幼馴染みとの一日
――朝、目が覚めた。そしていつものように着替えをする、いつもどおりの生活、特に変わった所はない。
ただし、ここからは少し一般のそれとは違う
「さてと…あいつを起こしにいくか」
『あいつ』とは俺の幼馴染みのことだ。とある事情から俺はそいつと同棲している。しかも相手はかなりの美少女だ。
普通だったら確実に羨ましがるだろ?普通ならな…。
とりあえず俺は幼馴染みを起こしにあいつの部屋に行く
「おーい、香奈?起きてるか?」
「ん……?あ、おはよう陽多君」
そう言って俺に笑顔を向けるのが幼馴染みの楓実香奈だ。
おっと自己紹介を忘れてたな。俺の名前は組谷陽多だ。
「おはよう。今日から高校生だな」
「うん。星雲学園かぁ、どんな所だろうね」
「ああ、楽しい所だと良いけどな」
そう、俺達は今日から高校生。つまり今日は星雲学園の入学式だ。あまり話し込みすぎて初日から遅刻ってのは嫌だしそろそろ切り上げるか
「んじゃ香奈。着替えたら降りて来いよ」
「覗いても良いよ?」
「アホ!冗談でも言うな!覗きたくなるから!」
「冗談じゃないのに…」
香奈のこういう所は本当に困る。
本人は冗談のつもりかもしれないが俺にとってはかなりヤバい。ただでさえ美少女の幼馴染みと同棲なんていうシチュエーションなのにそんなことを言われた日には襲いたくなる…!
え?本能のままに襲えば良い?いや、本当にそうなる一歩手前くらいまで来てるんだが…俺は香奈にそういうことができない理由があるんだ。
まぁ、その説明は別の機会にさせてもらおう
朝食を済まし、俺と香奈は二人で学校に向かう。
まぁこんなシチュエーションだと…
「ちっ、入学初日からかよ…」
「見せつけやがってくそ」
美少女の香奈と一緒に登校するとこんなふうに男達からの妬みの視線がかなり飛んでくるんだよな…。
でも
「………(キッ)」
「「(ビクッ)」」
香奈が殺気を込めた視線を送り、男達は怯えた表情で顔を反らす
「こらこら香奈。そんな顔するなよ」
「だって嫌だもん。あんな視線浴びるの」
別に香奈には飛んできてないと思うが…
「ったく、可愛い顔が台無しになるぞ?」
「かっ、可愛い!?」
「ああ、なに驚いてんだよ?」
まさか自分の顔に自信無かったのか?
「陽多君が…可愛いって言ってくれた……!」
「おーい香奈?行くぞ?」
「!ま、待ってよ~!」
学校に着き、早速クラス分けを見てみると
「お?俺達同じクラスみたいだな」
「本当!?良かった!」
そんなにホッとしなくても香奈ならクラスで友達作るくらい簡単だろうに
「クラスは1年33組だとさ、行こうぜ」
「どんだけ大きいのこの学校!?違う違う!3組だよ!」
「ナイスなツッコミをありがとう」
「わざとかっ!」
そんなやり取りをしながらも教室に向かう
「んじゃ入りますか」
「どんな感じだろうね」
「普通だろ」
「つまんない、もっと面白いコメントしてよ」
「くそっ!香奈にダメ出しされるとは!」
俺達は教室の中に入る
(はぁ…やっぱりか…)
最初に感じたのは驚きの視線。だがあっという間にそれは妬みの視線に変わっていく
(今妬みの視線送った奴とは絶対付き合わねえようにしよっと…)
だがそんな視線の中に一人特殊な奴がいた。
それは俺達を面白そうに見てる緑色の髪の男子だった。妬みの感情はゼロみたいだ。
そしてそいつは俺達の所までやって来る
「よっ、はじめましてだな。俺は木崎賢也だ、よろしくな」
「おう、俺は組谷陽多だ。よろしく」
「私、楓実香奈。よろしくね」
「えっと…組谷に楓実…で良いのか?なんとなく名前の方が呼びやすそうなんだが」
「名前でも良いぜ?そのかわり俺も名前で呼ばせてもらうけどな」
「私も私も!」
「そうか。よろしくな、陽多、香奈」
良かった…賢也みたいな奴もちゃんといるんだな
「にしてもいきなり凄い視線喰らったな二人とも」
「うん、なんなんだろうねホント」
「そりゃあ陽多が羨ましいんだろ。こんなに可愛い娘と仲良く登校してきたんだから」
「そういう賢也は羨ましがらないんだな」
「ま、俺はそんなに器が小さくないからな」
うわ……いきなりクラスの男子に喧嘩売ったぞコイツ
「それに俺はもう好きな相手がいるしな」
「へぇ~!賢也君が好きな人ってどんな人なの?」
「実はこの学校にはいないんだよ、あいつ結構なお嬢様だしな」
お嬢様…?賢也はいつそんな人と知り合ったんだ?
