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ワガママ

陽多side


副会長に見捨てられ、俺達に捕まったカツアゲ犯達は観念したのか大人しくなった。

……いや、大人しくさせられたってのが正しいか


「全く、君達は何やってるの?中学三年生にもなってカツアゲなんて幼稚な事やってさ。恥ずかしくないの?」


『………』


「いい?君達がやったことは迷惑しかかけないんだよ?被害にあった子達、それに君達のご両親、さらに学校の先生達、君達はこんなに迷惑をかけてまでお金が欲しかったのかな?」


『ごめんなさい……』


最初は威勢が良かった生徒達だったが、香奈が怒気のこもった強い視線を向けて説教を開始した結果、10分も経たずに全員正座して謝っていた


「なぁ香奈?そろそろ良いか?」


俺は頃合いを見て、香奈に声をかけた


「ん?ああそっか。色々聞かないといけないんだっけ」


香奈は納得して、ようやく説教を止めた。

さて、いよいよ本題だな


「お前らを見捨てて逃げたあいつ、副会長だよな?」


「…… ああ、そうだよ」


一人で逃げた事に怒っているのか、答えた男子生徒は不機嫌そうだった


「何で副会長がカツアゲなんてやってんだよ?」


「それは私達もよく知らないわ。何かお金が必要な理由があるみたいだけど」


「理由ねぇ……それはあんた達も同じなのかしら?」


俺が質問していると瑠美が横から口を挟んだ


「人を脅してまでお金を手に入れるってことは、それはそれは大層な理由があるんでしょ?」


「………」


「何?もしかして無いの?全員、ただの遊ぶ金欲しさでカツアゲしてたってこと?」


「……ええ、そうよ。他に理由なんてない」


「あんた達ねぇ……!」


開き直ったような態度の女子生徒に怒りを抱いた瑠美はさらに突っかかろうとする


「よせよ暁。こんな奴らに何言っても無駄だぜ」


「タマ……でも……!」


「すんません組谷先輩。暁はオレが落ち着かせますから」


そう言って、原中が瑠美を止めていた。

瑠美の気持ちも分かるんだがな……今はこいつらから情報を引き出すことに集中しないと


「副会長が金を必要としてる理由って何なんだ?」


「知らねえ。そこまでは話さなかったからな」


ったく、何も知らないで金欲しさだけでカツアゲしてやがったのかこいつらは


「じゃあ理由を知ってそうな人に心当たりとかない?」


黙った俺の代わりに、紗季が聞いた


「……生徒会長なら知ってるかもしれないわ」


「会長が……?それは本当なのか?」


「多分、ね。会長、カツアゲの犯人が副会長って知ってるっぽいし、それなのに副会長を庇ってたりしてるから」


「だからあの時、嘘吐いたのか……会長は何を知ってるんだ?」


原中が思案顔になる。


その後、色々と質問したがそれ以上の情報は出てこなかった













捕まえた連中の事を瑠美達に任せ、俺達は今日は帰ることになった


「結局、副会長は捕まえられなかったね……」


紗季がため息と一緒に言った


「ごめん、俺がもっと早く回り込めれば良かったんだけど」


「空君は悪くないよ!残った人達を捕まえられたのだって空君のお陰なんだから」


空まで落ち込みそうになったのを見て、慌ててフォローする紗季。こいつらはいつになったら付き合い出すんだろうか?


