第13話 「おは桃配信☆睡眠=配信終了!?目覚めと同時に視聴者が湧く朝」
――静寂。
治安隊の詰所、仮眠室。
灯は落とされ、外の音も遠い。
サナがベッドで目を閉じた、その瞬間。
《配信は終了しました》
――らしい。
『やっぱ寝たら切れるんだ』
『仕様確認ヨシ』
『おやすみ配信助かる』
そして夜は、何事もなく過ぎた。
――翌朝。
かちり、と何かが噛み合う感覚。
サナが目を開けた瞬間、視界の端に文字が浮かぶ。
《配信を開始しました》
「……あ」
サナ、まだ半分寝ぼけたまま、ぽそり。
「おは……」
視聴者数:87 → 103 → 158 → 214
『待ってた』
『生存確認!』
『起きたwww』
コメントが雪崩のように流れ込む。
『おは桃ー!』
『おは桃!!!』
『今日も元気に生きてる?』
サナ、ぱちぱち瞬きしてから、にぱっと笑った。
「おは桃ですっ☆えへへ……ちゃんと、生きてます!」
『それが一番』
『朝の生存報告』
サナは毛布を畳みながら、ひそひそ声。
「どうやら……私が寝ると配信が切れて、起きると勝手につく仕様みたいです☆」
『自動開始は草』
『寝起き即配信は才能』
『オンオフの概念どこ』
そこへ、扉が軋んで開く。
「起きたか。朝食だ」
治安隊員が、木の皿をいくつか抱えて立っていた。
焼いたパン、スープ、干し肉、少しの果物。
サナの目が、きらきら輝く。
「えっ……いいんですか?」
「昨夜は大変だったからな。……それに静かにしていたしな」
『条件満たしてる』
『静か(当社比)』
サナ、ちゃっかり席に着く。
「じゃあ、いただきまーす☆」
『自然に混ざるなw』
『詰所の朝ごはん配信』
スープを一口。
「……おいしい。やさしい味です……胃に染みます……」
『完全に居候』
『朝食レビュー助かる』
食べ終える頃には、視聴者数は300を超えていた。
サナは皿を返し、深く頭を下げる。
「昨日は、泊めてくださってありがとうございました☆」
隊長が腕を組んで頷く。
「冒険者ギルドだな?」
「はい!教えてもらったので!」
「なら、南通りをまっすぐだ。…くれぐれも、騒ぎをおこすな」
『釘刺されてるw』
『もう信用と警戒が同時に来てる』
サナは振り返り、手を振った。
「それじゃ、行ってきまーす☆皆さんも、一緒に冒険者ギルド、初潜入ですよ!」
『初潜入(物理)』
『次回、登録で一悶着』
朝の光の中、詰所の扉が閉まる。
――こうしてサナは、
“治安隊公認・朝ごはん付き配信者”から、
“冒険者候補生”へとクラスチェンジした。
次回、冒険者ギルド。
受付、試験、そして――
またしてもコメント欄が騒ぐ未来が、もう見えていた☆




