カツアゲ?
森を出るころには、太陽はすでに西に傾いていた。
今日の収穫。
小ぶりの黒石が十一個。
そして――中くらいの黒石が一つ。
袋の重みを手で確かめながら、私は静かにクロノ町へ戻っていった。
町の門が見えてきたころだった。
後ろから声がかかる。
「おい」
私は足を止めた。
振り向くと、三人の男が立っていた。
どれもハンターの格好をしているが、装備は雑で、顔つきもあまり良くない。鎧はところどころ欠け、剣も手入れされていないようだった。
真ん中にいた男が、にやりと笑う。
「お前、新人だろ」
私は何も答えなかった。
男は私の腰の袋を見た。
「森帰りだな」
顎で袋を指す。
「それ、黒石だろ?」
後ろの男がくすっと笑う。
「運いいじゃねえか」
もう一人も言った。
「新人のくせに」
私は静かに言った。
「……何ですか」
男は肩をすくめる。
「なに、簡単な話だ」
一歩近づいた。
「森ってのはな、危ねえ場所なんだよ」
さらに一歩。
「新人が無事に帰れるとは限らねえ」
そして笑う。
「だからよ」
手を差し出した。
「俺は優しいからよ。半分置いてけ」
私は袋を軽く握った。
三人。
距離は数メートル。
正直、勝てるとは思えない。
私は周囲を少しだけ見た。
門は近い。
だが、門番は少し離れている。
声を出せば来るかもしれない。
だが、それまでに殴られる可能性もある。
そのときだった。
「――あんたら」
後ろから声がした。
少し低めの、落ち着いた声。
三人の男が振り向く。
私もそちらを見る。
道の脇の木にもたれかかるように、一人の女が立っていた。
長い黒髪を後ろで束ねている。
軽装のハンター装備。
腰には細い剣が一本。
年は二十代前半くらいだろうか。
女は腕を組んだまま、こちらを見ていた。
「また新人いじめ?」
三人の男の顔がわずかに歪む。
真ん中の男が舌打ちした。
「……なんだよ、セラ」
女――セラは小さくため息をついた。
「門の前でやるなって、何回言えば分かるの」
「関係ねえだろ」
「ある」
セラは短く言った。
そしてゆっくり歩いてくる。
足音はほとんどしない。
三人の男はわずかに距離を取った。
真ん中の男が言う。
「こいつ新人だぞ」
「知ってる」
「だったら――」
セラは男の言葉を遮った。
「だから?」
静かな声だった。
だが、空気が少し変わる。
私はそれを感じた。
男たちも同じだったらしい。
三人は顔を見合わせる。
しばらく沈黙が続いたあと――
真ん中の男が舌打ちした。
「……ちっ」
そして私を睨む。
「今日は運が良かったな、新人」
三人はそのまま去っていった。
しばらくして、セラが私を見る。
「大丈夫?」
私は軽く頷いた。
「はい」
セラは私の袋を見る。
「結構拾ったみたいね」
私は少し迷ったが答えた。
「まあ……少し」
セラは小さく笑う。
「外縁でそれだけ拾えるなら、悪くない腕してるじゃない」
「腕というより……運です」
「運も才能よ」
そう言ってから、セラは少しだけ目を細めた。
「でも新人」
「はい?」
「一つだけ忠告してあげる」
彼女は町の門の方を顎で示した。
「さっきの三人」
少し間を置く。
「あとで報復してくるかもしれないわ」
私は少し黙った。
セラは軽く肩をすくめる。
「まあ、町の中なら大丈夫だと思うけど」
それから手を振った。
「じゃ、気をつけてね」
数歩歩いてから、振り向く。
「また森で会うかもね」
そう言って、セラは町の中へ歩いていった。
私はその背中を少しだけ見送る。
それから袋を握り直した。
……報復。
その言葉が、頭の中に残っていた。
私はゆっくり門をくぐる。
クロノ町の灯りが、すぐ目の前に広がっていた。




