第9話 「ガチ恋勢☆まさかの“課金バフ”で闇落ち男がドン引きする件」
治安隊とリグが対峙する緊迫の路地。
サナは肩で息をしながら、後ずさることしかできなかった。
(ど、どうしよう……もう限界……!)
その瞬間――
視界の端で、配信コメント欄が突然“赤く”染まった。
『桃DEブー:サナァを泣かす男許さん。今月はもやししか食わん。スパチャ50,000――行きます』
通知が路地裏に響く。
――ピキーーーンッ!!!!
(!?!?!?)
サナの身体に、虹色の光が降り注いだ。
髪がふわりと浮き、瞳が星のように輝く。
視聴者欄、大爆発。
『出たァァァァ!!!ガチ恋勢!!!』
『五万スパチャwww』
『もやし生活覚悟の重課金www』
『サナにバフかかったぞ!?!?』
サナは足元の影を見た。
(……なんか……軽い!?体が……あったかい……!)
治安隊員が驚きながら叫ぶ。
「な、なんだこの魔力反応……!?」
リグの表情が、初めて“焦り”に歪んだ。
「……は? なんだ、その光は」
サナに伸びていたリグの影が、
触れた瞬間――
バチィィッ!!
黒煙とともに弾かれた。
「ッ……!?影渡りが、弾かれた……?」
リグも驚きを隠せない。
視聴者、祝福の嵐。
『課金バリアwwwww』
『桃DEブー、英雄すぎる!!』
『スパチャでスキル無効化は草』
『重課金勢の力、ここに極まれり』
サナ自身も実感する。
(リグのスキル……効かない!?私、強く……なってる!?)
リグはじり、と後退した。
その瞳には確実に“恐れ”が宿っていた。
「……おい。嘘だろ……こんなガキ、さっきまで震えてたじゃねぇか」
サナは胸に手を当てた。
「……桃DEブーさん……ありがとう……!」
次の瞬間、サナの全身が光を帯びる。
スキル:視聴者加護
【効果:一定額のスパチャによって、対象者の攻撃および特殊スキルを完全無効化】
治安隊員たちが歓声を上げた。
「少女が……闇渡りを無効化した!!」
リグは完全に引いていた。
「……チッ。お前……そんな力、持ってたのかよ……
ふざけんな……」
(ふざけんのは、そっちだよ……!!)
サナが一歩踏み出すと、
リグはさらに身を強張らせた。
影が揺らぐたび、サナの光に弾かれる。
(もしかして今の私… “課金で強化された主人公”みたいになってる……!?)
リグはついに短剣を下げ、
忌々しそうに唇を噛んだ。
「……今日は退く。 だが、サナ。
お前は必ず奪い返す。“俺の仕事”は終わってねぇ」
最後に、冷たい声で言い残す。
「――次は、その光ごと殺す」
そして影に溶けるように消えていった。
視聴者欄は歓喜の渦。
『サナ勝った!!課金勝利!!』
『桃DEブー、ヒーローだった』
『もやし生活を誇れ……!』
『続けて!続けて!!』
サナは胸に手を置きながら、呟いた。
「……桃DEブーさん、本当にありがとう……
もやし生活、応援してます……!」
治安隊がサナを囲み、状況を確認しようと近づく。
その時、サナのスキルウィンドウがぴこんと開いた。
――【スパチャ累積:50,000】
――【一時的強化:残り 2:29】
(バフ、時間制限つきかぁぁぁぁ!!)
視聴者、笑い転げる。
『制限時間あって草』
『強化系スパチャwww』
『サナ、逃げろwww』
物語は、次の局面へ――。




