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村到着

森を抜けると、草原が広がり、遠くに村の建物が見えた。木の塀で囲まれ、古びた木材で作られた門が一つだけ開いている。私は立ち止まり、深呼吸をひとつ――湿った森を抜け、やっと安全圏に入った気がした。


門前には二人の衛兵が立ち、肩の力を抜いてのんびりと会話している。


「ふわー……暇だなー」


「こんな辺境じゃ、盗賊も出ねえし、弱い魔物しかいねえしよ……」


「それにしても、人が来ることもほとんどねえしな」


一人が笑いながら腕を組む。もう一人は手を腰に当て、遠くの草原をぼんやり見つめていた。


私は少し離れた場所で立ち止まり、息を殺しながら会話を聞く。村は平和で、辺境の静かな場所だと理解できる。小さな安心が胸に広がった。


「……よし、挨拶しよう」


私は手を上げ、声を少し震わせながらもしっかりと届けるように呼びかけた。


「すみませんー! 道を教えていただけませんか?」


衛兵たちはゆっくり振り返る。一人は眉をひそめ、伸びをしていた体を正す。


「おや……旅人か? 一人か?」


「はい……道に迷ってしまって...森を抜けてきました。」


「ふーん、森を抜けて……随分と危なそうじゃねえか。何か遭わなかったのか?」


「ええ、いくつか……モンスターもいましたけど、なんとか」


「ほほう、森の中で一人で生き延びるとは、なかなかやるな」


衛兵は少し驚いた表情を見せ、もう一人も門の内側に手をかざし、少し警戒を緩めた様子で言った。


「まあ、君みたいに気をつけてるなら、怪我はしてないだろう。ここから村まであと少しだ。門を通って入れ」


私は頭を下げ、慎重に門へ向かう。木の門は重く、軋む音を立てるが、衛兵たちは気に留めない。


門をくぐると、村の中は想像以上に静かで落ち着いていた。舗装されていない土の道に小石が散らばり、古い木造の家々が並ぶ。軒先には花や作物、干し肉や布団が干され、生活の気配が細かく見える。


子どもの笑い声が遠くから聞こえ、井戸の水音や猫の鳴き声が混ざる。私は荷物を背負ったまま、周囲を注意深く観察しながら村の中心に向かう。


「……ほっとするな。やっと、人の生活圏に入れた」

そうつぶやきながら道沿いを歩いていると、洗濯をしていた老婦人が手を止めて、にこやかにこちらを見た。

「おや、旅人さんかい? 森を越えてきたのかね?」


「はい……少し道を教えていただけますか?」


老婦人は腰をかがめ、手を洗濯板から離して微笑む。

「そうかい。大変だったねえ。でも、村の中心なら、この道をまっすぐ行けば着くよ。急がず、ゆっくり歩きなさい」

「ありがとうございます」 


軽く頭を下げると、老婦人はにっこり笑って作業に戻った。

村の中心までの道は穏やかだ。家々の軒先には干された野菜や農具、鶏や羊がのんびり歩く。小川のせせらぎ、風に揺れる草、鳥のさえずり――森での緊張が少しずつ解けていく。

「……まずは、村の中心で情報を集めるか」


荷物を背負い直し、慎重に歩きながらも、初めての異世界の生活の息遣いを感じる。安心と警戒の間で、私は足を進めた。

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