ほっこり宿
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それを見たハンターたちが、一斉に武器を構える。
私はその光景を、ただ遠くから見ていることしかできなかった。
鉄の武器が振り下ろされる音。
化け物の叫び声。
人の怒鳴り声。
この街では、それが日常らしい。
だが――
「……ずっと見ててもしょうがないな」
私は小さくつぶやいた。
ここで戦えるわけでもない。
体力E、筋力Eの自分では、今戦えば死ぬだけだ。
まずは生き延びる方法を考えなければ。
ポケットの指輪を握る。
(帰還まで……一週間)
一週間。
それまで死ななければいい。
私は周囲を見渡した。
通りにはいくつか店があるが、どれも普通ではない。
看板は歪み、窓は割れ、建物も崩れかけている。
その中で、一つのボロボロな看板が目に入った。
「ギ_ド」
店の前には、黒い宝石を持った男たちが並んでいる。
ホームレスの男の言葉を思い出す。
ここは、黒い石を売る店だ。
男たちは順番に店に入り、小さな袋を持って出てくる。
中には金属の音がする。
本当に金になるらしい。
「……ハンターか」
私はすぐ首を振った。
今の自分には無理だ。完全に自殺行為だ。
店の前を通り過ぎ、少し歩くと別の看板が見えた。
「ほっこり宿」
古い建物だが、人が出入りしている。
私は入口まで行き、中をのぞく。
古いカウンターがあり、太った男が椅子に座っていた。
男は面倒くさそうにこちらを見た。
「泊まりか?」
「……はい」
男は手を出す。
「前払いだ」
「……いくらですか?」
男は指を一本立てた。
「銀貨1枚」
私は財布を探り、日本円を確認する。
一万円札を出すと、男は眉をひそめた。
「見たことねぇ札だな」
「え?」
「ま、いい」
男は肩をすくめ、銀として扱うと言っておつりのように硬貨を置いた。
「二階、奥の部屋だ」
鍵を投げてよこす。
私は受け取り、階段を上がった。
廊下は暗く、床も軋む。
部屋に入ると、小さなベッドがある。
私は座り込み、少し安心した。
窓の外を見ると、街はまだ騒がしい。
遠くで誰かが叫び、化け物とハンターの戦闘が続いている。
ポケットから指輪を取り出し、もう一度念じる。
(プロフィール)
表示が現れる。
体力:E
筋力:E
「……弱すぎる」
だが帰還まであと6日と少し。
それまで、生き延びる。
生き残るために必要なもの――
金
寝る場所
危険から逃げる力
その三つが、この世界で生きる条件だと、なんとなく理解できた。
そのとき、下の階から声が聞こえた。
廊下を走る足音、ざわつく声。
どうやら、この宿には――
ハンターが集まっているらしい。




