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迷子の狐


石畳の道をルミナへ向かって歩き出すと、街の喧騒がすぐに耳に飛び込んでくる。馬車の車輪が石にあたり、ガタガタと響く音。呼び込みの声があちこちから聞こえ、金属を打つ音や笑い声が混ざり合う。


露店が立ち並ぶ通りを歩きながら、私はふと立ち止まった。色とりどりの果物、香辛料、手作りの小物、冒険者向けの簡易装備……小さな世界がぎゅっと詰まっている。人々の声や呼び込みの声、荷車のきしむ音が混ざり合い、街は活気に満ちていた。


前方の人混みの間に、ふと小さな動きが目に入った。細く小さな影が、露店の間を縫うようにして小走りしている。茶色の毛皮のような耳がちょこんと頭に立ち、尻尾が左右に揺れている。


私は足を止め、じっとその影を見つめた。すると、影は私の方に向かって駆けてきた――泣き声を漏らしながら、どうやらこの街で迷子になってしまったらしい。5歳ぐらいだろうか、小さな狐耳の少女が、混雑した通りの中で必死に走ってくる。

「お、おい……」


思わず声をかけると、少女は私の服にしがみつき、泣きじゃくる。


「大丈夫か? 迷子になっちゃったの?」


私は地図を片手に彼女を抱き上げ、周囲を見回す。しかし、親らしき姿はどこにも見当たらない。


「迷子……じゃないもん!」


泣きそうな顔で小さく首を振る。


「え……でも、どうしてここにいるの?」


少女は首をかしげ、キョロキョロと周囲を見渡すだけで答えない。手には小さな渦巻き状の指輪がはめられていて、中心に穴が二つ開いている。私の指輪とは違うが、どこか似ている。


「わかんない……」


突然、私の服をぎゅっと掴み、目を潤ませながらしがみつく。


(困ったなあ……)


小声でつぶやき、頭をかく。まずは名前を聞かないと。


「えっと……君の名前は?」


「りりぃ……」


「そうか……お父さんやお母さんは、どこにいるの?」


問いかけても、りりぃは小さく首を振るだけで、再び泣き出した。まだ五歳ほどの小さな狐耳の少女――どうやら、一人でこの街に迷い込んでしまったらしい。


周囲の通行人たちが、ちらちらとこちらを見ている。狐耳の少女を抱えて歩く私の姿は、少し怪しく映るのだろう。


(どうしよう……)


頭に浮かんだのは、さっき会ったアイルのことだった。ひとまずギルドに戻って相談してみよう。そう決め、私はりりぃの肩にそっと手を置いた。


「……ねぇ、まずは落ち着こうか」


そう言いながら、カバンの中に手を入れて、飴を取り出す。


「これ、どう?」


りりぃは驚いた顔で私を見上げる。


「これなに?」


「お菓子だよ、ちょっと甘いんだ。食べてみる?」


りりぃは少し迷ったあと、そっと手を伸ばして受け取ると、口に入れてきょろきょろと周囲を見回しながら、泣き声は少し落ち着いた。


(よし……少しは安心してくれたかな)


私はりりぃの小さな手を握り、ゆっくりとギルドへ向かって歩き出す。石畳の道を進みながら、街のざわめきや商人の呼び声、馬車の音に包まれつつ、りりぃの手をそっと握り返す。


その小さな手の力は意外に強く、私は思わず苦笑いを漏らした。


(……こまったことになったなあ……)


まだルミナへ行けてもないし、五歳の狐耳の少女を連れて歩くことになるとは、予想もしていなかった。


リリィ「おなかすいたよおおおお」

ユウ「ちょっと待ってろ、後で美味しい物たべるから」

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