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小さな嘘

「……まずは村の中心で、情報を得よう」


私は心の中でそう決め、荷物を背負い直して足を進めた。


村の奥に差し掛かると、木造の建物が一軒、軒先にランタンを下げて佇んでいた。看板には「安らぎ亭」と書かれてある。


扉を開けると、木の床が軋む音と、ほのかに焚かれた香の匂いが鼻をくすぐる。カウンターの向こうに立つ女性が私を見上げた。40代くらいの落ち着いた雰囲気で、柔らかい笑みを浮かべている。


「いらっしゃい。宿をお探しかい?」


「はい、旅人でして、ユウといいます」


リナは少し目を細め、手元の帳簿に目をやりながら応じた。


「旅人さんね……宿泊するかい? 支払いはどうするの?」


私は手に持っていた銀貨を差し出す。前の世界で使っていたものだ。


リナは銀貨を手に取り、指で軽く触れながら首をかしげた。


「これは……どこの国の貨幣かしら? 見たことがないわね」


「えっと……遠くの国の銀貨です。使えますでしょうか?」


リナは銀貨を見つめた後、にっこり笑った。


「まあ、いいわよ。ここは一軒しかない宿だから、安心して泊まってちょうだい。私の名前はリナ。よろしくね」


私は頭を下げ、案内された部屋へ入る。薄暗い廊下を抜け、木の階段を上ると、小さな窓から柔らかい光が差し込む部屋に辿り着いた。ベッドは簡素だが清潔で、旅の疲れを癒すには十分だった。荷物を置き、窓の外を眺める。村の屋根と遠くの草原が見え、朝の光がほのかに差し込む。


「……やっと一息つける」


部屋の隅で、そっと動く気配がした。


「……あれ?」


見ると、リナの息子だろうか扉の前に立っていた。好奇心に満ちた目で、私の荷物や小物をじっと見つめている。


少年は声をひそめて、でも興味が抑えきれない様子でつぶやいた。


「ユウさん……その光るの、なに?」


私は微笑み、腰をかがめて少年の目線に合わせた。


「これは森で見つけた結晶だよ。小さいけど光るんだ」


少年は手を伸ばしてそっと触れ、目を輝かせた。


「わぁ……きれい……」


しばらく結晶を眺めたあと、少年はさらに好奇心を膨らませ、小さな声でたずねた。


「ねえ、ユウさん……森の向こうって、どんなところなの?」


(ここはちょっと、言葉を濁して話すか……)

私はにっこり笑い、ゆっくりと言葉を選びながら答えた。


「森の向こうには川や町、人やいろんな生き物がいるんだ。僕も少し旅をして、いろんなものを見てきたよ」


少年は目を大きくして首をかしげた。


「どんなの?」


私はリュックから荷物を取り出し、懐中電灯などを見せる。小さな道具や光る結晶などだ。


「ほら、こんなものもあるんだ」


少年は指先でそっと触れ、目を輝かせる。


「わぁ……本当にきれい……ユウさん、森の向こうって面白そうだね」


私は窓の外に目をやり、外の光を浴びながら心の中でつぶやいた。


「……ここから、何をすべきか。」


無意識に指輪に触れると、かすかに光るスクリーンにプロフィールが映し出された。


【プロフィール】

名前:ユウ

状態:正常

年齢:20

体力:E

筋力:E

敏捷:E

耐久:E

身体能力:低

特技:なし

機能:危険感知・黒石感知

世界番号:532(適応済 27%)

世界番号:175(適応中)


私はスクリーンを見つめ、指で軽くスクロールする。新しく「世界番号532」が追加されていることに気づいた。以前の番号175に比べ、適応値はまだ低いが、新しい世界への扉が開きつつあることを示している。


「……新しい世界か。適応値が高くなるにつれて、今度はどんな機能が追加されるんだろう」


目の前の結晶が微かに光を反射し、私の心に小さな期待を灯す。未知の世界、新しい能力、遭遇するかもしれない人々や生き物……すべてが、これからの冒険の可能性を秘めている。


ふと部屋の扉に目を向けると、少年がまだ窓の外を興味深そうに眺めていた。


「ユウさん……僕も村の外へ出て、冒険してみたいな」


私は軽く微笑み、窓の外の広がる草原を見つめながら、少年に声をかけた。


「いいさ、でもまずは村でいろいろ覚えよう。焦らなくても大丈夫だ」


少年は満足そうにうなずき、部屋を少し離れていく。 やがて、リナが夕食を運んできた。小さな木の盆に、パンとスープ、煮物が載っている。

「わぁ、美味しそうです」


リナは微笑んで、軽くうなずく。

「でしょ? しっかり食べて、明日も元気に動けるようにね」


私はお礼を言い、盆を机に置いて席に着いた。窓の外の夕暮れが、部屋の中をやわらかく染める。


少年も側で小さな器をもらい、私と同じように座った。静かな夕食の時間――それは、未知の世界での小さな安心のひとときだった。

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