表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Bullet-time  作者: ある
3/12

fire 1

パンッ



右手にあるベレッタM92(自動拳銃)が乾いた音と共に薬莢を弾き出し、今日1日の狩りが終了した。


狩っていたのは、BOTと呼ばれる10人程度のNPC(ノンプレイヤーキャラ)集団。


クエストとして設定されているテロリスト殲滅。

勿論、相手はモンスターや動物等ではなく人間である。


NPCではあるものの、最初はその人を殺す感覚に耐えきれず、口から胃液を垂れ流したものだ(実際は吐いていないが)


しかし、毎日毎日むさ苦しい髭面の男どもの相手をしているといい加減なれてくるもので、今ではただの作業となっている。


精密に再現され、リアルな重さと消炎の匂いを漂わせるベレッタM92を眺めながら、ふと思案に浸る。




昔とは異なりVRバーチャルリアリティをフルに活用したゲームの中で、このVRSTG、[N.R.O]は日本社会からの反対を押しきって発表された。


「繊細に表現された仮想世界で人を殺すゲーム」はFPSマニア、ミリタリーマニア達からはまさに涎を垂らしてでも飛び付きたくなる程の完成度を誇り、正式稼働に先駆けて行われたβテストのテスター倍率は10000倍とも言われている。



更に、N.R.Oは通常のFPSとは異なり、プレイヤーにレベル、ステータス、スキルが設定されており、個人の好むスタイルでゲームを楽しむことができる。


そして、それだけではなく銃器、その他武器にも経験値が設定され、愛用の武器を強化する事ができるのだ。


いわゆる、STG.FPSを中心に作られたVRMMORPG(多人数同時参加型オンラインRPG)となる。


実際にファンタジーを主に剣、魔法が飛び交うVRMMORPGはかなりの数が存在しているが、このN.R.Oのようなゲームは存在していない。倫理的な問題もあり各ゲーム会社が自重していたこともあるが、それを打ち破ったN.R.Oが有名になるのは当たり前のことであったといえよう。



そして、俺。鷹尾誠哉。

今までゲームなんてやったことも無かったが、友人に勧められ始めたこのゲーム。


正式稼働から1年








俺は引きこもり廃人になっていた。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「はぁ…もうだめだしにたい」


N.R.Oを始めてはや1年。最初の方は大学の講義にも顔を出していたのだが、今は家を出ることすらほとんどない。


そしてとうとう



今日、現実にて鷹尾の元に大学からの成績表が届いた。




取得単位数4






1年間で取ることができる最大取得単位数は48。


卒業に必要な単位数136。




分かっていた事だが、これはまずい

非常にまずい


鷹尾の通う大学は進級に必要な単位数は設定されていないので、とりあえず進級はできるが、このままだと確実に卒業が危うい。




普通の人間なら、こんなにまずい状況になってしまった場合、もちろんゲームを止めるだろう。



しかし、どっぷりとハマってしまっている廃人の思考は恐ろしい。




「まずい…けど。だけど…来年から頑張ればいいんだよな!うんうん。ゲームもしながら大学も頑張ればいいんだよ!!」


嫌な事からは逃げるのみ。



「何はともあれ、明日だよな。明日はCW(クラン戦)があるから、今日はこれでログアウトしておくか」



右手を振り、コマンドメニューを呼び出しログアウトボタンを押す。



―ログアウトしますか?―


Yes/No




Yesを押す。

視界が暗転し…俺の体はVRから現実に戻った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