春の恋
「春喜…講義終わったよ。」
夏樹に呼ばれ、気がついた。
「最近、変だよ…。どうしたの?。」
私は、あの日以来、体が記憶している無意識の意識で過ごしていた。
朝起きたら、味のわからないパンを飲み込み、学校に向かい、夏樹の話しに適当に頷いたり笑ったりしていた。
そんな単調なリズムを繰り返していたので、時間の感覚はなかった。
そんな私を見兼ねて、夏樹が言葉を掛けてきた。
「亮介と何かあった?」
夏樹に心配されているのが、辛く、誰に聞いて欲しかったため、あの日の事を全て話した。
夏樹なら、分かってくれる気がしたからだ。
しかし、夏樹は…
「…馬鹿。春喜は、馬鹿だよ!自分勝手もいい加減にしなよ。」
と、私を叱った。それからさらに続けた。
「そんなんじゃ、亮介がかわいそうだよ。」
「…。」
夏樹に言い返せなかった。
「夢を追い掛ける所に惚れておいて、いざとなったら認めてあげないなんて…春喜の馬鹿!。」
「子供なのも、いい加減にしなよ…。」
「…。」
「自分の意見は聞いてもらって、亮介の意見は聞きたく無いなんて…私なら、間違いなく、別れるよ。」
夏樹の一言一言が、胸に突き刺さった。
正論すぎて、かなわない。
確かに、私は、亮介の気持ちを受け入れてない。
亮介は、あんなにも、私を大切にしてくれたのに…。
私は、亮介と離れるのが悲しいあまり、自分の意見だけを亮介に押し付け、亮介の夢を理解してあげようとしていなかった。
何より、亮介が私を信頼し、渡してくれたMDを聞いていないのが、もう亮介を思いやっていない。
「こんなんじゃ、亮介に呆れるって言われちゃうね。」
そう笑って言えた瞬間、少し前を向きたいと思った。
「そうだね…。」
と夏樹がニヤつきながら、私に返した。
夏樹に葛を入れてもらい、やっと、MDが聞けるような気持ちになった私は、すぐにでも家に飛んで帰って、聞きたいとおもった。