「でも多分大丈夫よ。さっき捕まえた子達は先生に引き渡すだろうし、あの子達の証言があれば副会長が捕まるのも時間の問題よ」


「じゃあ事件終了、ってことか?」


俺達がそんな会話をしながらとあ中の校門を出ると


「あ、皆さん。作戦は終わったんですか?」


「結局、瑠美ちゃんの作戦って何だったんですか?」


「……副会長は捕まえられた?」


待っていた蜜柑と菜由華、さらに森姫が話しかけてきた


「あれ?三人とも今日は帰ったんじゃないの?」


「いえ、どうしても心配だったもので……それで、どうだったんですか?」


心配そうな三人(森姫は表情が読めないが)に今日の作戦の結果を伝えた


「そうですか、カツアゲ犯を捕まえられたんですね」


「ということは、後は主犯の副会長を捕まえれば、一先ずカツアゲは収まるかな」


「ま、とりあえずな」


「それにしても、原中君にしか出来ない作戦って囮作戦だったんだね」


「原中君もよく反対しないで囮役をやってくれましたね」


「いや、かなり反対してたけどな」


俺達の話を聞いて、蜜柑と菜由華はホッとしたようだな。


「………」 


……だが、森姫は何かを考えているようで、話を聞いてから何も言わなくなった


「森姫ちゃん?どうかしましたか?」


そんな森姫に蜜柑が声をかけた


「うん……会長の事が気になるの。捕まった人達……会長が何かを知ってるって言ってたんでしょ?」


「ああ、生徒会長なら何か知ってるかもって言ってたな」


「……それが気になる。会長は何を知ってるのか……何で副会長を庇ったのか……」


「理由も無しに、副会長を庇って嘘を吐いたりしないもんね」


「……会長は何かを隠してる」


どうやら、まだ事件を終わらせる気はないようだな、この後輩達は


「わたし、明日会長に話を聞きに行く」


「そういうことでしたら私も行きますよ」


「私も!桐花ちゃんが何を隠してるのか知りたいしね」


「二人とも……良いの?」


「おいおい、俺達も行かせてくれよ?」


今回の事件の真相、知りたいからな


「陽多さん達も……?」


「うん、私達も会長の話を聞きたいからね」


「ま、ここまで来たら最後まで付き合うって」


香奈達も同じ意見みたいで良かった。『俺達』も行かせてくれって言ったのに、誰も着いてこなかったら寂しいしな……


「ちょーっと待ったぁ!私達も忘れないでよ!?」


そこに、瑠美と原中が駆け付けてきた


「お、二人とも。あいつらはどうした?」


「先生方に引き渡してきました!いや~先輩方の活躍を話せなくって残念っすよ」


原中が俺達に尊敬の眼差しを向けながら言う。

尊敬される程の存在じゃないと思うけどなぁ


「それで姫、会長に話を聞きに行くんでしょ?私とタマも行くからね」


「オレはもう決定なのかよ!?」


「何よ、行かないの?」


「行くに決まってんだろ!」


「じゃあ初めから素直にそう言いなさいよ……」


「……皆、本当に来てくれるの?わざわざ会長に話を聞きに行くのはわたしの……ただのワガママだよ?」


森姫は俺達を不安げに見つめながら聞く。

そして、その問いに俺は答えた


「安心しろ森姫。ここにはお前も含めてお人好ししかいねえよ」


「特に、陽多君が一番のお人好しだよね」


「確かにね、陽多君のお人好しはもう治らないわよね」


「はは、確かに組谷先輩ってお人好しそうっすよね」


「陽多さんだからね~」


「おーい!せっかくかっこよく決めたのに台無しじゃねえか!!」


俺がつっこむと皆は笑いだした。

まったく……こいつらと来たら……


「……ふふっ」


「あれ?森姫ちゃん、初めて笑いましたね」


そんな俺達を見て、森姫は小さく笑った


「うん……笑った、久し振りに笑った……」


「確かに森姫が笑うのなんて初めて見たぜ。いっつも人形みたいに無表情だからなぁ」


「そう言う玉樹君は……表情が変わりすぎ」


「こいつ、アホだからね」


「関係ねえだろ!?」


原中を気が済むまで弄った後、森姫は俺達に向き直った


「皆……わたしのワガママに付き合ってくれて……ありがとう」


「礼を言われる程の事じゃねえって。んじゃまた明日だな」


「うん。じゃあ……皆で帰ろう」


森姫は、俺達を見て嬉しそうに言うのだった

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