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Bullet-time  作者: ある
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fire 9[後編]

「この世界にようこそ?一体どういう意味だ?」


いきなりのヒューズの言動に鷹尾は内心で冷や汗をかきながら、しらばっくれた。


そんな鷹尾の様子に苦笑しつつ、ヒューズは答える。

「何も、そのままの意味だよ。君はこの世界の事を知らなさすぎる。僕は傭兵だよ?無駄に世界を歩き回ってきたわけじゃない。君が何処から来たかは知らないが、この世界に生きるものならこんな風景は当たり前の物で、何処行ったとしてもここと同じようなものさ」


「そんな……。だけど」



誤魔化すために口を開こうとはするが、何も出てこない。

ただ呆然と立ち尽くすことしかできない。


「君が何者で何処から来たのかは、そりゃあ多少は気にはかかるが、別に問い質したりするつもりはないよ。長く傭兵生活を続けていると、現実ではあり得ない事が沢山起こる。生と死の狭間を彷徨く僕ら傭兵にとって、それは些細な事にしか過ぎないんだ。それに……」


ヒューズは少し口ごもると、先程までの柔らかい笑みを消し、無表情に淡々と続けた。


「君が僕の敵なら殺すだけだ。今は違うでも、これから敵になる存在だとしたら殺す。そして、僕が守りたいものを傷付けるようなら殺す。殺して殺して殺して殺して殺す。そして君という存在をこの世界から消し去る。ただそれだけだ」



誰にでも分かるような、正に肌を刺す殺意を打ち付けながら、ヒューズは腰のホルスターからグロック17を抜き、銃口を鷹尾に向ける。


そのあまりの早さに鷹尾は指先を動かすことすらできない。


「僕は君の素性に詮索するつもりは無い。ただ、一つだけ。それさえ聞ければ良い」


視線をこちらへと向けたままゆっくりとセーフティを外し、スライドを引き、撃針をハーフコック(半後退)させ、引き金に人差し指をかける。




「君は、タカオ君は僕の敵か?」



「ち、違う!俺はあんたの、ヒューズの敵じゃない!」


反射的に声が出た。考えるよりも先に。


ぬるいはずの風が、頬をなぞる汗を冷たく冷やす。


永遠のようにも感じられる時間。


鷹尾は目を開けているのも苦痛に感じ、瞼を固く閉ざしてその時間が過ぎ去るのを待った。



……ちゃき




「なら良かったよ。これで、僕は君に対して余計な詮索はしない。なんなら君の質問にも全て答えよう。君はこれから、僕の仲間だ。宜しくね、タカオ」


そんな言葉と共に、肌を刺していたモノは一瞬で消え去り、体にかかっていた重圧も、元々無かったかのように消失した。



うっすらと目を開くと、そこには以前と同じく柔和な笑みを浮かべたヒューズが右手を鷹尾に向けて差し出していた。



殺されるかと思った、等とは口には出さず、鷹尾は汗で濡れ、固く握り締めていた右手を開き、差し出された手を握る。


その汗ばんだ手を握り返したヒューズは、笑いながらグロックを持っていた左手を振った。


「ん?やだなぁ。本当に僕が君を殺すとでも思ったのかい?そんなことあるわけが無いじゃないか。こいつだって、」


ほら、とグリップの中にある弾倉を抜き取り、こちらに投げる。


その弾倉を受け取とり確認してみると、それは弾がセットされていない空弾倉だった。



「はぁ……。脅かさないでくださいよ……」


一気に肩の力が抜け、その空弾倉をニヤニヤと笑っている男に投げ返す。



「ごめん、ごめん。お詫びにさっきも言ったと思うけど、君の事は詮索しないし、君が知りたい事はなんでも教えてあげるよ。ただし僕が言える範囲内で、だけどね」


ヒューズはキザったらしく、くるくるっとグロックを回し、ホルスターに納めながらおどけて見せる。


そんなヒューズを見ながら、じゃぁ、と質問を切り出そうとした瞬間、ヒューズから待ったの言葉がかかった。


「あらら。お客様のようだね。質問はまた後にしようか」


と、同時に屋上への扉が激しい音を立て、ワインレッドの軍服のような物を身に付けた女が肩で息をしながら走り込んできた。



「はぁ……。はぁ……。なんで……お前……」



見るからに苦しそうで、鷹尾は恐る恐る声をかける。


「あの〜。とりあえず座って休まれたほうが良いかと」


「黙れ!もやし野郎!…はぁ……。はぁ……」



いきなり初対面の女性に「もやし野郎」と罵倒され、落ち込む鷹尾と、それをニヤニヤと笑って傍観するヒューズの姿がそこにはあった。

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