だが俺が聞くより先に香奈が聞いた
「お嬢様?賢也君、お嬢様と知り合いなの?」
「幼馴染みなんだよ、まぁ今は金持ちが通うような学校に通ってんだろうな」
「告白とかしないの?」
「簡単にできないって」
「手伝うよ私!」
「なんで!?」
「面白そうだからに決まってるじゃない!」
「理由が嬉しくないぞ!」
意外と香奈はこういう話に食いつくんだよな…
「おい陽多!黙ってないで香奈の暴走を止めてくれよ」
「そうだな。香奈、俺も手伝うから落ち着こうな」
「うんっ!」
「お前もかよ!!」
せっかくの面白い話を見逃すわけないだろうが!
「はぁ……わかったよ…いざって時には協力してもらうよ」
「「了解!!」」
「息ピッタリだなお前ら!」
その後入学式があったが……長い上につまんなかったからカット!
「やっぱりお前らも幼馴染みだったか、入学初日から二人で登校してたからそうだろうと思ってたが」
「ああ、幼稚園の頃からの縁だ」
学校が入学式だけで終わり、帰り道を三人で歩く
「でも良かった。賢也君みたいに私達に嫌な視線送らない人もいて」
「流石に男全員が腐ってるわけじゃないぞ?」
「サラっと教室の男子半数を腐ってる扱いしたな」
「全く世の中にはこんな奴らばっかりだな」
「お前最早誰だよ!」
「ははっ…おっと、俺はここで曲がるからお前らとはここでお別れみたいだな」
見ると俺達の家に向かう途中で左と正面の二つに別れている。どうやら賢也は左みたいだ
「んじゃまた明日な」
「おう、じゃあな」
「バイバイ賢也君!」
というわけで俺達は正面の道を行く
「入学初日から友達ができるなんてラッキーだね♪」
「友達100人も夢じゃないな!」
「いや流石にそれは…特に陽多君は…」
「なにぃっ!?俺が友達いないだと!?」
「一応いるにはいるだろうけど……100人は…ねえ?」
「んだよー夢の無いやつめ……!?」
――その時だ
ヒュウウウ…
「きゃっ!」
強い風が吹き、香奈はスカートを押さえた。
だが俺の目線は…
「きゃー!スカートめくれちゃった!」
「あはは、油断してるからだよ~」
近くにいた違う学校の女子生徒の方に向いていた
「ふっ……白か…」
……今思い返すと本当に馬鹿なことをした。忘れていたわけじゃないだろうに。
近くにあいつがいることを
「陽多君…?今どこ見てたのかな…?」
「ギクッ!」
「へぇ~、私のスカートよりもあの娘達の方が興味あるんだ……、ふふ…うふふふふ…」
「ま、待て香奈、違うんだよ。実はあっちにパンツ…じゃねえ!なにか紐が見えて気になって…ってこれじゃ意味変わらねえ!!」
「あはははは……ねえ陽多君?そのいけない目を潰してあげるね?」
そう言って香奈が静かに取り出したのは……コンパスだった
「ってまてまて!なんで入学式の日にコンパス持ち歩いてんだお前は!?」
「大丈夫だよ陽多君。痛くないように一瞬で潰すから…。これは陽多君の為なんだからね~?」
「潰されてたまるかああああ!!」
全力ダッシュだ!!
「逃がさないよ~、逃がすわけないじゃない…」
「怖いな!」
説明しよう。これは香奈のいわゆるヤンデレってやつだ。俺が香奈以外の女に少しでも惹かれると発動する。
だがしばらくたてば香奈も冷静になってくれるから対処できるようになる。だから今はそれまでひたすら逃げる!
「アハハハ!待ってよヨウタクン」
「断る!!」
絶対逃げきってやるぜ!
あれ……?なんだ……ここ……?交差点……?
『……君!!危ない!』
『…さか…ここまで!』
『……ばさん?……じさん?………嘘……嘘だああああ!!!』
これは……?俺は一体…?
『ごめんな………君…、こんなことに巻き込んで……でもできるなら…』
『あの娘と………と…ずっと…』
『……はい!僕はあいつと…、……と!ずっと一緒です!』
あいつ……?誰だよそれ……?これって……もしかして俺の記憶か……?
もう少し……もう少しだけ思い出せそうな……
「あ!陽多君目が覚めたんだね!?良かった~」
俺が目を覚ますと香奈のホッとした顔が見えた。良かった、冷静になってくれたみたいだな。
……そういえば夢を見ていた気がする。なんの夢だっけ……?
「……うっ!!」
「陽多君!?大丈夫!?」
「あ…ああ…」
思い出そうとした瞬間、酷い頭痛に襲われる。やっぱり駄目みたいだ。
これが香奈を襲ったりしない理由だ。俺は子供の頃の記憶の一部分を失っている。そしてよく分からないがその記憶が必死に訴えてる気がするんだ、香奈をそういう目で見ちゃいけないって。
たまになんとか思い出そうとするとさっきみたいな頭痛に襲われるせいで結局思い出せない
(にしても……もしかしてさっきの夢は俺の記憶と関係あるのか?)
今まで夢のせいで頭痛が起こったことはない。てことはさっきの夢は…。
「本当に大丈夫?陽多君、凄く難しい顔してるよ?」
おっと、考え事に夢中になりすぎたみたいだな。このまま香奈を心配させたままにはいかないが……ちょっとからかってやるか
「いや……駄目だ…今にも死にそうだぜ…」
「ええっ!?そんな嫌だよ!陽多君が死ぬなら私も死ぬぅ!」
「そうだな……香奈が裸になって温めてくれるなら助かるかもな…」
よし、ここで香奈が真っ赤になってフリーズしたら終わりにしよう
「わかった!」
「な~んて嘘だよ……って…え!?」
俺がネタバレするより先に香奈は上の制服を脱ぎ捨てた!
さらに下も脱ぎ、下着姿になる
「お…落ち着け香奈!冗談だよ!」
俺は鼻血を出しながらも香奈を止めようとする。ほう…なかなか良い胸…って違う!負けるな俺の理性!このままじゃヤバいって!
そして香奈が躊躇せずにブラまで外そうとした時…
「もう……駄目だああぁ……!」
俺は限界になり意識を手放した
香奈Side
「……ふふっ」
私が冗談で服を脱ごうとした時、ついに陽多君は限界になったみたいで鼻血を噴出して倒れた
「ちょっとやりすぎたね、しばらくは起きないかも」
私は陽多君の様子を見ながら思った
(……今は静かに寝てるね、さっきは凄いうなされてたけど)
さっき……私が暴走状態になって陽多君が疲れ果てて気絶した時は悪い夢を見てたのか苦しそうにしてたから心配したけど今回は大丈夫みたいだ
(私のあの暴走…やっぱり直らないのかな…)
陽多君が私以外の女の人に惹かれるのを見るといつの間にか冷静に物事を考えられなくなる、しばらくすれば直るけど完全に直すのは無理だった。
こんなことになった原因は多分…『あの事件』だろう…
(でも…陽多君は忘れてるんだよね)
何度も思い出そうとしてるけどその度に頭痛が起こるみたいだ…。
でも…もし陽多君が思い出したら…どうなるんだろう…
「……香奈…」
「え?」
見ると陽多君が目を覚ましていた
「なんか難しい事でも考えてたのか?」
「いや…別に…」
「ふう……」
すると陽多君はいきなり手を伸ばして私の頭を撫ではじめた
「悩み事があるんだったら相談しろよ?幼馴染みなんだから遠慮なんかいらないからな」
「うん…ありがとう陽多君」
陽多君が優しく撫でてくれる。それだけでさっきまで考えていた事はどこかに吹き飛んでいった。
そうだよ…難しく考えないで今を楽しまなきゃ!
「にしてもさっきの陽多君の慌てっぷりは凄かったね~」
「ぐっ!やっぱりわざとだったんだな!?」
「じゃあ陽多君。私の下着姿の感想を言ってみて」
「ま、待て!今急に思い出すとまた鼻血が!」
「ティッシュならスタンバイしてるよ?ゆっくりで良いから思い出してみてよ」
「なんだこれ!?新手の拷問なのか!?」
その後も夕飯まで陽多君をからかって楽しんだのだった