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平和な世界

今日は土曜日

祖父の家での片付けを続けながら、私はふと思った。向こうの世界に戻る準備をしなければ――何を持っていくべきか。


ポケットの黒石を握り、指輪の淡い光をぼんやり見つめながら机に向かう。


「さて……何が必要なんだろう」


水や食料、最低限の装備はある。だが、他に持っていくと便利なものは何か。考えても漠然としてしまい、思いつかない。


ふと手元のガラクタの山に目をやると、一部虫に食われているが、布地の質感から高級そうなハンカチが目に留まった。微妙に穴が開いているが、見た目にはわからない程度だ。軽く、小物として持っていけば何かに使えるかもしれない。


さらに目を向けると、古い懐中電灯、使い込まれた小型ナイフ、ラップに包まれた小瓶――どれもガラクタだが、向こうの世界では役に立つかもしれない。


「……これでいいか」


ハンカチをそっと折り、タオルと一緒にバッグに詰める。懐中電灯、ナイフ、ラップ、小瓶も加え、バッグは小さな荷物ながら、少し安心できる重みになった。


黒石を握り、指輪の光を確認する。次の充電まであと一週間。まだ時間はある。だが、準備だけは着実に進めなければならない。


私はバッグに手を置きながら、ふと思う。


思い出すのは、あの森での彼女の姿。凛として、危険に立ち向かう目。あの時、初めてセラの過去を少し聞いた――家族を失ったこと、力をつける必要性を知ったこと。自分と違う理由でも、目的は同じ。生き延びること。


深く息をつき、私は心を落ち着ける。向こうの世界で何が起こっても、最低限の準備は整った。未知の世界に向かう不安は残るが、それもまた冒険の一部だ。


土曜日の午後。家に帰ると、母が台所の方から声をかけてきた。


「片付け終わったー?」


私は少し肩を落としながら答える。


「まあ……1/120ぐらい?」


母は笑いながら私に駆け寄ってくるので、思わずハグをした。


「いやあ!!なに急に!」


「いや……なんでもないよ」


そのあと母が言った。


「今夜、買い物つきあってくれる?別に行きたくないならついてこなくてもいいけど」


私は即答した。


「いくよ」


夕方になり、母と近くのスーパーへ向かう。カートを押しながら買い物を済ませ、セルフレジに並ぶ。


隣のセルフレジにいた小さな女の子が、台の上にちょこんと乗って笑顔を向けてきた。私たちに気づくと、ニコッと笑い、台から降りていく。その可愛らしさに、思わず微笑む。


「ああ……こっちは平和だな」


私は心の中で呟く。向こうの世界では、化け物がいつ現れるかわからず、ほとんどの住民が暗い表情で暮らしていた。だが、この世界では日常が静かに、確かに流れている。


バッグの中の黒石やハンカチを触りながら、私は少し安心した気持ちで家に戻る。向こうの世界と比べると、ここでの時間はゆっくりと、そして温かく流れている――そんなことを、夕暮れの窓の外を眺めながら思った。

小さい女の子かわいい

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