第12話 「詰所チェックイン完了☆治安隊で事情聴取(雑)と冒険者フラグが立つ件」
――治安隊の詰所は、思ったよりも堅牢だった。
分厚い石壁、鉄枠の扉、天井には淡く光る魔晶灯。
外の喧騒が嘘のように遮断され、空気がきゅっと引き締まっている。
サナはきょろきょろと見回しながら、小声で配信。
「わぁ……牢屋じゃないですよね?ここ……」
『第一声がそれw』
『安心しろ、まだ捕まってない』
『まだ、な』
「“まだ”って何ですか“まだ”って☆」
隊長が咳払いをひとつ。
「では――名前と、来歴を聞こうか」
サナ、ぴしっと背筋を伸ばす。
そして、一瞬で“無難モード”に切り替わった。
「はいっ!サナといいます☆えーっと……各地を転々としてる、出稼ぎの……その……自由業、です!」
『自由業www』
『便利すぎる言葉』
『だいたい合ってるのが怖い』
「目的は?」
「えっと……えー……」
サナ、ちらっと“画面(空)”を見る。
『適当でいい』
『嘘は薄めろ』
『盛るな、削れ』
「……旅の途中で、運よく……いえ、不運にも?
事件に巻き込まれがちで……そのたびに、なんか生き残ってます!」
「……なるほど。運がいいのか、悪いのか分からんな」
治安隊員がぼそりと呟く。
「街に長居するつもりは?」
サナ、即答。
「ないです!たぶん!きっと!そのうち!」
『信用ゼロ宣言』
『正直すぎる』
隊長は額を押さえつつ、ため息。
「……まあいい。今夜は仮眠室を使え。ただし、騒ぎは起こすな」
「はーい☆静かに寝ます!」
『絶対無理』
『フラグ回収』
――案内された仮眠室には、簡素なベッドが三つ。
毛布は硬め、枕は薄い。
サナ、ベッドを指で押して確認。
「……皆さん、柔らかさ、★2です」
『レビューすな』
『詰所に低評価付けるな』
そこで、若い隊員が思い出したように言った。
「そういえば君、腕は立つみたいだな。冒険者登録はしてないのか?」
「ぼうけんしゃ……?」
「ギルドに登録すれば、各街で宿の割引、依頼の斡旋、治安隊からの信用も得られる。身分証代わりにもなるぞ」
コメント欄がざわつく。
『きた本編システム』
『やっと冒険者』
『配信者、職業変更』
サナの目が、きらっと光った。
「えっ……それ、めっちゃ便利じゃないですか☆」
「明日、ギルドに行けばいい。……断られはしないだろう」
『実績十分』
『逆に断られる場合もあるのかw』
サナは深くうなずいた。
「わかりました!じゃあ明日は――冒険者デビュー配信☆ですね!」
『タイトル回収』
『明日も事件の匂い』
『フラグ量産』
サナは毛布にくるまり、カメラに向かって小さく手を振る。
「じゃあ皆さん、今日はここまで☆生存確認、完了です!おやすみなさーい!」
『おやすみ』
『治安隊によろしく』
『ベッド硬いぞ覚悟しろ』
灯が落とされ、詰所に静寂が降りる。
――こうしてサナは、
一晩の安全と、次なる肩書きを手に入れた。
翌朝、冒険者ギルドという名の
新たな“配信映えスポット”へ向かうこととなる。




