春の恋
家までの道が、やたら長く感じた。
「まだつかないの…?」
早く亮介のMDに会いたいのに、心だけが先走り、体が気持ちに追い付かない。
自転車がもどかしい。
玄関の鍵にイライラする。
やっとの思いで、部屋までたどり着くと、着替えもせず、鞄は放り投げ、机の上に置きっぱなしにしてあったMDを取り出し、コンポに突っ込んだ。
亮介と私のお気に入りのアーティストが入っていた。
二人でよく聴いた曲で、
「お気に入りベスト10」
なんて事をやった事を覚えていたのか…そのときの順番に流れていた。
「亮介、何を伝えたいの?」
その時の楽しい思い出か…それとも、別の何か?
そんな風に考えながら、一つ一つを聴いていった。
ベスト10なら、そろそろ一位になる曲が流れる前に、音源が変わった。
録音された音源のようだ。
その曲は、ピアノだけで続いていった。
キレイなメロディに歌詞はなかった。
とても繊細で切なくあり、そして甘く包みこんでくれる曲だった。
「…あぁ、亮介がいた。」
私は、彼の表現の世界に入り込み、彼を見つけ、泣いていた。
好きな人の世界を発見しできた事が嬉しく、何よりも幸せで胸が苦しかった。
それから改めて、亮介に旅立つ時がきているような気がした。
「わかったよ…亮介。」
曲が終わると、胸の中で、温かい何かが込み上げた。
心臓は高鳴り、顔が笑顔になる。
私は、心の底から、亮介と話し会う決意をしたのだった。




