け止めてくれた
「ちょっと!もう止めてくださいよ!」
「最低。……早く消えて」
西原さん達が抗議するが、男の人二人は笑いながら答えた
「はははっ!悪い悪い、つい手が滑っちまった」
「まぁ良いじゃん。そんな奴放っといて俺達と行こうぜ」
どうやらまだ諦める気はないようだ。やれやれ、どうしようか……。
と、その時だった
「おいおい、何の騒ぎだ?」
さっきの二人とは違う男の人の声が聞こえた
数分前 陽多side
「ここに来るのも久し振りだね~」
「だな、買い物とかもいつもは近くで済ましちまうからな」
俺達は次の目的地、デパートにやって来ていた。
買い物っていう目的もあるが、その前に……
「香奈、先に昼飯にしねえか?」
「良いよ。私もお腹空いたからね」
腹も減った俺達は、デパートの中の飲食店を適当に見て回る事にした
「っていっても、どこでも良いんだよな。食えるところなら」
「まぁね。私も好き嫌いとかはないしね」
「んじゃ、のんびりと店を……」
探そうぜ、と俺が言おうとした時だ
「うるせえんだよ!!」
ちょっと離れた所からこんな声が聞こえた
「な、何かあったのかな?」
「喧嘩か何かじゃねえの?」
「ちょっと見に行ってみようよ」
「おいおい、これじゃただの野次馬だな」
と、言いつつも。野次馬根性に釣られた俺達は声が聞こえた方に行ってみた
(さて、不良の喧嘩だったら早く離れた方が良いよな……?)
しかし、声が聞こえた現場に着いた瞬間、俺のそんな考えは吹っ飛んだ。
何故なら、そこには見覚えのある中学生達がいたからだ。
恐らく殴られたのであろう黒髪の男子を受け止めている蜜柑。
そして、二人の男に抗議している菜由華と森姫。どうやら、あいつらの内のどちらかがあの男子を殴ったみたいだな
「……陽多君」
「ああ、分かってる」
当然、こんな光景を見た俺は黙っていられる筈もなく、声をかけながら男二人に近寄って行った
「おいおい、何の騒ぎだ?」
俺の言葉に、菜由華が驚いた表情で、森姫は無表情のまま振り返る
「よ、陽多さん!?」
「……凄い偶然だね」
一方、男二人は突然登場した俺を睨み付けてくる
「何だてめえは?部外者は引っ込んでろよ。怪我するぜ」
「部外者じゃねえんだよなぁ。俺、そいつらの知り合いなんだよ」
「ああそうかよ。何でも良いから引っ込んでろっての!!」
どうやら怒りっぽいらしい男が、俺にいきなり殴りかかってきた。
ま、でも……
「遅いなおい」
「なぁ!?」
俺はそれをちょっと首を横にずらすだけでかわす。
こいつ、見た目だけ悪ぶってるタイプだな。喧嘩とかはほとんどしたことが無いんだろう
「んじゃお返しだ!」
「ひっ!?」
俺は、殴ってきた男の顔面……のギリギリ横に拳を突き出した
「今回はこれで済ましてやるよ。でも、次あの娘達に手を出したら……分かるよな?」
俺が少し笑いながら言うと、男二人は面白いように震えながら逃げ出した
「お、覚えてろよてめえ!」
「おう、分かった。覚えとくから次にお前の顔を見たら遠慮なく殴るからな」
「ひぃ!?や、やっぱり忘れてくださいっ!!」
捨て台詞もろくに言えずに二人は逃げていった
「お疲れ様、陽多君」
「いや、別に疲れてねえけどな」
俺が言うと、香奈は苦笑した
「陽多さん、ありがとうございました!」
「……凄く助かった。あの人達、しつこ過ぎ」
菜由華と森姫が礼を言ってきた
「どういたしまして。お前、大丈夫か?」
俺は、殴られた所を押さえながら蜜柑と一緒に歩いてくる男子に聞いた
「大丈夫です。そんなに痛くないですから。助けてくれてありがとうございました」
「陽多さん、どうもありがとうございました」
二人も礼を言ってくる。何か礼ばっかり言わせてるな、そんなに気にしなくても良いのに
「ぼく、黒川 歩夢って言います。蜜柑ちゃん達の同級生で、彼女達の友達です」
「俺は組谷 陽多だ。高校一年だけど、固くならなくて良いぜ」
「私は楓実 香奈だよ。よろしくね」
俺達は、その場で自己紹介を交わすのだった
屋上、フードコート。
蜜柑達はそこで食べるつもりだったらしく、俺達も一緒に食べることにした。
一応デート中だが、せっかくだしな
「よし皆!今日は陽多君が全員分奢ってくれるからね!好きな物食べて良いよ!」
香奈が突然勝手な事を言い出した
「何で俺が奢る事になってんだよ!?つーか俺の金っていうか俺達の金だろ?一緒に住んでるんだから」
「あ、そっか。じゃあ私達の奢りだね!」
結局、奢る事は変わらないらしい。
ま、良いけどな
「あ、あの。ぼく、ちゃんと自分のお金ありますよ?無理に奢らなくても……」
「気にすんなって。俺達、意外に金は持ってるからな」
遠慮する黒川に言う。
まぁ、父さんと母さんが稼いできてくれた金なんだけどな。あの二人、凄く稼ぐし
「……本当に良いの?奢りで良いの?」
「うん、良いからまずは昼飯を食えよ?」
俺は今にもスイーツ屋に行こうとしてる森姫を止める。こいつの頭にはシュークリームしか無いのか
「ありがとうございます陽多さん!香奈さん!ほら、森姫ちゃん、食べ物買いに行こうよ!」
「待って……!シュークリームから先に……」
未だにそんな事を言う森姫は菜由華に引っ張られていった。
そして、蜜柑と黒川は……
「歩夢君、まだ身体が痛むんじゃないですか?私が何か買ってきますよ」
「いや、大丈夫だよ。自分で行けるよ」
「気を遣わなくても良いんですよ。痛いなら無理しないで、食べられないなら食べさせてあげますから」
「あはは、蜜柑ちゃんは心配し過ぎだって」
そんな感じで二人仲良く歩いていった。食べさせてあげるって……カップルみたいだな、おい
さて、じゃあ……
「俺達も買いに行くか」
「そうだね、行こうか」
俺と香奈も、食べ物屋を回ることにした
皆の私服については皆さんのご想像にお任せします。
……単純に作者が服に詳しくないだけとか言えない




