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Bullet-time  作者: ある
5/12

fire 3

CWだけではなく、チーム戦において情報伝達は非常に重要だと言える。


特に小隊が入り乱れる戦闘において、頻繁に情報を取り合っていなければ、角を曲がった先にいた味方をFF(味方を撃つこと)してしまうことや、味方が仕掛けたワイヤートラップと連動させたクレイモア(対人指向性地雷)を作動させてしまい、小隊が1つ全滅なんてこともある。



なので、基本的に戦闘を行う兵士は雑音が入らない骨伝導マイクを装着しており、それにより情報を伝達している。



「こちらシュラケン。ポイント3を通過。目視での接敵は確認できず。このままルートAを進行10分後ターゲット付近に到着予定」


振り分けられた3小隊のうち西側ルートを進むCチーム小隊長シュラケンよりの無線が入る。


これは最終ポイントを超え、待ち伏せなどが無いかを知るための連絡でもある。


「こちらファルコン。そちらが進むルートの頭上において敵は確認できない。更には敵狙撃兵も確認できず。」



「了解。周辺警戒をレッド。これよりBパターンで進行する。」



早く見つけてくれよ、という小言を最後に通信が終了された。



くそっ


そう簡単に発見できるわけがないだろファック。


狙撃兵に取って、場所取りは一番重要だ。


まず視界の確保。これは基本的に高台を使う場合が多い。


高台はより広く見渡せるため、狙撃場所スナイピングポイントとして絶好の場所になるからだ。


しかし、自分が見えているということは相手からも見えているということ。


芋スナ、糞スナとなると定点から移動せずにスコープを覗き込んだまま敵を探索するが、さすがにこのクラスまでくるとそんな事をやっていれば額で煙草を吸う羽目になる。


観測手がいれば自分で探索しながら、連絡を受けたりしなくてすむのだが、今回は全て1人でやらなければいけない。


敵に発見されないように気を配りながら、味方が撃たれる前に排除する。


なんて重労働なんだよ。ファック。


二回目のファックを吐きながら双眼鏡を覗き込んでいると、通信が入った


「こちらカレン。フラッグ地点近くに到達。」



早すぎる。

先程のシュラケンチームからの通信から3分も経っていない。


慌てながら返答する。


「こちらファルコン。まだ敵狙撃兵は確認できていない。多少の時間を貰いたい」


「無理だな」


容赦ない即答が返ってきた。


「なっ。だが…


「私達がここまで到達した、ということは敵のエースもまもなく到達するだろう。作戦上、フラッグの先取は絶対条件だ。ここでもたつくことはできない。私達が突入すれば貴様も役割を果たせるだろう?」


それは…


確かにそうかもしれない。


カレンが言っているのは、自分達小隊を囮にして敵狙撃兵を誘きだす、ということだ。

この戦術自体はチーム戦においてよく使用され、それなりの効果はある。

しかし、向こうの狙撃が早ければこちらのリーダーであるカレンをはじめとする小隊がキルされてしまう可能性が高くなるのだ。



「大丈夫だ。私達、いや私は貴様を信じている。人柄云々は別として腕は確かだ」


「だが、あまりにもリスキーすぎる。カレンが殺られたら、部隊が瓦解するぞ!」


「別に殺られてもリアルで死ぬわけでは無い。まぁ、勝負には負けるかもしれんがな。それに先にお前が敵狙撃兵を殺ればほぼ勝ちだ。グダグダ言わずにさっさと了解しろ。糞鷹」



もう何を言っても無駄だな。こいつはやると言ったらやる女だ。


「了解。…Good Luck カレン」


「合図と共にSGを投擲、その後突入する。Good Luckファルコン」



通信が切られる。



「やるしかないな」



こういう緊張感は嫌いじゃない。


しかし、まったく…クレイジーな女だ。

リーダーが囮とは。



手に持っていた双眼鏡を投げ捨て、長年の相棒である チェイタックM200を構え、スコープを覗く。



緊張故か渇く唇を無性に舐める。


まだか…



まだか…




「3...2...1...Go!」


ぼすんっ




合図と共にくぐもった爆発音が響き、白い煙幕が広場を被い隠す。通常のスコープでは目視は不可能となった。


しかし、赤外線スコープで狙撃は可能。

敵狙撃兵は勿論それを使って来るだろう。



神経を研ぎ澄ませる。



突入からまだ3秒。いやもう4秒か。

一流なら4秒あれば2人はキルできる。




スコープから見える空間全体を広く見る。



一瞬小さな光が目を刺した。


「発見」


スコープからでる僅かな反射光を捉えた。



銃口を標的へと修正。

クロスヘアの中心に標的を捕捉。


俺と同じような高さの建物の屋上で射撃体勢をとり、幾何学迷彩アーバンカモを着用している姿が見える。











そして、こちらに向いている黒光りする銃口も。


一瞬の反応。

トリガーを引く。



と、同時に頭に強い衝撃。



バッコーンッ


音が遅れて聞こえてくる。



弾は相棒に直撃。


そしてその衝撃で俺は射撃ポイントとしていた、地上20mから地面へ向かって叩き落とされた。

これだけの高さなら即死は間違いないだろう。



見つめた視線の先でも、灰色の塊が落下している。




「相討ちかよ…。ファック」


俺は本日三度目のファックとともに、意識を暗闇へと手放した。



6/23 誤字修正

6/25 誤字修正

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