突然の戦闘
戦闘は数分で終わった。
冒険者たちは手際よくゴブリンを片付け、倒れた敵の周囲を確認していた。まわりを見渡すと、ゴブリンの数は少しずつ減っていた。森の影から、倒れた仲間を引きずりながら去っていくものもいる。
私は荷台からそっと降り、何か手伝えることはないかと迷った。しかし、護衛たちの手際は素早く、混乱に巻き込まれるのも怖い。
そのとき、指輪がきつく締め付けられるような感覚が走った。
ふと荷台の陰を見ると、一匹のゴブリンがこちらに忍び寄っていた。
「うわっ……!」
とっさに距離を保ちつつ、私は手にしたハンマーを振りかぶる。ゴブリンは小さく跳びかかるが、うまくタイミングをずらし、手早く一撃を加えると、ぐらりとよろめき倒れた。
戦闘はあっという間に終わった。息を整えながら、周囲を見渡す。
「……まさかこんなところで、戦闘になるなんて」
誰かが大声で叫ぶ。
「倒した敵の魔石だけ回収しとけ! さっさとアレンに戻るぞ!」
冒険者たちは手際よく荷車を整え、出発の準備を始める。私は荷台に戻りながら、心臓の高鳴りを落ち着けた。
馬車が再び進み始めると、私は隣に立つアレックに声をかけた。
「アレックさん、ああいうのって、よく出るんですか?」
アレックは肩をすくめ、少し笑った。
「まあな。森の多い道だと、こういうことは珍しくねえ」
「……森だけじゃなく、道端でも?」
「そりゃあ、冒険者の仕事ってのは危険も多い。村の周りや街道でも、たまに野生の獣や、ゴブリンどもが出る」
「なるほど……気をつけないと」
アレックは少し口をすぼめ、前方を見据える。
「まあ、荷台に座ってるだけなら安全だがな。お前も、わざわざ出て戦わなくていいってのに」
「はい……」
私は指輪をそっと握り直した。光が弱く揺れているのを感じる。
しばらく馬車が進むと、道の先に小さな丘の影が見えた。その根元あたりに、ぽっかりと暗い空間が口を開けているのが目に入る。
(……あれ、洞窟みたいだ……)
思わず顔を乗り出して覗き込む。木々の隙間から差し込む光が、洞窟の奥を薄く照らしていた。入り口のそばには、小さな影が動くのがちらちら見えた。
「アレックさん、あそこ……って」
アレックは荷車の横から私を見下ろし、軽く肩をすくめた。
「おお、興味津々だな。あそこは管理されてねえ、野良ダンジョンだな」
「野良……?」
「野良ダンジョンだ。村や都市が管理してねえ、誰でも入れる“ダンジョン”ってやつだ」
「……誰でも入れる、ですか。それだと危険では?」
アレックは少し笑い、視線を洞窟に向けた。
「まあその通りだ。ゴブリンやスライムくらいならまだいいが、もっと手ごわいやつが潜んでることもある。だが、宝や素材もあるんだよな。」
アレックは馬車をゆっくり進めながら、声を低くかける。
「覚えとけ、野良ダンジョンは勝手に入ると命に関わる。誰も助けてくれねぇから、一人で入るんじゃないぞ?」
私は小さくうなずき、指輪の違和感をそっと握り直した。光が弱く揺れるのを感じながら、胸の奥で期待と緊張が入り混じった。
馬車は静かに出発した。
揺れる荷台の中から外を眺める。森の緑、遠くの丘、そして小さな川のせせらぎ――辺境の村では当たり前だった景色も、今はどこか新鮮に映る。
「……いよいよアレンか」
指輪の感覚に注意を払いながら、私は景色の変化をひとつひとつ追った。木々の間を抜けると、道は少しずつ舗装され、街道らしい整った石畳に変わっていく。
途中、馬車は幾度か小休止を取る。馬に水を飲ませ、荷を調整する音が響く。アレックや護衛たちは慣れた手つきで作業を進め、私はその様子をじっと観察していた。
馬車はゆっくりと道を進み、冒険の第一歩を刻むように大地を揺らした。
いっぱい投稿して明日すべて見返して文章を修正するタイプよ




